Seventh World 正義の旗手の章
【死の世界編①】
ダダダダダダダダッ――――
『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員が機関銃をぶっ放す。
しかし
その得体の知れない白い怪物。
アメンボのような機械仕掛けの物体は銃弾をものともせず、その上部に備え付けられたビーム砲を隊員に向けて
ビカッ――――
レーザービームを撃ち込んだ。
「ぐはぁあぁ!」
一瞬にして隊員の身体が真っ二つに引き千切られる。
日本政府が開発した量産型殺人兵器、通称『アメンボ』。
白銀色の怪物が『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員を消滅させる。
「バカやろう!あの怪物に銃弾など効くか!あれはシルバードームと同じ素材で出来ている!」
隊長のカーズが怒鳴り散らす。
「シルベスタ!超電磁砲(レールガン)でサッサと始末しろ!」
いきなりの命令にシルベスタはトレードマークの眼鏡をクイッと持ち上げる。
「隊長……、とは言っても、先程全力で撃ち込んだんで充電まで少々お待ちを。」
「そんな悠長な事を言ってられるか!アルフ!アルフはどうした!?」
カーズの声にアルフ・ジャスティスが答える。
「へいへい、結局は俺の出番って訳ね。」
カチッ
アルフの持つ『ライトセイバー』が白色の光を放ち姿を現す。
「最初からギア全開で行くぜ!」
ビビッ―――――――
脳から発せられた電磁波がアルフの全身を駆け巡る。
超反応と超スピードを併せ持つ、アルフ・ジャスティスの能力。
シュッ――――
瞬速の速さで『アメンボ』に接近したアルフは右手に持つ『ライトセイバー』を振り上げる。
「いっちょ上がり!」
右手を振り下ろせば『アメンボ』を焼き切る事が出来る。
アルフの勝利は目前のように思えた。
しかし
「ライトサーベル!」
「!!」
遥か遠くから放たれた光の剣がアルフの胴体を狙い打つ。
「うぉ!危ね!」
バチバチッ!
咄嗟にアルフは光の剣を光の剣で防御する。
ビカッ!
直後に放たれた『アメンボ』のレーザービームが
「のわっ!」
アルフの頬を掠めて飛んで行く。
アルフの超反応が無ければ、レーザービームの直撃は免れなかったであろう。
(ちっ!新手か!)
『アメンボ』から距離を取ったアルフは光の剣が放たれた方向を睨みつける。
「おいおい……マジか……。」
そこには、『ライトサーベル』を構える1人の男と、男を守るように取り囲む無数の『アメンボ』がビーム砲をこちらに向けていた。
ギギィ………
ギギィ……………
ギギィ……………………
『フォーミュラ・ジャスティス』対『アメンボ』の第二ラウンドが始まる。
【死の世界編②】
「うぉりゃあぁぁ!!」
大声を上げて攻撃を仕掛ける日本人、日賀 タケル(ひが たける)のライトサーベルが
バチバチッ!!
アルフ・ジャスティスのライトセイバーと交錯する。
厄介なのは、その日本人の背後から途切れなく撃ち込まれるレーザービーム。
「ちょっ!それは反則だろ!」
アルフは慌てて距離を取る。
どう言う訳か、日本人の男を上手い具合に避けて撃ち込まれるアメンボのレーザービームに、流石のアルフも手を焼いていた。
しかも、この日本人
(普通の人間にしては動きが速い……)
他の『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達はアルフの戦闘を遠くから眺めていた。
「おーい!てめぇ等も手伝えよ!」
思わず大声を張り上げるアルフ。
すると隊長のカーズがとんでも無い事を言い出した。
「その機械兵器には銃弾は効かない。そいつを仕留められるのは、アルフ!お前とシルベスタだけだ。俺達は高みの見物としよう。」
アルフはその言葉を聞いて更に大きな声で叫ぶ。
「ちょっと待て!シルベスタも退避してるじゃねぇか!?」
カーズ達と一緒に戦況を見守るシルベスタ・ドラゴン。
ドラゴンは冷静にアルフに返答する。
「俺の能力は混戦には向かないんでな。お前のような超反応や超スピードが無ければその機械兵器には対応出来ない。後は任せた。」
などと無責任な事を言っている。
「てめぇ等、後で覚えてろよ!」
結局一人で戦う羽目となったアルフ・ジャスティス。しかし、それは隊員達の信頼の証でもある。
アルフなら、そんな機械兵器如きには殺られない――――
ビビッ――――――
アルフの電磁波が全身を駆け巡り、全神経が研ぎ澄まされる。
(仕方ねぇ………、敵の兵器の数は10体程度か………。やってやれない事は無いな。)
「行くぜ!日本人!覚悟しろ!」
アルフとタケルが持つ光の剣が再び戦場で交錯する。
日本国公安所属秘密警察官(エージェント)の日賀 タケル(ひが たける)は、アルフの動きに焦っていた。
タケルとてあらゆる武術を身につけた戦闘の達人。元から備わっている運動神経もあり、普通の人間に戦闘で負けた事など久しく無い。
特に、あの日以来、タケルは血の滲むような特訓を続けていた。
あの日…
かつてタケルは一人の少女と行動を共にしていた。
あまりにも強く、破天荒なその少女は、タケルがピンチになると決まって助けてくれた。
自分でも気が付かないうちに、タケルは少女を頼っていたのだ。
しかし、その少女はもう居ない。
(強くなりたい―――)
タケルは切に思う。
エミリーが帰って来た時に、彼女に頼らなくても良いくらい。
エミリーを守れるくらいに強く―――
「こんな所で負けられるかぁあぁぁ!」
バチバチバチッ!
「うぉ!」
アルフ・ジャスティスはタケルの気迫に押されて後ろへ下がる。
(こいつは予想外だ―――)
アルフは思う。
(敵は10体の白い殺人兵器かと思っていたが、なかなかどうして、この日本人は本物だ。)
「おもしれぇ……。邪魔な機械どもを倒した後に相手をしてやるぜ!
俺の名はアルフ・ジャスティス!覚えておけ!」
アルフの戦闘を見守る『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達。
隊長のカーズが隣に居る隊員、最強世代の3人の一人、マーク・ブライアンに話し掛ける。
「マーク、どうだ?分析は終わったか?」
なにやら地味な印象のマークは、じっと白い殺人兵器『アメンボ』を観察している。
マークの能力は超視力。
それも只の視力では無い。
マークはその物体の構造を的確に把握する透視能力を兼ね備えている。
「まぁ、だいたいは把握出来ました。」
そう言ってマークはおもむろに歪な形の鞄から取り出したノート型のパソコンを広げてプログラミングを始める。
戦場には似合わない光景。
マーク・ブライアンの能力は超視力だけでは無い。
スーパーコンピュータをも上回る超頭脳。
「五分もすれば、プログラミングが完成します。それまではアルフに耐えて貰うしか有りませんね。」
アルフと『アメンボ』の戦闘は熾烈を極めていた。
次々と放たれるレーザービームを紙一重で避けて攻撃を加えるアルフ・ジャスティス。
その隙を付いて日賀 タケル(ひが たける)がライトサーベルで斬り掛かる。
「うぉ!日本人!てめぇは後だと言ったろう!」
そう叫ぶアルフにタケルは怒鳴りつける。
「そんなの知るか!ちょこまかと逃げやがって!正々堂々と勝負しやがれ!」
「はぁ?10体もの殺人兵器を引き連れて何が正々堂々だ!日本人はいつでも卑怯だな、おい!」
「何言ってんだ。先に攻撃を仕掛けて来たのはお前達だろうが!」
だんだん子供の口喧嘩のようになって行く2人の戦闘を呆れ顔で見つめるカーズ隊長。
(まぁ、アルフの超反応と超スピードがあってこそ喧嘩をする余裕もあると言うものか。他の隊員ならとっくに死んでいるだろう。)
「隊長…」
そこでマークがカーズ隊長に話し掛ける。
「プログラミングが完成しました。」
只今より―――――――
――――――ハッキングを開始します
【死の世界編③】
東京都千代田区
白銀の要塞(シルバードーム)
米軍の空爆により廃墟と化した関東地方において、ひと際 輝くその建物。
第110代日本国内閣総理大臣にして、高位の陰陽師である月影は、部屋中に映し出されるモニターを眺めていた。
(ふむ………)
「敵は米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』のようだな。少々厄介だ。」
すると隣に控える長身の男が月影(つきかげ)に言葉を掛ける。
「『アメンボ』はあれで全てか?タケルだけでは荷が重いだろう。俺も行こう。」
顔に斜めの傷跡がある男、沖田 栄治が外で戦っている日賀 タケル(ひが たける)の援軍を申し出た。
実のところ、日本国第110代内閣総理大臣北条 月影(ほうじょう つきかげ)の護衛は2人しかいない。
日本国公安所属秘密警察官(エージェント)の2人。沖田 栄治(おきた えいじ)と日賀 タケル(ひが たける)のみが現在の月影の戦力。
月影は外へ出ようとする沖田に言葉を掛ける。
「沖田君、ここはもう持たないだろう。タケル君には悪いが、もう手遅れなのだよ。」
「…………月影総理。何を考えている?」
沖田は月影の言葉の真意を確認する。
「日本だけじゃない。アメリカもロシアも新世界ローマ教会も、もうじき滅びる。『寄生虫』が蔓延した世界では、どの道我々は助からないという事だ。」
「どう言う事だ。」
月影はゆっくりと立ち上がると、近くにある端末のボタンを操作して巨大なモニターに映像を映し出した。
沖田はその映像を見て驚愕する。
そこに映し出された世界は
――――――――死の世界
崩壊した建物を見るに、かつて文明が存在していた事が垣間見える。
しかし、次々と映し出される映像には、生命の影すら見られない。
まるで核戦争でも起きた後のような静寂が支配する世界。
「月影総理………ここは?」
沖田が質問をすると、月影は重たい口を開く。
「ここは『ユグドラシル』の世界。」
「ユグドラシル…?四年前に夢野 可憐(ゆめの かれん)が足を踏み入れたあの世界か?」
「そうだ。沖田君も聞いているだろう。ヴァンパイア族やエルフ族が現実に生活をする世界。我々の住む世界とは別のアナザーワールド(異世界)だ。」
沖田は知っている。
四年前『黒い霧』を発生させた『異世界の門(ゲート)』の向こうの世界。
あの時、可憐を追って『異世界の門(ゲート)』をくぐれなかった自分を沖田は今でも不甲斐なく思う。
「その『ユグドラシル』の世界がどうしたのだ?」
沖田の質問に月影は答える。
「君になら教えても良いだろう。」
私が知り得た――――
――――――この世界の全てを
【死の世界編①】
ダダダダダダダダッ――――
『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員が機関銃をぶっ放す。
しかし
その得体の知れない白い怪物。
アメンボのような機械仕掛けの物体は銃弾をものともせず、その上部に備え付けられたビーム砲を隊員に向けて
ビカッ――――
レーザービームを撃ち込んだ。
「ぐはぁあぁ!」
一瞬にして隊員の身体が真っ二つに引き千切られる。
日本政府が開発した量産型殺人兵器、通称『アメンボ』。
白銀色の怪物が『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員を消滅させる。
「バカやろう!あの怪物に銃弾など効くか!あれはシルバードームと同じ素材で出来ている!」
隊長のカーズが怒鳴り散らす。
「シルベスタ!超電磁砲(レールガン)でサッサと始末しろ!」
いきなりの命令にシルベスタはトレードマークの眼鏡をクイッと持ち上げる。
「隊長……、とは言っても、先程全力で撃ち込んだんで充電まで少々お待ちを。」
「そんな悠長な事を言ってられるか!アルフ!アルフはどうした!?」
カーズの声にアルフ・ジャスティスが答える。
「へいへい、結局は俺の出番って訳ね。」
カチッ
アルフの持つ『ライトセイバー』が白色の光を放ち姿を現す。
「最初からギア全開で行くぜ!」
ビビッ―――――――
脳から発せられた電磁波がアルフの全身を駆け巡る。
超反応と超スピードを併せ持つ、アルフ・ジャスティスの能力。
シュッ――――
瞬速の速さで『アメンボ』に接近したアルフは右手に持つ『ライトセイバー』を振り上げる。
「いっちょ上がり!」
右手を振り下ろせば『アメンボ』を焼き切る事が出来る。
アルフの勝利は目前のように思えた。
しかし
「ライトサーベル!」
「!!」
遥か遠くから放たれた光の剣がアルフの胴体を狙い打つ。
「うぉ!危ね!」
バチバチッ!
咄嗟にアルフは光の剣を光の剣で防御する。
ビカッ!
直後に放たれた『アメンボ』のレーザービームが
「のわっ!」
アルフの頬を掠めて飛んで行く。
アルフの超反応が無ければ、レーザービームの直撃は免れなかったであろう。
(ちっ!新手か!)
『アメンボ』から距離を取ったアルフは光の剣が放たれた方向を睨みつける。
「おいおい……マジか……。」
そこには、『ライトサーベル』を構える1人の男と、男を守るように取り囲む無数の『アメンボ』がビーム砲をこちらに向けていた。
ギギィ………
ギギィ……………
ギギィ……………………
『フォーミュラ・ジャスティス』対『アメンボ』の第二ラウンドが始まる。
【死の世界編②】
「うぉりゃあぁぁ!!」
大声を上げて攻撃を仕掛ける日本人、日賀 タケル(ひが たける)のライトサーベルが
バチバチッ!!
アルフ・ジャスティスのライトセイバーと交錯する。
厄介なのは、その日本人の背後から途切れなく撃ち込まれるレーザービーム。
「ちょっ!それは反則だろ!」
アルフは慌てて距離を取る。
どう言う訳か、日本人の男を上手い具合に避けて撃ち込まれるアメンボのレーザービームに、流石のアルフも手を焼いていた。
しかも、この日本人
(普通の人間にしては動きが速い……)
他の『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達はアルフの戦闘を遠くから眺めていた。
「おーい!てめぇ等も手伝えよ!」
思わず大声を張り上げるアルフ。
すると隊長のカーズがとんでも無い事を言い出した。
「その機械兵器には銃弾は効かない。そいつを仕留められるのは、アルフ!お前とシルベスタだけだ。俺達は高みの見物としよう。」
アルフはその言葉を聞いて更に大きな声で叫ぶ。
「ちょっと待て!シルベスタも退避してるじゃねぇか!?」
カーズ達と一緒に戦況を見守るシルベスタ・ドラゴン。
ドラゴンは冷静にアルフに返答する。
「俺の能力は混戦には向かないんでな。お前のような超反応や超スピードが無ければその機械兵器には対応出来ない。後は任せた。」
などと無責任な事を言っている。
「てめぇ等、後で覚えてろよ!」
結局一人で戦う羽目となったアルフ・ジャスティス。しかし、それは隊員達の信頼の証でもある。
アルフなら、そんな機械兵器如きには殺られない――――
ビビッ――――――
アルフの電磁波が全身を駆け巡り、全神経が研ぎ澄まされる。
(仕方ねぇ………、敵の兵器の数は10体程度か………。やってやれない事は無いな。)
「行くぜ!日本人!覚悟しろ!」
アルフとタケルが持つ光の剣が再び戦場で交錯する。
日本国公安所属秘密警察官(エージェント)の日賀 タケル(ひが たける)は、アルフの動きに焦っていた。
タケルとてあらゆる武術を身につけた戦闘の達人。元から備わっている運動神経もあり、普通の人間に戦闘で負けた事など久しく無い。
特に、あの日以来、タケルは血の滲むような特訓を続けていた。
あの日…
かつてタケルは一人の少女と行動を共にしていた。
あまりにも強く、破天荒なその少女は、タケルがピンチになると決まって助けてくれた。
自分でも気が付かないうちに、タケルは少女を頼っていたのだ。
しかし、その少女はもう居ない。
(強くなりたい―――)
タケルは切に思う。
エミリーが帰って来た時に、彼女に頼らなくても良いくらい。
エミリーを守れるくらいに強く―――
「こんな所で負けられるかぁあぁぁ!」
バチバチバチッ!
「うぉ!」
アルフ・ジャスティスはタケルの気迫に押されて後ろへ下がる。
(こいつは予想外だ―――)
アルフは思う。
(敵は10体の白い殺人兵器かと思っていたが、なかなかどうして、この日本人は本物だ。)
「おもしれぇ……。邪魔な機械どもを倒した後に相手をしてやるぜ!
俺の名はアルフ・ジャスティス!覚えておけ!」
アルフの戦闘を見守る『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達。
隊長のカーズが隣に居る隊員、最強世代の3人の一人、マーク・ブライアンに話し掛ける。
「マーク、どうだ?分析は終わったか?」
なにやら地味な印象のマークは、じっと白い殺人兵器『アメンボ』を観察している。
マークの能力は超視力。
それも只の視力では無い。
マークはその物体の構造を的確に把握する透視能力を兼ね備えている。
「まぁ、だいたいは把握出来ました。」
そう言ってマークはおもむろに歪な形の鞄から取り出したノート型のパソコンを広げてプログラミングを始める。
戦場には似合わない光景。
マーク・ブライアンの能力は超視力だけでは無い。
スーパーコンピュータをも上回る超頭脳。
「五分もすれば、プログラミングが完成します。それまではアルフに耐えて貰うしか有りませんね。」
アルフと『アメンボ』の戦闘は熾烈を極めていた。
次々と放たれるレーザービームを紙一重で避けて攻撃を加えるアルフ・ジャスティス。
その隙を付いて日賀 タケル(ひが たける)がライトサーベルで斬り掛かる。
「うぉ!日本人!てめぇは後だと言ったろう!」
そう叫ぶアルフにタケルは怒鳴りつける。
「そんなの知るか!ちょこまかと逃げやがって!正々堂々と勝負しやがれ!」
「はぁ?10体もの殺人兵器を引き連れて何が正々堂々だ!日本人はいつでも卑怯だな、おい!」
「何言ってんだ。先に攻撃を仕掛けて来たのはお前達だろうが!」
だんだん子供の口喧嘩のようになって行く2人の戦闘を呆れ顔で見つめるカーズ隊長。
(まぁ、アルフの超反応と超スピードがあってこそ喧嘩をする余裕もあると言うものか。他の隊員ならとっくに死んでいるだろう。)
「隊長…」
そこでマークがカーズ隊長に話し掛ける。
「プログラミングが完成しました。」
只今より―――――――
――――――ハッキングを開始します
【死の世界編③】
東京都千代田区
白銀の要塞(シルバードーム)
米軍の空爆により廃墟と化した関東地方において、ひと際 輝くその建物。
第110代日本国内閣総理大臣にして、高位の陰陽師である月影は、部屋中に映し出されるモニターを眺めていた。
(ふむ………)
「敵は米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』のようだな。少々厄介だ。」
すると隣に控える長身の男が月影(つきかげ)に言葉を掛ける。
「『アメンボ』はあれで全てか?タケルだけでは荷が重いだろう。俺も行こう。」
顔に斜めの傷跡がある男、沖田 栄治が外で戦っている日賀 タケル(ひが たける)の援軍を申し出た。
実のところ、日本国第110代内閣総理大臣北条 月影(ほうじょう つきかげ)の護衛は2人しかいない。
日本国公安所属秘密警察官(エージェント)の2人。沖田 栄治(おきた えいじ)と日賀 タケル(ひが たける)のみが現在の月影の戦力。
月影は外へ出ようとする沖田に言葉を掛ける。
「沖田君、ここはもう持たないだろう。タケル君には悪いが、もう手遅れなのだよ。」
「…………月影総理。何を考えている?」
沖田は月影の言葉の真意を確認する。
「日本だけじゃない。アメリカもロシアも新世界ローマ教会も、もうじき滅びる。『寄生虫』が蔓延した世界では、どの道我々は助からないという事だ。」
「どう言う事だ。」
月影はゆっくりと立ち上がると、近くにある端末のボタンを操作して巨大なモニターに映像を映し出した。
沖田はその映像を見て驚愕する。
そこに映し出された世界は
――――――――死の世界
崩壊した建物を見るに、かつて文明が存在していた事が垣間見える。
しかし、次々と映し出される映像には、生命の影すら見られない。
まるで核戦争でも起きた後のような静寂が支配する世界。
「月影総理………ここは?」
沖田が質問をすると、月影は重たい口を開く。
「ここは『ユグドラシル』の世界。」
「ユグドラシル…?四年前に夢野 可憐(ゆめの かれん)が足を踏み入れたあの世界か?」
「そうだ。沖田君も聞いているだろう。ヴァンパイア族やエルフ族が現実に生活をする世界。我々の住む世界とは別のアナザーワールド(異世界)だ。」
沖田は知っている。
四年前『黒い霧』を発生させた『異世界の門(ゲート)』の向こうの世界。
あの時、可憐を追って『異世界の門(ゲート)』をくぐれなかった自分を沖田は今でも不甲斐なく思う。
「その『ユグドラシル』の世界がどうしたのだ?」
沖田の質問に月影は答える。
「君になら教えても良いだろう。」
私が知り得た――――
――――――この世界の全てを