Seventh World 正義の旗手の章
【正義の戦い編①】
それは、どこから現れたのだろうか。
人間の脳内に侵入した わずか2ミリmほどの小さな虫のようなもの。
それは、人間の本能を刺激するのか。
もしくは、脳に異変をもたらすのか。
悪魔の仕業とも思えるその虫のようなものは、人知れず人の脳内に侵入し破壊をもたらす。
人間達はその虫のようなものを『寄生虫』と呼び、またある世界では『地球外生命体』と呼んだ。
最初にその『寄生虫』が現れたのは『ユグドラシル』と呼ばれる世界であった。
豊かな自然に恵まれた悠久の大地が広がる世界『ユグドラシル』
そこには主要十二主族と呼ばれる人々が暮らしていた。
人族
ヴァンパイア族
エルフ族
妖精族
巨人族
サラマンダー族
ガーゴイル族
獣人族
オーク族
ドワーフ族
霊族
そして………魔族
『ユグドラシル』の歴史は戦乱の歴史。
彼等は世界の主導権を握る為に多くの戦闘を繰り返す。
更に『ユグドラシル』を襲った不幸は、世界の分裂。
人族が住む広大な世界と、残りの種族が住む荒れた大地に分断された『ユグドラシル』はSeventh World(7つの世界)の中でも特に混迷を極めた世界と言えよう。
それでも『ユグドラシル』の人々は諦め無い。
やせ細った大地の中でも力強く生き抜き、相応の平和を謳歌していた。
しかし、運命とは時に残酷である。
ようやく掴んだ平和に少しづつ忍び寄る魔の手。
奴等は魔族と十一種族の確執に目をつけた。
『寄生虫』とは―――――
奴等によって
人為的に造り出された
―――――――――悪魔の所業
人々の脳に入り込んだ『寄生虫』は強い殺人願望に駆られ自ら進んで戦闘を引き起こす。
奴等は魔族を利用して十一種族と対立させて戦乱を引き起こしたのだ。
更に『寄生虫』には特殊な種類のものが存在する。
人を操る事が出来る『寄生虫』。
魔族の中でも、おそらく最強の魔法使いである1人の少女。
――――エミリー・エヴァリーナ
魔族の王族であるエミリーの脳に入り込んだ『寄生虫』はエミリーを操り、かつての仲間達と戦わせる。
もはやエミリーを止める事は出来ない。
エミリーとの戦闘は、殺すか殺されるか。
何も知らず、奴等の仕掛けた罠に陥る『ユグドラシル』の戦士達。
しかし――――――――
魔族の王の娘エミリー・エヴァリーナにとって、人族や他の十種族を支配する事は至上の目的。
戦いこそ魔族にとって最大の喜び。
エミリー本人ですら気が付かなかった『寄生虫』による脳の操作。
そんな幻想を――――
―――――――パリィーンッ!
夢野 可憐(ゆめの かれん)の言霊(ことだま)の力が粉々に打ち砕く。
それまで激しい痛みを伴っていたエミリーの脳内にある『寄生虫』が
―――――――消滅する
激しい戦闘の最中、もう一人の少女『夢野 可憐(ゆめの かれん)』が、無意識のうちにエミリーの中の『寄生虫』を消滅させたのだ。
あの女――――
我々の仕掛けた『摩揶(まや)の術』を消滅させたぞ。
なんだと?
まさか、あの女『聖なる加護』の持ち主だとでも言うのか?
『聖なる加護』など存在するのですか?
ただの偶然でしょう。
とにかく、我々は『Seventh World(7つの世界)』の支配を進めなければならない。
『ユグドラシル』の世界は対立と戦乱を引き起こすには都合の良い世界。
この世界(ユグドラシル)の侵略を手始めに残りの世界への侵略を開始する。
Seventh World(7つの世界)は―――
――――――必ず手に入れて見せる
【正義の戦い編②】
夢野 可憐(ゆめの かれん)
西暦2027年12月生
日本帝都学園一学年在籍時にアイドル歌手としてデビュー。瞬く間に日本のトップアイドルとして君臨する。
日本帝都学園二学年時に総理大臣となった北条 月影(ほうじょう つきかげ)の側近として活動。一時は月影総理の隠し子との噂もあったほど親密な関係にあった。
西暦2042年12月25日、当時世界中でライブ中継された国会議事堂前襲撃事件。この時、未知の人物であるエルピスを倒し『黒い化物』を消滅させた事は 今でも語りぐさとなっている。
また、この時 確認された映像では、夢野 可憐(ゆめの かれん)は暴漢に何度も身体を貫かれているにも関わらず死ぬ事は無かった。
翌西暦2043年、日本国の富士山を発生源とする『黒い霧』事件。近代文明を無効化する正体不明の『黒い霧』が発生後に夢野 可憐(ゆめの かれん)は神奈川県を拠点に活動。
神奈川県最強ポリス『ブルースカイ』に所属するもその後消息を断つ。
数ヶ月後に夢野 可憐(ゆめの かれん)が瀕死の状態で姿を現した時には既に『黒い霧』は消滅。一説には『黒い霧』の消滅に夢野 可憐が強く関わっているとの情報もある。
日本での歌手としての実績はデビューから五年の間にCD総売上1億枚を突破。ライブ中継された国会議事堂前襲撃事件後は世界中にファンを増やし、21世紀最も成功した歌手とも言われている。
彼女の歌声は『天使の歌声』と称され一度その歌声を聴くと誰もが心を奪われると言う。夢野 可憐(ゆめの かれん)の一声で全世界の何億人もの人間が彼女の為に行動するとの研究データもある。
「以上が今回の我々の目的(ターゲット)の概要だ。」
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊長カーズ・ロベルトが隊員を見渡して言う。
「改めて聞くとすげぇ経歴の持ち主だな。とても同じ人間とは思えねぇ…。」
アルフ・ジャスティスは素直に感嘆の声を上げる。
すると隣で話を聞いていたシルベスタ・ドラゴンがトレードマークの眼鏡をクイッと上げて
「お前も十分 人間とは思えないな。」
とツッコミを入れた。
アルフを含む米軍最強の特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』のメンバー13名が日本に上陸したのはその日の午後。
特殊な手術を要する『フォーミュラ・ジャスティス』は他の特殊部隊と比べて極端に人員が少ない。
なぜなら、『寄生虫』を寄せ付け無い電磁波を発生する脳内手術の成功率は0.8%。
まさに彼等は選ばれた人間。
―――――超人集団なのである
「では作戦の具体的な指示を出す。」
カーズは作戦の内容の説明を始める。
「夢野 可憐の現在の所在は不明である。しかし、彼女と親密な関係にある元日本国総理大臣『北条 月影(ほうじょう つきかげ)』の所在は確認されている。」
「シルバードームか……」
隊員の誰かがポツリと呟いた。
東京都千代田区の一角に建てられた内閣総理大臣の公邸。
別名―――『白銀の要塞(シルバードーム)』
原子爆弾が落ちてもビクともしないと言われる日本国の最新技術と莫大な資金が投入されて建てられた鉄壁の要塞。
今回の米軍機による爆撃にも耐え抜いた『シルバードーム』に北条 月影(ほうじょう つきかげ)が隠れているのは間違い無い。
「月影か…『寄生虫』に洗脳された人間なんかより遥かに強敵だな。」
シルベスタが隊員達の内心を代弁して言う。
「そうでも無いさ。俺達アメリカの科学力と日本の科学力の対決だろ?合衆国が日本なんかに負けるとでも思っているのか?」
俺達『フォーミュラ・ジャスティス』こそ世界最強――――
「見せつけてやろうぜ!俺達の実力を!」
これは正義の為の戦いだ――――
【正義の戦い編③】
西暦2047年8月23日
東京都千代田区
白銀の要塞(シルバードーム)
米軍の空爆により廃墟と化した関東地方において、ひと際 輝くその建物。
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達が白銀の要塞(シルバードーム)を取り囲む。
「まずは、俺が行こう。」
そう言って前に出るのは、隊員の中でもベテランと呼ばれる男、ヘンリー・ロドリゲス。
その右肩に乗せられているのは長さ5ヤードもある巨大な大砲。
米軍の重量級戦車に装備されている大砲を軽々と持ち上げるヘンリーもまさに超人と言えよう。
「スリー」
「ツー」
「ワン」
「ファイア!」
ズドーッン!!!
廃墟と化した東京の街に轟音が鳴り響く。
シルバードームの白く光る壁に激突した砲弾が、巨大な爆炎を発生させ、周囲に砂煙を撒き散らす。
「……………」
「どうやら、原爆が落ちてもビクともしないとの触れ込みは本当らしいな。」
隊長のカーズ・ロベルトが呆れ顔でシルバードームを見つめる。
白銀の要塞(シルバードーム)の白い壁は大砲の直撃を受けても傷一つ付いていない。
「なに、方法はいくらでもある。あの金属の壁は超高熱には弱いとのデータがある。俺の能力なら問題無い。」
そう言い放つのは、隊員屈指の異質な能力者シルベスタ・ドラゴン。
シルベスタは左手にはめた特殊な銃口をシルバードームに向けて標準を定める。
ビビッ――――
シルベスタの左腕に電磁波が走り、その銃口に電気のエネルギーが充電されて行く。
人間の体内には微弱な電流が流れていると言う。
シルベスタは特殊な手術により、無限に電流を造り出せる電気人間。
そこにアメリカ合衆国の軍事技術が組み合わさり、超兵器を産み出した。
―――――超電磁砲(レールガン)
シルベスタの左手から超高熱の電気エネルギーが放出される。
バチバチバチッ!
ビカッ!!
『フォーミュラ・ジャスティス』最強世代に属する3人の兵士の一人、シルベスタの能力が炸裂する。
先程の大砲とは違い、シルベスタの超電磁砲(レールガン)は超硬度の耐久力を誇るシルバードームの白い壁を――
ジュワッ――――
―――――――――焼き溶かす
「ヒュー♪」
隊員の一人が口笛を鳴らす。
「やるじゃねぇかシルベスタ!まぁ、俺のライトセイバーでも焼き払う事は出来るがな。」
そう嘘ぶくのはアルフ・ジャスティス。
日本国が誇る白い要塞(シルバードーム)の壁は『フォーミュラ・ジャスティス』の手に難なく攻略される。
「よし!突撃開始!ツーマンセルで進め!」
カーズの指示により、無残に穴の空いた壁から侵入を試みるのは、2人の若き隊員バルゴとジョースター。
アルフ・ジャスティスよりも更に若い最年少の2人は見事な連携でシルバードームの内部へと侵入する。
他の隊員はバルゴとジョースターからの連絡が入るまで外で待機。
最小人数での突入は、万が一の時の全滅を避ける為の当然の行動と言えよう。
「………」
数分の時が流れる。
(おかしい………連絡が遅い。)
カーズは2人からの連絡を受け取る通信機に耳を傾ける。
すると通信機から2人の声が聞こえて来た。
『ぐわぁ!』
『隊長!敵です!助けっ…………』
「!?」
「おいっ!バルゴ!ジョースター!!何があった!!」
『…………』
『ギギィ………』
『ギギィ……………』
ギギィ………………………
カーズが耳にしたのは、通信機から聞こえて来る不気味な機械音。
そして、その音の発信源はシルバードームの溶解した壁の中から、ゆっくりと姿を見せる。
「あれは…………」
壁から現れたのは、アメンボのような長い足を生やした機械仕掛けの白銀のロボット。
胴体を構成する素材は、シルバードームと同じ超硬度を誇る白銀色をした超合金製の金属。
日本政府が最先端技術を投入して造り出した量産型の殺人兵器。
――――――通称『アメンボ』
『アメンボ』と呼ばれる殺人兵器の赤い目が怪しく光り輝いた。

シルベスタ・ドラゴン
【正義の戦い編①】
それは、どこから現れたのだろうか。
人間の脳内に侵入した わずか2ミリmほどの小さな虫のようなもの。
それは、人間の本能を刺激するのか。
もしくは、脳に異変をもたらすのか。
悪魔の仕業とも思えるその虫のようなものは、人知れず人の脳内に侵入し破壊をもたらす。
人間達はその虫のようなものを『寄生虫』と呼び、またある世界では『地球外生命体』と呼んだ。
最初にその『寄生虫』が現れたのは『ユグドラシル』と呼ばれる世界であった。
豊かな自然に恵まれた悠久の大地が広がる世界『ユグドラシル』
そこには主要十二主族と呼ばれる人々が暮らしていた。
人族
ヴァンパイア族
エルフ族
妖精族
巨人族
サラマンダー族
ガーゴイル族
獣人族
オーク族
ドワーフ族
霊族
そして………魔族
『ユグドラシル』の歴史は戦乱の歴史。
彼等は世界の主導権を握る為に多くの戦闘を繰り返す。
更に『ユグドラシル』を襲った不幸は、世界の分裂。
人族が住む広大な世界と、残りの種族が住む荒れた大地に分断された『ユグドラシル』はSeventh World(7つの世界)の中でも特に混迷を極めた世界と言えよう。
それでも『ユグドラシル』の人々は諦め無い。
やせ細った大地の中でも力強く生き抜き、相応の平和を謳歌していた。
しかし、運命とは時に残酷である。
ようやく掴んだ平和に少しづつ忍び寄る魔の手。
奴等は魔族と十一種族の確執に目をつけた。
『寄生虫』とは―――――
奴等によって
人為的に造り出された
―――――――――悪魔の所業
人々の脳に入り込んだ『寄生虫』は強い殺人願望に駆られ自ら進んで戦闘を引き起こす。
奴等は魔族を利用して十一種族と対立させて戦乱を引き起こしたのだ。
更に『寄生虫』には特殊な種類のものが存在する。
人を操る事が出来る『寄生虫』。
魔族の中でも、おそらく最強の魔法使いである1人の少女。
――――エミリー・エヴァリーナ
魔族の王族であるエミリーの脳に入り込んだ『寄生虫』はエミリーを操り、かつての仲間達と戦わせる。
もはやエミリーを止める事は出来ない。
エミリーとの戦闘は、殺すか殺されるか。
何も知らず、奴等の仕掛けた罠に陥る『ユグドラシル』の戦士達。
しかし――――――――
魔族の王の娘エミリー・エヴァリーナにとって、人族や他の十種族を支配する事は至上の目的。
戦いこそ魔族にとって最大の喜び。
エミリー本人ですら気が付かなかった『寄生虫』による脳の操作。
そんな幻想を――――
―――――――パリィーンッ!
夢野 可憐(ゆめの かれん)の言霊(ことだま)の力が粉々に打ち砕く。
それまで激しい痛みを伴っていたエミリーの脳内にある『寄生虫』が
―――――――消滅する
激しい戦闘の最中、もう一人の少女『夢野 可憐(ゆめの かれん)』が、無意識のうちにエミリーの中の『寄生虫』を消滅させたのだ。
あの女――――
我々の仕掛けた『摩揶(まや)の術』を消滅させたぞ。
なんだと?
まさか、あの女『聖なる加護』の持ち主だとでも言うのか?
『聖なる加護』など存在するのですか?
ただの偶然でしょう。
とにかく、我々は『Seventh World(7つの世界)』の支配を進めなければならない。
『ユグドラシル』の世界は対立と戦乱を引き起こすには都合の良い世界。
この世界(ユグドラシル)の侵略を手始めに残りの世界への侵略を開始する。
Seventh World(7つの世界)は―――
――――――必ず手に入れて見せる
【正義の戦い編②】
夢野 可憐(ゆめの かれん)
西暦2027年12月生
日本帝都学園一学年在籍時にアイドル歌手としてデビュー。瞬く間に日本のトップアイドルとして君臨する。
日本帝都学園二学年時に総理大臣となった北条 月影(ほうじょう つきかげ)の側近として活動。一時は月影総理の隠し子との噂もあったほど親密な関係にあった。
西暦2042年12月25日、当時世界中でライブ中継された国会議事堂前襲撃事件。この時、未知の人物であるエルピスを倒し『黒い化物』を消滅させた事は 今でも語りぐさとなっている。
また、この時 確認された映像では、夢野 可憐(ゆめの かれん)は暴漢に何度も身体を貫かれているにも関わらず死ぬ事は無かった。
翌西暦2043年、日本国の富士山を発生源とする『黒い霧』事件。近代文明を無効化する正体不明の『黒い霧』が発生後に夢野 可憐(ゆめの かれん)は神奈川県を拠点に活動。
神奈川県最強ポリス『ブルースカイ』に所属するもその後消息を断つ。
数ヶ月後に夢野 可憐(ゆめの かれん)が瀕死の状態で姿を現した時には既に『黒い霧』は消滅。一説には『黒い霧』の消滅に夢野 可憐が強く関わっているとの情報もある。
日本での歌手としての実績はデビューから五年の間にCD総売上1億枚を突破。ライブ中継された国会議事堂前襲撃事件後は世界中にファンを増やし、21世紀最も成功した歌手とも言われている。
彼女の歌声は『天使の歌声』と称され一度その歌声を聴くと誰もが心を奪われると言う。夢野 可憐(ゆめの かれん)の一声で全世界の何億人もの人間が彼女の為に行動するとの研究データもある。
「以上が今回の我々の目的(ターゲット)の概要だ。」
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊長カーズ・ロベルトが隊員を見渡して言う。
「改めて聞くとすげぇ経歴の持ち主だな。とても同じ人間とは思えねぇ…。」
アルフ・ジャスティスは素直に感嘆の声を上げる。
すると隣で話を聞いていたシルベスタ・ドラゴンがトレードマークの眼鏡をクイッと上げて
「お前も十分 人間とは思えないな。」
とツッコミを入れた。
アルフを含む米軍最強の特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』のメンバー13名が日本に上陸したのはその日の午後。
特殊な手術を要する『フォーミュラ・ジャスティス』は他の特殊部隊と比べて極端に人員が少ない。
なぜなら、『寄生虫』を寄せ付け無い電磁波を発生する脳内手術の成功率は0.8%。
まさに彼等は選ばれた人間。
―――――超人集団なのである
「では作戦の具体的な指示を出す。」
カーズは作戦の内容の説明を始める。
「夢野 可憐の現在の所在は不明である。しかし、彼女と親密な関係にある元日本国総理大臣『北条 月影(ほうじょう つきかげ)』の所在は確認されている。」
「シルバードームか……」
隊員の誰かがポツリと呟いた。
東京都千代田区の一角に建てられた内閣総理大臣の公邸。
別名―――『白銀の要塞(シルバードーム)』
原子爆弾が落ちてもビクともしないと言われる日本国の最新技術と莫大な資金が投入されて建てられた鉄壁の要塞。
今回の米軍機による爆撃にも耐え抜いた『シルバードーム』に北条 月影(ほうじょう つきかげ)が隠れているのは間違い無い。
「月影か…『寄生虫』に洗脳された人間なんかより遥かに強敵だな。」
シルベスタが隊員達の内心を代弁して言う。
「そうでも無いさ。俺達アメリカの科学力と日本の科学力の対決だろ?合衆国が日本なんかに負けるとでも思っているのか?」
俺達『フォーミュラ・ジャスティス』こそ世界最強――――
「見せつけてやろうぜ!俺達の実力を!」
これは正義の為の戦いだ――――
【正義の戦い編③】
西暦2047年8月23日
東京都千代田区
白銀の要塞(シルバードーム)
米軍の空爆により廃墟と化した関東地方において、ひと際 輝くその建物。
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達が白銀の要塞(シルバードーム)を取り囲む。
「まずは、俺が行こう。」
そう言って前に出るのは、隊員の中でもベテランと呼ばれる男、ヘンリー・ロドリゲス。
その右肩に乗せられているのは長さ5ヤードもある巨大な大砲。
米軍の重量級戦車に装備されている大砲を軽々と持ち上げるヘンリーもまさに超人と言えよう。
「スリー」
「ツー」
「ワン」
「ファイア!」
ズドーッン!!!
廃墟と化した東京の街に轟音が鳴り響く。
シルバードームの白く光る壁に激突した砲弾が、巨大な爆炎を発生させ、周囲に砂煙を撒き散らす。
「……………」
「どうやら、原爆が落ちてもビクともしないとの触れ込みは本当らしいな。」
隊長のカーズ・ロベルトが呆れ顔でシルバードームを見つめる。
白銀の要塞(シルバードーム)の白い壁は大砲の直撃を受けても傷一つ付いていない。
「なに、方法はいくらでもある。あの金属の壁は超高熱には弱いとのデータがある。俺の能力なら問題無い。」
そう言い放つのは、隊員屈指の異質な能力者シルベスタ・ドラゴン。
シルベスタは左手にはめた特殊な銃口をシルバードームに向けて標準を定める。
ビビッ――――
シルベスタの左腕に電磁波が走り、その銃口に電気のエネルギーが充電されて行く。
人間の体内には微弱な電流が流れていると言う。
シルベスタは特殊な手術により、無限に電流を造り出せる電気人間。
そこにアメリカ合衆国の軍事技術が組み合わさり、超兵器を産み出した。
―――――超電磁砲(レールガン)
シルベスタの左手から超高熱の電気エネルギーが放出される。
バチバチバチッ!
ビカッ!!
『フォーミュラ・ジャスティス』最強世代に属する3人の兵士の一人、シルベスタの能力が炸裂する。
先程の大砲とは違い、シルベスタの超電磁砲(レールガン)は超硬度の耐久力を誇るシルバードームの白い壁を――
ジュワッ――――
―――――――――焼き溶かす
「ヒュー♪」
隊員の一人が口笛を鳴らす。
「やるじゃねぇかシルベスタ!まぁ、俺のライトセイバーでも焼き払う事は出来るがな。」
そう嘘ぶくのはアルフ・ジャスティス。
日本国が誇る白い要塞(シルバードーム)の壁は『フォーミュラ・ジャスティス』の手に難なく攻略される。
「よし!突撃開始!ツーマンセルで進め!」
カーズの指示により、無残に穴の空いた壁から侵入を試みるのは、2人の若き隊員バルゴとジョースター。
アルフ・ジャスティスよりも更に若い最年少の2人は見事な連携でシルバードームの内部へと侵入する。
他の隊員はバルゴとジョースターからの連絡が入るまで外で待機。
最小人数での突入は、万が一の時の全滅を避ける為の当然の行動と言えよう。
「………」
数分の時が流れる。
(おかしい………連絡が遅い。)
カーズは2人からの連絡を受け取る通信機に耳を傾ける。
すると通信機から2人の声が聞こえて来た。
『ぐわぁ!』
『隊長!敵です!助けっ…………』
「!?」
「おいっ!バルゴ!ジョースター!!何があった!!」
『…………』
『ギギィ………』
『ギギィ……………』
ギギィ………………………
カーズが耳にしたのは、通信機から聞こえて来る不気味な機械音。
そして、その音の発信源はシルバードームの溶解した壁の中から、ゆっくりと姿を見せる。
「あれは…………」
壁から現れたのは、アメンボのような長い足を生やした機械仕掛けの白銀のロボット。
胴体を構成する素材は、シルバードームと同じ超硬度を誇る白銀色をした超合金製の金属。
日本政府が最先端技術を投入して造り出した量産型の殺人兵器。
――――――通称『アメンボ』
『アメンボ』と呼ばれる殺人兵器の赤い目が怪しく光り輝いた。

シルベスタ・ドラゴン