【アロンの戦い編①】
飛燕剣(ひえんけん)のアロン
ユグドラシルの世界広しと言えども、その名を知らない者は居ない。
一般的に他の種族と比べて身体能力が低い人族であるが、稀にとんでもないモンスターが出現する。
アロンは紛れもなく人族の能力を越える100年に1人の逸材であった。
アロンの名を世に知らしめたのは、2年前の魔族との間に起きた事件。
魔族の王シュバルツが仲間の魔族と共に人族の王家の城を訪れた時の事。
魔族に不満を持つ人族の兵士達がシュバルツの暗殺を試みた。
暗殺の方法は弓による奇襲攻撃。
人族の王との会談を終えたシュバルツが、人族の護衛と共に城を出た時、城の内部から一斉に矢が放たれた。
シュバババババッ!!
その数はおよそ1000本。
シュバルツはその攻撃を見てにやりと笑う。
「そのような攻撃が魔族の王に通じると思っているのか!」
シュバルツは全身に魔力を集中する。
「この俺様に歯向かう奴は皆殺しにしてやる!」
シュバルツがそう叫ぶと同時に、人族の護衛の戦士が行動に出る。
「飛燕神速剣!」
バスバスバスバスッ!!
「!?」
なんと人族の戦士が飛んで来た全ての矢を見事な剣技で叩き斬る。
(むぅ……、何という速さだ。)
シュバルツは自分が動くよりも速く矢を防いだ人族の男に目を奪われる。
全ての矢を斬り落とした男は振り向いてこんな事を言ってのける。
「魔族の王シュバルツ様に何かあっては一大事。今のは私の実力を知って欲しくて行ったデモンストレーションでございます。」
「何だと?今の攻撃は私を狙った物では無いと言うのか?」
「もちろんですシュバルツ様。私はシュバルツ様を無事に魔族の城へお届けしなければなりません。護衛の実力を知っておいた方がシュバルツ様も安心でしょう。」
その男は何事も無かったかのようにシュバルツの横に控え歩き始める。
「ハッハッハ!」
シュバルツは楽しげに笑い声を上げる。
「どうされましたかシュバルツ様?」
男の質問にシュバルツは答える。
「面白い男だ。それに剣の実力も人族とは思えぬ力量。名は何と言う?」
「はっ!私は近衛騎士団所属、アロン・サンダース。命に変えてもシュバルツ様を魔族の城までお届け致します。」
「ふん、下らない演技はもう良い。今回の件はお前に免じて無かった事にしてやろう。しかし……」
「……しかし?」
「お前のその腕前は魔族にとって脅威である。お前の右腕を差し出すが良い。」
ゴクリ……
(流石に丸く納める事は出来ないか……)
アロンは額から汗が流れ落ちるのを感じ取る。
(どうする?右腕を失うか、シュバルツをこの場で叩き斬るか……。)
「どうした?早く腕を出すが良い。」
アロンは何も答えず飛燕剣を左手に持って構える。
(ふん、この俺様と殺り合う気か……。)
シュバルツがそう思った次の瞬間――
バシュッ!!
「痛っ!」
アロンは自分の右腕を飛燕剣で斬り落とす。
(なんと、この男……!)
驚くシュバルツにアロンは言う。
「これで満足でしょうか?しかし、この腕では護衛の任務が出来るかどうか…。」
「ふん、もう良い。さっさと城へ戻るが良い。この俺様に人族の護衛など不要だ。」
それだけ言い残しシュバルツと護衛の魔族の戦士は人族の城を後にする。
――――――――――――――――
「アロン!何て無茶な事を!至急手当てを!」
城に戻ったアロンを出迎える城の戦士達。
「無茶じゃ無いさ。すぐに右腕を付ければ元に戻る。血管一つ潰さないように切断したからな。」
「何だって!?」
アロンの言う通り綺麗に斬り落とされた右腕は、細胞の断面までがピタリとくっつくように切断されていた。
「完全に治るまでは1ヶ月は掛かるだろう。それまで仕事は休ませて貰うぜ。」
魔族の王シュバルツの暗殺未遂事件。
シュバルツには1000本の矢での攻撃は通用しなかったであろう。
そして、矢を放った戦士はもちろん、城に居た王族達までもシュバルツによって殺されていた可能性が高い。
アロンは一人の犠牲者も出さずに、その場を治めたのだ。
【アロンの戦い編②】
十一種族の王族達が秘密裏に計画している作戦。
―――――魔族掃討作戦
巨人族のグレイン王と妖精族のシルビア王女が主導して立てられた この計画には、どうしても必要な人材が居る。
―――――エルフ族の王女リーナ
エルフの一族は女系の一族。
神々の武器である『アルテミスの槍』を自在に扱えるのは彼女のみ。
魔族の王シュバルツに対抗するには、どうしても彼女の力が必要となる。
グレインとシルビアはリーナに協力を求める為に人族のアロンを迎えに行かせる。
それには理由がある。
どんなに強くても、リーナは若干12歳の幼い少女。
今回の計画にリーナを参加させる事は、リーナの父親であるシュリル王が強く反対をしていた。
最愛の妻ライカ王妃を魔族との戦闘で失ったシュリル王にとって、リーナは大切なひとり娘。
3ヶ月前にグレイン王がエルフの森に訪れた時
「こんな不確かな計画にリーナを参加させる訳には行かない!」
シュリル王はリーナを迎えに来たグレイン王にそう言い放った。
それから3ヶ月、グレインが託した戦士が人族のアロン。
アロンならシュリル王を説得してリーナを連れて来れるに違いない。
エルフの森に辿り着いたアロン。
「はぁ…、グレイン王も勝手な事を言う。」
アロンは広大な森を前に一人ぼやく。
「戦闘ならともかく、説得ってどうすりゃいいんだ?」
重大な任務を託されたアロンはエルフの森に足を踏み入れた。
チュンチュン
「それにしても、広大な森だ。」
大自然を見渡すアロン。
埋め尽くす木々の鮮やかな緑がアロンを包み込む。
しばらく歩くと森の先で何やら揉めている声が聞こえて来た。
(何だ………?)
エルフの森の中心部。エルフ族の王族が住む建物の前で何やら騒がしい怒鳴り声が聞こえて来た。
「シュリル王よ!まさか魔族に逆らう気ではあるまい!早くその娘を差し出すが良い!」
「無礼者!理由も無く、我が子リーナを引き渡すとでも思ったか!」
アロンはその会話を聞いて反応する。
(リーナだと?あの娘がプリンセス・リーナか……、本当に子供じゃないか。)
エルフ王シュリルと魔族の戦士の言い争いに割って入るのは、話題の張本人リーナ。
「お父様、お止め下さい。魔族に逆らえば王族のみならず、エルフの森の住民にまで被害が及びます。」
「リーナ……何を……。」
「魔族の使いの者よ。私は逃げも隠れもしません。さぁ、一緒に参りましょう。」
「ハッハッハ、王であるお主よりも娘の方が利口のようだ。シュバルツ様が目を付けるのも最もな話だな。」
3人の魔族の戦士は、リーナが付いて来るのを確認すると、建物から立ち去ろうとする。
「くっ……、娘を取られるくらいなら、」
シュリル王は腰に刺していた大剣に手を掛ける。
すると、シュリル王の手を、横から突然現れた男がそっと塞ぐ。
「!?」
シュリル王は急に現れた男を見て言う。
「キサマ何者だ!?」
「シュリル王よ…、止めた方が良い。王族が魔族に手を出したら取り返しが付かなくなる。」
「貴様は………飛燕剣のアロンか!?」
アロンは人族の王族直轄の近衛騎士団の戦士。シュリル王とも面識がある。
「止めるなアロン。リーナを奴等に奪われる訳には行かないのだ。」
「大丈夫だ……、俺が居る。」
「………アロン……!?」
アロンはそう言って3人の魔族を後ろから呼び止める。
「待ちな魔族の戦士!!」
何事かと後ろを振り向く3人の魔族とリーナ。
「悪いが、その娘リーナは渡す訳には行かない。返して貰うぜ。」
「何だと!?」
驚く魔族の戦士達。
「お前は人族のアロン!?人族には関係の無い話だ!邪魔者は消えるが良い!」
1人の魔族の戦士がそう言うと、アロンは不敵な笑みを浮かべて言う。
「関係ない?それが、そうでも無いんだな……。」
「……どう言う事だ!?」
更にアロンは言葉を続ける。
「俺はその娘が気に入ってるんだ。だから、わざわざ人族の国からこの娘リーナをさらいに来た。邪魔者はお前達の方さ。」
「何だと!?」
驚く3人の魔族。
リーナも初めて見る男の言葉に驚いている。
魔族の戦士がアロンに言う。
「正気かお前?魔族に逆らって無事で済むと思っているのか?」
アロンは魔族の戦士に見てニヤリと笑う。
「お前達こそ、俺が誰だか知っているだろう?3人程度の人数で俺と戦うなら死ぬ気で掛かって来い!」
そう言ってアロンは飛燕剣を前に構える。
「貴様!本気で殺り合う気か!?」
「本気かどうか、掛かって来いよ。その勇気があるならな。」
ユグドラシルの世界広しと言えど、魔族に対して脅しの効く戦士はそうは居ない。
この時既に、アロンの名前は世界中に知れ渡って居た。
飛燕剣のアロンは、世界最強の剣士――
「貴様………」
流石の魔族の戦士も迂闊に手は出せない。
そして――
ズサッ!
「!!」
「きゃあ!」
神速の速さでリーナに接近し抱き抱えるアロン。
「ちょっと!?何をするのですか!?」
アロンは言う。
「言っただろう?俺はお前を気に入ったんだ。お前をさらいに来た。」
そしてアロンはリーナを抱えたままエルフの森を疾走する。
慌てる魔族の戦士達。
「おい!待てっ!」
「逃がすな!追え!」
3人の魔族の戦士が逃げるアロンを追い掛ける。
しかし神速の速さで駆け抜けるアロンを追う事など到底出来ない。
逆走して戻って来るアロンを見て驚くシュリル王。
王とのすれ違い様にアロンは言う。
「リーナ姫は、ここに居たら危険だ!俺がしばらく預かるぞ!」
「アロン貴様!さてはグレイン王の命令で!」
「そう言う事だ!」
遠ざかるアロンが抱えるリーナにシュリル王は言う。
「リーナよ!『アルテミスの槍』を持って行け!あの槍はお前にしか扱えぬ!」
リーナは言う。
「お父様!どうかご無事で!任務が終わったらすぐに戻ります!」
アロンはリーナの言葉を聞いて思う。
(なんだよ……。任務ってちゃんと分かっているじゃないか。)
バタバタバタッ!
「む!?」
するとエルフの森の王族の済む建物から巨大な大鷲が羽ばたいた。
口には黒く光る長槍を咥えている。
(あれが…………)
―――――――アルテミスの槍
大鷲は物凄い勢いで急降下をしてリーナに『アルテミスの槍』を渡す。
アロンは言う。
「さぁ、行こうかお姫様。何があっても俺がお前を守ってやるよ。」
リーナは答える。
「今日の所はお礼を言うべきかしら?でも私を守る事は不要よ。だって私、貴方より強いもの。」
「ふん!子供のくせによく言う………」
広大なエルフの森を駆け抜ける2人
飛燕剣のアロン―――――
――――エルフ族の王女リーナ
この日、
2人は運命の出会いを果たす。
飛燕剣(ひえんけん)のアロン
ユグドラシルの世界広しと言えども、その名を知らない者は居ない。
一般的に他の種族と比べて身体能力が低い人族であるが、稀にとんでもないモンスターが出現する。
アロンは紛れもなく人族の能力を越える100年に1人の逸材であった。
アロンの名を世に知らしめたのは、2年前の魔族との間に起きた事件。
魔族の王シュバルツが仲間の魔族と共に人族の王家の城を訪れた時の事。
魔族に不満を持つ人族の兵士達がシュバルツの暗殺を試みた。
暗殺の方法は弓による奇襲攻撃。
人族の王との会談を終えたシュバルツが、人族の護衛と共に城を出た時、城の内部から一斉に矢が放たれた。
シュバババババッ!!
その数はおよそ1000本。
シュバルツはその攻撃を見てにやりと笑う。
「そのような攻撃が魔族の王に通じると思っているのか!」
シュバルツは全身に魔力を集中する。
「この俺様に歯向かう奴は皆殺しにしてやる!」
シュバルツがそう叫ぶと同時に、人族の護衛の戦士が行動に出る。
「飛燕神速剣!」
バスバスバスバスッ!!
「!?」
なんと人族の戦士が飛んで来た全ての矢を見事な剣技で叩き斬る。
(むぅ……、何という速さだ。)
シュバルツは自分が動くよりも速く矢を防いだ人族の男に目を奪われる。
全ての矢を斬り落とした男は振り向いてこんな事を言ってのける。
「魔族の王シュバルツ様に何かあっては一大事。今のは私の実力を知って欲しくて行ったデモンストレーションでございます。」
「何だと?今の攻撃は私を狙った物では無いと言うのか?」
「もちろんですシュバルツ様。私はシュバルツ様を無事に魔族の城へお届けしなければなりません。護衛の実力を知っておいた方がシュバルツ様も安心でしょう。」
その男は何事も無かったかのようにシュバルツの横に控え歩き始める。
「ハッハッハ!」
シュバルツは楽しげに笑い声を上げる。
「どうされましたかシュバルツ様?」
男の質問にシュバルツは答える。
「面白い男だ。それに剣の実力も人族とは思えぬ力量。名は何と言う?」
「はっ!私は近衛騎士団所属、アロン・サンダース。命に変えてもシュバルツ様を魔族の城までお届け致します。」
「ふん、下らない演技はもう良い。今回の件はお前に免じて無かった事にしてやろう。しかし……」
「……しかし?」
「お前のその腕前は魔族にとって脅威である。お前の右腕を差し出すが良い。」
ゴクリ……
(流石に丸く納める事は出来ないか……)
アロンは額から汗が流れ落ちるのを感じ取る。
(どうする?右腕を失うか、シュバルツをこの場で叩き斬るか……。)
「どうした?早く腕を出すが良い。」
アロンは何も答えず飛燕剣を左手に持って構える。
(ふん、この俺様と殺り合う気か……。)
シュバルツがそう思った次の瞬間――
バシュッ!!
「痛っ!」
アロンは自分の右腕を飛燕剣で斬り落とす。
(なんと、この男……!)
驚くシュバルツにアロンは言う。
「これで満足でしょうか?しかし、この腕では護衛の任務が出来るかどうか…。」
「ふん、もう良い。さっさと城へ戻るが良い。この俺様に人族の護衛など不要だ。」
それだけ言い残しシュバルツと護衛の魔族の戦士は人族の城を後にする。
――――――――――――――――
「アロン!何て無茶な事を!至急手当てを!」
城に戻ったアロンを出迎える城の戦士達。
「無茶じゃ無いさ。すぐに右腕を付ければ元に戻る。血管一つ潰さないように切断したからな。」
「何だって!?」
アロンの言う通り綺麗に斬り落とされた右腕は、細胞の断面までがピタリとくっつくように切断されていた。
「完全に治るまでは1ヶ月は掛かるだろう。それまで仕事は休ませて貰うぜ。」
魔族の王シュバルツの暗殺未遂事件。
シュバルツには1000本の矢での攻撃は通用しなかったであろう。
そして、矢を放った戦士はもちろん、城に居た王族達までもシュバルツによって殺されていた可能性が高い。
アロンは一人の犠牲者も出さずに、その場を治めたのだ。
【アロンの戦い編②】
十一種族の王族達が秘密裏に計画している作戦。
―――――魔族掃討作戦
巨人族のグレイン王と妖精族のシルビア王女が主導して立てられた この計画には、どうしても必要な人材が居る。
―――――エルフ族の王女リーナ
エルフの一族は女系の一族。
神々の武器である『アルテミスの槍』を自在に扱えるのは彼女のみ。
魔族の王シュバルツに対抗するには、どうしても彼女の力が必要となる。
グレインとシルビアはリーナに協力を求める為に人族のアロンを迎えに行かせる。
それには理由がある。
どんなに強くても、リーナは若干12歳の幼い少女。
今回の計画にリーナを参加させる事は、リーナの父親であるシュリル王が強く反対をしていた。
最愛の妻ライカ王妃を魔族との戦闘で失ったシュリル王にとって、リーナは大切なひとり娘。
3ヶ月前にグレイン王がエルフの森に訪れた時
「こんな不確かな計画にリーナを参加させる訳には行かない!」
シュリル王はリーナを迎えに来たグレイン王にそう言い放った。
それから3ヶ月、グレインが託した戦士が人族のアロン。
アロンならシュリル王を説得してリーナを連れて来れるに違いない。
エルフの森に辿り着いたアロン。
「はぁ…、グレイン王も勝手な事を言う。」
アロンは広大な森を前に一人ぼやく。
「戦闘ならともかく、説得ってどうすりゃいいんだ?」
重大な任務を託されたアロンはエルフの森に足を踏み入れた。
チュンチュン
「それにしても、広大な森だ。」
大自然を見渡すアロン。
埋め尽くす木々の鮮やかな緑がアロンを包み込む。
しばらく歩くと森の先で何やら揉めている声が聞こえて来た。
(何だ………?)
エルフの森の中心部。エルフ族の王族が住む建物の前で何やら騒がしい怒鳴り声が聞こえて来た。
「シュリル王よ!まさか魔族に逆らう気ではあるまい!早くその娘を差し出すが良い!」
「無礼者!理由も無く、我が子リーナを引き渡すとでも思ったか!」
アロンはその会話を聞いて反応する。
(リーナだと?あの娘がプリンセス・リーナか……、本当に子供じゃないか。)
エルフ王シュリルと魔族の戦士の言い争いに割って入るのは、話題の張本人リーナ。
「お父様、お止め下さい。魔族に逆らえば王族のみならず、エルフの森の住民にまで被害が及びます。」
「リーナ……何を……。」
「魔族の使いの者よ。私は逃げも隠れもしません。さぁ、一緒に参りましょう。」
「ハッハッハ、王であるお主よりも娘の方が利口のようだ。シュバルツ様が目を付けるのも最もな話だな。」
3人の魔族の戦士は、リーナが付いて来るのを確認すると、建物から立ち去ろうとする。
「くっ……、娘を取られるくらいなら、」
シュリル王は腰に刺していた大剣に手を掛ける。
すると、シュリル王の手を、横から突然現れた男がそっと塞ぐ。
「!?」
シュリル王は急に現れた男を見て言う。
「キサマ何者だ!?」
「シュリル王よ…、止めた方が良い。王族が魔族に手を出したら取り返しが付かなくなる。」
「貴様は………飛燕剣のアロンか!?」
アロンは人族の王族直轄の近衛騎士団の戦士。シュリル王とも面識がある。
「止めるなアロン。リーナを奴等に奪われる訳には行かないのだ。」
「大丈夫だ……、俺が居る。」
「………アロン……!?」
アロンはそう言って3人の魔族を後ろから呼び止める。
「待ちな魔族の戦士!!」
何事かと後ろを振り向く3人の魔族とリーナ。
「悪いが、その娘リーナは渡す訳には行かない。返して貰うぜ。」
「何だと!?」
驚く魔族の戦士達。
「お前は人族のアロン!?人族には関係の無い話だ!邪魔者は消えるが良い!」
1人の魔族の戦士がそう言うと、アロンは不敵な笑みを浮かべて言う。
「関係ない?それが、そうでも無いんだな……。」
「……どう言う事だ!?」
更にアロンは言葉を続ける。
「俺はその娘が気に入ってるんだ。だから、わざわざ人族の国からこの娘リーナをさらいに来た。邪魔者はお前達の方さ。」
「何だと!?」
驚く3人の魔族。
リーナも初めて見る男の言葉に驚いている。
魔族の戦士がアロンに言う。
「正気かお前?魔族に逆らって無事で済むと思っているのか?」
アロンは魔族の戦士に見てニヤリと笑う。
「お前達こそ、俺が誰だか知っているだろう?3人程度の人数で俺と戦うなら死ぬ気で掛かって来い!」
そう言ってアロンは飛燕剣を前に構える。
「貴様!本気で殺り合う気か!?」
「本気かどうか、掛かって来いよ。その勇気があるならな。」
ユグドラシルの世界広しと言えど、魔族に対して脅しの効く戦士はそうは居ない。
この時既に、アロンの名前は世界中に知れ渡って居た。
飛燕剣のアロンは、世界最強の剣士――
「貴様………」
流石の魔族の戦士も迂闊に手は出せない。
そして――
ズサッ!
「!!」
「きゃあ!」
神速の速さでリーナに接近し抱き抱えるアロン。
「ちょっと!?何をするのですか!?」
アロンは言う。
「言っただろう?俺はお前を気に入ったんだ。お前をさらいに来た。」
そしてアロンはリーナを抱えたままエルフの森を疾走する。
慌てる魔族の戦士達。
「おい!待てっ!」
「逃がすな!追え!」
3人の魔族の戦士が逃げるアロンを追い掛ける。
しかし神速の速さで駆け抜けるアロンを追う事など到底出来ない。
逆走して戻って来るアロンを見て驚くシュリル王。
王とのすれ違い様にアロンは言う。
「リーナ姫は、ここに居たら危険だ!俺がしばらく預かるぞ!」
「アロン貴様!さてはグレイン王の命令で!」
「そう言う事だ!」
遠ざかるアロンが抱えるリーナにシュリル王は言う。
「リーナよ!『アルテミスの槍』を持って行け!あの槍はお前にしか扱えぬ!」
リーナは言う。
「お父様!どうかご無事で!任務が終わったらすぐに戻ります!」
アロンはリーナの言葉を聞いて思う。
(なんだよ……。任務ってちゃんと分かっているじゃないか。)
バタバタバタッ!
「む!?」
するとエルフの森の王族の済む建物から巨大な大鷲が羽ばたいた。
口には黒く光る長槍を咥えている。
(あれが…………)
―――――――アルテミスの槍
大鷲は物凄い勢いで急降下をしてリーナに『アルテミスの槍』を渡す。
アロンは言う。
「さぁ、行こうかお姫様。何があっても俺がお前を守ってやるよ。」
リーナは答える。
「今日の所はお礼を言うべきかしら?でも私を守る事は不要よ。だって私、貴方より強いもの。」
「ふん!子供のくせによく言う………」
広大なエルフの森を駆け抜ける2人
飛燕剣のアロン―――――
――――エルフ族の王女リーナ
この日、
2人は運命の出会いを果たす。