これは
パンドラの箱が紡ぎだす
もう一つの物語
【もう一つの物語編①】
太古の昔
神は人類に多くの知恵を授けました。
神から授かった言葉を信じ実践する事こそが、人類が発展し生き延びるための手段であり、他に選択肢はありません。
神は預言者に多くの知恵を授け契約を結びます。
その一つ
魔法使の女は
これを生かしておいてはならない
時は流れ17世紀のヨーロッパ。
ローマ教皇庁の主導によって異端審問が活発化し多くの魔女が摘発されて行きました。
飢饉、病気、不慮の事故、多くの厄災が魔女の仕業だとされローマ教皇庁のもと正義の騎士団が結成される。
その名も
―――法廷騎士団(ほうていきしだん)
魔女狩りに特化したその騎士団は、その圧倒的な武力を背景に魔女を拘束し裁判にかけて行きます。裁判にかけられた魔女への判決は死刑。例外は有りません。
「助けて下さい。私は何もしていません。」
「無実です!私が魔女なんて、とんだ濡れ衣です!」
「ええい黙れ!黙れ!人々を惑わす魔女め!死して償うが良い!」
多くの無実の市民が裁判に掛けられ死刑判決を受ける事となる。
それでは
本当に魔女は居なかったのか?
いいえ、そうでは有りません。
この時代、多くの魔女が一般の人々と一緒に暮していた。
魔女には不思議な力があり、炎を自在に操ったり、物を空中に浮かしたり、時には人々の病気を治したりする魔女もいた。
そんな得体の知れない魔女の能力を恐れたローマ教皇庁の魔女狩りは一層の激しさを増して行く。
「ファミリア様、このままでは魔女は全滅してしまいます。」
「もはや私達の言い分が通じる相手では有りません。」
「このまま隠れていても、いつかは見付かって殺されます。」
「団結しましょう!私達が一つになれば、ローマ教皇庁にだって対抗出来るはずです。」
ファミリアは魔女達の話にコクリと頷いて言う。
「分かりました。出来るだけ多くの魔女を集めて下さい。法廷騎士団と戦いましょう!」
ファミリア・エヴァリーナ
美しい金髪に翠色の瞳を持つファミリアは、当時の魔女達の中でもおそらく最高の魔法使い。
ファミリアは分散していた魔女仲間を集め城に立て籠もる。
絶壁に囲まれた魔女の城には容易に近づく事は出来ません。
城を攻めるには真正面から突撃するしか無いでしょう。
人数で勝る法廷騎士団と戦うには最善の策である。
こうして、魔女達と法廷騎士団との最初で最期の大規模な戦いが始まった。
「燃え盛れ!フィアンマ!」
「凍り付け!ブリザード!」
魔女達は迫りくる騎士団を得意の魔法で迎え撃ちます。しかし魔法と言っても無敵ではありません。
自然界に生息する精霊達の力を借りて超常現象を起こすのが魔法の基本。同じ場所で多くの魔法を使うには精霊の数に限界があります。
法廷騎士団側もその事は百も承知しており、騎士団に属する魔法使いが無闇矢鱈(むやみやたら)に魔法を発動させます。
大気中に生息する精霊の数は次第に減少し魔法を自由に発動する事が出来なくなって行く。
「今だ!一斉に突撃しろ!!」
法廷騎士団の威勢の良い号令が戦場に響き渡る。
城門は遂に突破され虐殺が始まった。
もはや裁判にかける必要も無いのでしょう。
「きゃあぁぁあぁぁ!!」
「ファミリア様、もう保ちません!」
仲間の魔女達が次々と殺されて行く。
精霊の力が枯渇した中では魔法は発動出来ないので、さすがの大魔法使いのファミリアも成す術がありません。
「あぁ、もうお終いのようです……、せめてこの娘…エミリーだけでも助かる方法があれば…。」
母親に似て金髪に翠色の綺麗な瞳を持つエミリー。15歳になったエミリーをファミリアは優しく抱き締めます。
「マンマ、何で泣いてるの?」
エミリーが粒らな瞳をファミリアに向けて言いました。
ファミリアは優しくエミリーに話し掛けます。
「ごめんなさいエミリー。もう私達に助かる方法はありません。魔法の使えない魔女など何の力も無いのです。」
エミリーは不思議そうに答えます。
「なんで魔法が使えないの?早くしないと皆 死んじゃうよ?」
【もう一つの物語編②】
それは悲惨な光景でした。
城内の魔女達に逃げる場所などあるはずも無く、法廷騎士団に次々と叩き殺されて行きます。
魔女達のリーダーであるファミリアは最期の力を振り絞り魔法を詠唱する。
「世界に住まう精霊達よ、どうか私に力を与えて下さい。」
ファミリアの魔法
残された精霊の力を集め星の力を呼び寄せる究極魔法 。
―――――メテオーラ!
天空より舞い降りし隕石郡が法廷騎士団を襲う。
ドッガァアァァァァンッ!!
法廷騎士団の前衛が陣を構えた場所で爆発が起こり法廷騎士団の騎士達が数十人吹き飛ばされた。
しかし
精霊の力が圧倒的に不足していた。
(やはり大気に住まう精霊の力が枯渇している。)
仲間の魔女達も殆どが殺され、残るは数人の魔女しか残されていない。
その時、エミリーが呪文を詠唱し始めます。
「エミリー!?」
驚いてエミリーを見るファミリア。
「それはメテオーラの魔法! そんな魔法をどこで覚えたの!?」
「それに、精霊の力が枯渇しているこの空間では魔法は発動出来ないわ。」
エミリーはニコッと笑ってファミリアに答えます。
「力ならあるわマンマ。仲間の魔女や騎士団の兵士達の魂が空間の至る所に浮遊しているじゃない?」
ファミリアは驚愕します。
(死亡した人間の魂を魔力に転換すると言うの!?)
「そんな事は不可能……」
ファミリアがまだ話をしている途中でエミリーの魔法詠唱が完了します。
究極魔法
――――――メテオーラ!!
エミリーが詠唱を唱え終えると天が真っ赤に燃え盛り、たちまち巨大な隕石郡が物凄い勢いで法廷騎士団に降り注ぎました。
それは、信じられない光景だった。
その威力は最高の魔女と言われるファミリアの魔法すら凌駕していた。
精霊の力が枯渇していない状況でのファミリアの魔法すらも――――
法廷騎士団の大半がエミリーの魔法で吹き飛び、騎士団は恐れを成して一時退却をして行く。
2週間後……
大打撃を受けた法廷騎士団は新たな戦力を動員する。今までの騎士に加えて大勢の魔法使いが作戦に参加した。
この頃には精霊達が再びこの地に舞い戻っていました。
(これだけの精霊が居れば私もまだ戦える。)
ファミリアが決意を新たにしていた頃、法廷騎士団側にも動きがありました。
精霊の復活を待っていたのは騎士団も一緒だったのです。
世界中から集めた魔法使い達が一斉に魔法を詠唱する。
「倒せないなら他に方法がある! 」
―――――――空間断絶魔法!
「貴様らは二度とこの地に戻る事はあるまい!」
巨大な魔力が城を覆って行く。
(しまった!奴ら私達を城ごと異空間に閉じ込める気だわ!)
ファミリアが敵の作戦に気付いた頃には既に遅い。
法廷騎士団の作戦はとても簡単だった。
どうしても倒せ無いファミリアとエミリーとの戦闘を諦めて、異空間に閉じ込める。
どんなに凄い魔法使いでも閉じ込めてしまえば怖く無い。後は食糧が尽きて死ぬのを待つのみ。
この作戦は見事に的中した。
魔力の壁に閉じ込められた異空間には魔法に必要な精霊にも限りがある。
ファミリアとエミリーは魔女の城から出る事も出来ず1ヶ月が経過して行く。。
(もう……何も食べる物も無いわ。ごめんなさいエミリー。あなただけでも生き延びて欲しかった。)
エミリーを膝の上に寝かせつけたファミリアの翠色の瞳から大粒の涙がぽたぽたと溢れ落ちる。
その時
ファミリアの目の前がうっすらと光り輝き、綺麗な箱が現れました。
「なに……?」
驚くファミリア。
――――――パンドラの箱
いつの間にか、箱の後ろに立っている美しい男性がファミリアに優しく語り掛けます。
「君の願いを叶えて上げよう。」
「この箱は君のどんな願いも叶えてくれる。」
「しかし」
「その願いと同等の不幸が君に訪れる。」
「その願いにより君が幸せになればなるほど君は不幸になる。」
「さぁ願いを言ってごらん。」
何が起きているのか混乱するファミリア。
しかし、今のファミリアには選択の余地はありません。
このままでは、ファミリアもエミリーも死を待つばかり。
「どなたか存じませんが、私の願いは決まっています。食糧も無いこの状況ではもう一週間も生き延びる事は出来ないでしょう。」
「私の命ならいくらでも差し上げます。どうかこの娘、エミリーを助けて下さい。」
ファミリアの願いにその男性が微笑みを絶やさぬまま答える。
「良いでしょう。貴女の願いはその娘を生かす事で間違い無いですね?」
「あぁ……、ありがとうございます。」
「では、その娘エミリーに不老の力を授けましょう。どんなに時が経っても、食糧が尽き果ても、その娘が死ぬ事は有りません。」
その男の言葉にファミリアが慌てて聞き返す。
「不老の力ですって?ではエミリーはこれからどうなるのでしょう?」
男はファミリアに微笑みを絶やさぬまま返答する。
「そうですね。この食糧も無い。誰も居ない城の内部で永遠に生き続けるでしょう。今の若さを保ったままね。」
「そんな!この異空間から出して下さい!」
すると男は
「残念だがそれは出来ない。」
平然とそんな事を言う。
「貴女の命は先程の願いで使い果たしました。願いは一つだけです。」
願いは一つだけ――――
ファミリアの願いにより
エミリーは誰も居ない空間で永遠の時を過ごすと言う。
その美しい男は、それだけ言ってそっと姿を消し去った。
もうファミリアに残された時間はありません。
命が尽き欠けたファミリアの
最期の魔法―――――
どうか
この娘を
エミリーを
救いたまえ
こうして最高の魔女ファミリアはその生涯に幕を降ろす。
これは
パンドラの箱が紡ぎだす
もう一つの哀しい物語
パンドラの箱が紡ぎだす
もう一つの物語
【もう一つの物語編①】
太古の昔
神は人類に多くの知恵を授けました。
神から授かった言葉を信じ実践する事こそが、人類が発展し生き延びるための手段であり、他に選択肢はありません。
神は預言者に多くの知恵を授け契約を結びます。
その一つ
魔法使の女は
これを生かしておいてはならない
時は流れ17世紀のヨーロッパ。
ローマ教皇庁の主導によって異端審問が活発化し多くの魔女が摘発されて行きました。
飢饉、病気、不慮の事故、多くの厄災が魔女の仕業だとされローマ教皇庁のもと正義の騎士団が結成される。
その名も
―――法廷騎士団(ほうていきしだん)
魔女狩りに特化したその騎士団は、その圧倒的な武力を背景に魔女を拘束し裁判にかけて行きます。裁判にかけられた魔女への判決は死刑。例外は有りません。
「助けて下さい。私は何もしていません。」
「無実です!私が魔女なんて、とんだ濡れ衣です!」
「ええい黙れ!黙れ!人々を惑わす魔女め!死して償うが良い!」
多くの無実の市民が裁判に掛けられ死刑判決を受ける事となる。
それでは
本当に魔女は居なかったのか?
いいえ、そうでは有りません。
この時代、多くの魔女が一般の人々と一緒に暮していた。
魔女には不思議な力があり、炎を自在に操ったり、物を空中に浮かしたり、時には人々の病気を治したりする魔女もいた。
そんな得体の知れない魔女の能力を恐れたローマ教皇庁の魔女狩りは一層の激しさを増して行く。
「ファミリア様、このままでは魔女は全滅してしまいます。」
「もはや私達の言い分が通じる相手では有りません。」
「このまま隠れていても、いつかは見付かって殺されます。」
「団結しましょう!私達が一つになれば、ローマ教皇庁にだって対抗出来るはずです。」
ファミリアは魔女達の話にコクリと頷いて言う。
「分かりました。出来るだけ多くの魔女を集めて下さい。法廷騎士団と戦いましょう!」
ファミリア・エヴァリーナ
美しい金髪に翠色の瞳を持つファミリアは、当時の魔女達の中でもおそらく最高の魔法使い。
ファミリアは分散していた魔女仲間を集め城に立て籠もる。
絶壁に囲まれた魔女の城には容易に近づく事は出来ません。
城を攻めるには真正面から突撃するしか無いでしょう。
人数で勝る法廷騎士団と戦うには最善の策である。
こうして、魔女達と法廷騎士団との最初で最期の大規模な戦いが始まった。
「燃え盛れ!フィアンマ!」
「凍り付け!ブリザード!」
魔女達は迫りくる騎士団を得意の魔法で迎え撃ちます。しかし魔法と言っても無敵ではありません。
自然界に生息する精霊達の力を借りて超常現象を起こすのが魔法の基本。同じ場所で多くの魔法を使うには精霊の数に限界があります。
法廷騎士団側もその事は百も承知しており、騎士団に属する魔法使いが無闇矢鱈(むやみやたら)に魔法を発動させます。
大気中に生息する精霊の数は次第に減少し魔法を自由に発動する事が出来なくなって行く。
「今だ!一斉に突撃しろ!!」
法廷騎士団の威勢の良い号令が戦場に響き渡る。
城門は遂に突破され虐殺が始まった。
もはや裁判にかける必要も無いのでしょう。
「きゃあぁぁあぁぁ!!」
「ファミリア様、もう保ちません!」
仲間の魔女達が次々と殺されて行く。
精霊の力が枯渇した中では魔法は発動出来ないので、さすがの大魔法使いのファミリアも成す術がありません。
「あぁ、もうお終いのようです……、せめてこの娘…エミリーだけでも助かる方法があれば…。」
母親に似て金髪に翠色の綺麗な瞳を持つエミリー。15歳になったエミリーをファミリアは優しく抱き締めます。
「マンマ、何で泣いてるの?」
エミリーが粒らな瞳をファミリアに向けて言いました。
ファミリアは優しくエミリーに話し掛けます。
「ごめんなさいエミリー。もう私達に助かる方法はありません。魔法の使えない魔女など何の力も無いのです。」
エミリーは不思議そうに答えます。
「なんで魔法が使えないの?早くしないと皆 死んじゃうよ?」
【もう一つの物語編②】
それは悲惨な光景でした。
城内の魔女達に逃げる場所などあるはずも無く、法廷騎士団に次々と叩き殺されて行きます。
魔女達のリーダーであるファミリアは最期の力を振り絞り魔法を詠唱する。
「世界に住まう精霊達よ、どうか私に力を与えて下さい。」
ファミリアの魔法
残された精霊の力を集め星の力を呼び寄せる究極魔法 。
―――――メテオーラ!
天空より舞い降りし隕石郡が法廷騎士団を襲う。
ドッガァアァァァァンッ!!
法廷騎士団の前衛が陣を構えた場所で爆発が起こり法廷騎士団の騎士達が数十人吹き飛ばされた。
しかし
精霊の力が圧倒的に不足していた。
(やはり大気に住まう精霊の力が枯渇している。)
仲間の魔女達も殆どが殺され、残るは数人の魔女しか残されていない。
その時、エミリーが呪文を詠唱し始めます。
「エミリー!?」
驚いてエミリーを見るファミリア。
「それはメテオーラの魔法! そんな魔法をどこで覚えたの!?」
「それに、精霊の力が枯渇しているこの空間では魔法は発動出来ないわ。」
エミリーはニコッと笑ってファミリアに答えます。
「力ならあるわマンマ。仲間の魔女や騎士団の兵士達の魂が空間の至る所に浮遊しているじゃない?」
ファミリアは驚愕します。
(死亡した人間の魂を魔力に転換すると言うの!?)
「そんな事は不可能……」
ファミリアがまだ話をしている途中でエミリーの魔法詠唱が完了します。
究極魔法
――――――メテオーラ!!
エミリーが詠唱を唱え終えると天が真っ赤に燃え盛り、たちまち巨大な隕石郡が物凄い勢いで法廷騎士団に降り注ぎました。
それは、信じられない光景だった。
その威力は最高の魔女と言われるファミリアの魔法すら凌駕していた。
精霊の力が枯渇していない状況でのファミリアの魔法すらも――――
法廷騎士団の大半がエミリーの魔法で吹き飛び、騎士団は恐れを成して一時退却をして行く。
2週間後……
大打撃を受けた法廷騎士団は新たな戦力を動員する。今までの騎士に加えて大勢の魔法使いが作戦に参加した。
この頃には精霊達が再びこの地に舞い戻っていました。
(これだけの精霊が居れば私もまだ戦える。)
ファミリアが決意を新たにしていた頃、法廷騎士団側にも動きがありました。
精霊の復活を待っていたのは騎士団も一緒だったのです。
世界中から集めた魔法使い達が一斉に魔法を詠唱する。
「倒せないなら他に方法がある! 」
―――――――空間断絶魔法!
「貴様らは二度とこの地に戻る事はあるまい!」
巨大な魔力が城を覆って行く。
(しまった!奴ら私達を城ごと異空間に閉じ込める気だわ!)
ファミリアが敵の作戦に気付いた頃には既に遅い。
法廷騎士団の作戦はとても簡単だった。
どうしても倒せ無いファミリアとエミリーとの戦闘を諦めて、異空間に閉じ込める。
どんなに凄い魔法使いでも閉じ込めてしまえば怖く無い。後は食糧が尽きて死ぬのを待つのみ。
この作戦は見事に的中した。
魔力の壁に閉じ込められた異空間には魔法に必要な精霊にも限りがある。
ファミリアとエミリーは魔女の城から出る事も出来ず1ヶ月が経過して行く。。
(もう……何も食べる物も無いわ。ごめんなさいエミリー。あなただけでも生き延びて欲しかった。)
エミリーを膝の上に寝かせつけたファミリアの翠色の瞳から大粒の涙がぽたぽたと溢れ落ちる。
その時
ファミリアの目の前がうっすらと光り輝き、綺麗な箱が現れました。
「なに……?」
驚くファミリア。
――――――パンドラの箱
いつの間にか、箱の後ろに立っている美しい男性がファミリアに優しく語り掛けます。
「君の願いを叶えて上げよう。」
「この箱は君のどんな願いも叶えてくれる。」
「しかし」
「その願いと同等の不幸が君に訪れる。」
「その願いにより君が幸せになればなるほど君は不幸になる。」
「さぁ願いを言ってごらん。」
何が起きているのか混乱するファミリア。
しかし、今のファミリアには選択の余地はありません。
このままでは、ファミリアもエミリーも死を待つばかり。
「どなたか存じませんが、私の願いは決まっています。食糧も無いこの状況ではもう一週間も生き延びる事は出来ないでしょう。」
「私の命ならいくらでも差し上げます。どうかこの娘、エミリーを助けて下さい。」
ファミリアの願いにその男性が微笑みを絶やさぬまま答える。
「良いでしょう。貴女の願いはその娘を生かす事で間違い無いですね?」
「あぁ……、ありがとうございます。」
「では、その娘エミリーに不老の力を授けましょう。どんなに時が経っても、食糧が尽き果ても、その娘が死ぬ事は有りません。」
その男の言葉にファミリアが慌てて聞き返す。
「不老の力ですって?ではエミリーはこれからどうなるのでしょう?」
男はファミリアに微笑みを絶やさぬまま返答する。
「そうですね。この食糧も無い。誰も居ない城の内部で永遠に生き続けるでしょう。今の若さを保ったままね。」
「そんな!この異空間から出して下さい!」
すると男は
「残念だがそれは出来ない。」
平然とそんな事を言う。
「貴女の命は先程の願いで使い果たしました。願いは一つだけです。」
願いは一つだけ――――
ファミリアの願いにより
エミリーは誰も居ない空間で永遠の時を過ごすと言う。
その美しい男は、それだけ言ってそっと姿を消し去った。
もうファミリアに残された時間はありません。
命が尽き欠けたファミリアの
最期の魔法―――――
どうか
この娘を
エミリーを
救いたまえ
こうして最高の魔女ファミリアはその生涯に幕を降ろす。
これは
パンドラの箱が紡ぎだす
もう一つの哀しい物語