異世界戦記 GOD AND DEVIL19

【ラファール編①】

ラファール帝国の本拠地、旧パラアテネ城が崩壊した。

サラ・イースターの攻撃魔法の威力は大陸の魔導師の中でもトップクラス。

巨大な城を崩壊させる程の威力。

しかし――

その美しい女性戦士アナフィスは、涼し気な顔でサラとマリーを見る。

聖なる盾―――

白く輝く盾を手にしたアナフィスはサラの魔法を防ぎきった。

「バカな……、俺の最大限の魔法を…」

もうサラには残された魔力は無い。
全てを出し切ったサラは呆然とアナフィスを見る。

「アナフィス…」

アナフィスに声を掛けたのはサラでもマリーでもなく、先程まで戦っていたヘンリーでも無い。

もう一人の双子の神(ゴッドツインズ)であるメタトロン。

「あら、メタトロン。どうしたのですか?」

アナフィスは何事も無かったようにメタトロンに返事をする。

「どうしたも何も本拠地が台無しだ。お前が居ながら、とんだ失態だな。」

「そう?ラファールは特に気にして無さそうだけれど。」


2人の後ろの瓦礫の山から光り輝く人影が浮び上がる。

真の創造主

ラファール帝国の国家元首

天界を治める四大天使の一人

ラファール

天界での名前は


―――ラファエル



カイザーがマリーとサラに歩み寄る。

「マリー、君も来ていたのか!」

「カイザーさんこそ……、大変!酷い怪我!」

「私は大丈夫だ。それより…。」

カイザーはラファールと2人の敵を見る。
サラもカイザーに同意したように言う。

「ああ…、それどころじゃない。奴ら…、俺達の想像以上に強い。」

「アゼルさんも殺られた……。」

カイザー達が話をしている所にラファールが口を挟む。

「始めまして。私が真の創造主ラファール。君達はよくやった。ここまで辿り付けただけでも敬意に値する。

―――人間にしては、よくやった。」


サラは思う。

やはり奴ら、人間じゃない。
異世界の…、おそらく天界から来た天使。

人間は天使に勝てないのか―――



「まだ、方法は有ります。」

マリーがそっと呟く。

サラとカイザー、ヘンリーがマリーを見る。

人間では勝てなくても…

――――――――悪魔なら


マリーの手に持つ悪魔禁書か光り輝く。



【ラファール編②】

「ガウス!」

マリーが叫ぶと黒色の異様な姿の生物が姿を現した。
黒い光沢の皮膚を持つ悪魔。

今まで何度もマリーの危機を救って来た悪魔が3人の天使に立ち向かう。


ガウスはひとっ飛びで天使達の元へジャンプし鋭い爪で攻撃を仕掛ける。

「む!?」

「悪魔!?」

メタトロンとアナフィスは少し驚いて迎撃態勢を取る。
しかしラファールは2人を手で制止して前に出た。

「私が殺る。」

ラファールはすっと手を上げてガウスに向けた。

「遅い!」

ラファールが攻撃するよりも早くガウスの鋭い爪がラファールの手を突き刺した。

天使と悪魔の手が交錯し眩しい光が2人を包む。

「低級悪魔よ。昇天するが良い。」

ラファールがそう呟くとガウスの身体が光と共に消滅し始める。

「ガウス!」

叫ぶマリー。

「マリー、ダメだ!ガウスでは勝てない!逃げるぞ!」

サラがマリーの肩を掴む。

「だってイース!ガウスが!」

「このままでは全滅だ!ハルファスを召喚して逃げるんだ!」

涙ぐむマリー。

「急げっ!マリー!!」

マリーは悪魔禁書に手を当てハルファスの名を呟く。

巨大な黒鳥が現れるとサラはマリーの手を引いてハルファスに乗り込む。
カイザーとヘンリーもそれに続く。

「ごめんねガウス!」

マリーの泣き叫ぶ声がガウスの耳に届いた。

「マスターマリー、どうか生き延びて…」

最後まで言葉を発する事なくガウスは消滅した。


【ラファール編③】

マリー達4人の戦士を乗せた黒鳥ハルファスが大空を羽ばたいて行く。

「ラファール、どうするんだ?逃げられるぞ。」とメタトロン。

「なに、逃しはしないさ。」

ラファールは天界の弓を召喚させてハルファスに向ける。

裁きの剣、聖なる盾と同じく天界でもトップクラスの武器である「大天使の弓」。

ラファールが弓の弦を引くと黄金に輝く矢が物凄い勢いで天空を切り裂き、吸い込まれるようにハルファスに飛んで行く。

どんなに離れて居ても狙った獲物を確実に捉えると言う大天使の矢が黒鳥ハルファスを撃ち抜いた!

ギャオォオォーンッ!

雄叫びを上げて苦しむハルファス。

4人を乗せた黒鳥ハルファスは近くの小高い丘の上に落下する。




―――――――――――――――

「ゼクシード、大丈夫ですか?」

シャルロットは意識の戻ったゼクシードに声を掛ける。

「……シャルロット。どうやら助けられたらしいな。」

ゼクシードは辺りを見回して言う。

「ヴィナス・マリアは…」

「……」

無言で首を振るシャルロット。

「そうか…。」

ゼクシードは治癒魔法で傷を回復させながらシャルロットに言う。

「俺達以外に生きている者は……、サラとマリーはどうなったかな?」

シャルロットは空を見上げる。

「あれは……ハルファス!?」

2人が逃げて来た小高い丘の上に黒鳥ハルファスが飛び込んで来た。


「ハルファス!大丈夫!?」とマリー。

ゼクシードを見つけたサラが直ぐに駆け寄って来る。

「ゼクシード!良い所に居た!早くハルファスの治療を!」

「マリー、生きていたのね。」とシャルロット。

「それにヘンリーも!」

シャルロットの喜ぶ顔を見て妙に照れているヘンリー。


サラ・イースター
ゼクシード・フォース
マリー・ステイシア
シャルロット・ガードナー
ヘンリー・ライオネル
カイザー・ヴァルフェルム

6人は少し言葉を交した後に本題に入る。

―――――天使との戦闘

ゴッドタウンに広がる化物の事は後回しにして、今は3人の天使の対策を練らねばならない。

ラファール
メタトロン
アナフィス

あの3人をどうやって倒すのか。

6人は重苦しい雰囲気に黙りこんだ。

実際に天使と戦ったサラやカイザーの話を聞くと勝算は限りなく少ないように感じられた。

「一つだけ…」

サラ・イースターが口を開く。

「天使を倒す方法がある…。」

他の5人がサラに注目する。

サラは5人に最後の手段を説明する。

「なるほど…」

「その方法なら、もしくは…」

「危険だが、やる価値は有りそうだな。」

「他に方法が思い付きません。」

「問題は…」

「奴らが大人しく俺達を放って置くかどうかだな。」

「……それなら、もう遅いです。」

5人が丘の向こうから飛んで来る3人の天使を見る。

羽を広げてゆっくりと空を飛んで近づく天使達。

「なんだよ、奴ら飛べるのかよ。」

「どうやら、もう天使だと隠すつもりも無いらしい。」

「それでは作戦開始と行くか。」

「マリー、サラ、後は任せた。」

「天使の方は私達が引き受けます。」

シャルロットがマリーとサラに言う。

マリーは鏡の魔法を詠唱する。

「ミラーワールド!」

すると人が通れるくらいの光の鏡が現れる。鏡に入るのはマリーとサラ。
大陸の運命は2人の魔導師に託された。

天使を迎え撃つのは残りの4人。
ゼクシードが、シャルロットが、カイザーが、ヘンリーが3人の天使と相対する。

マリーとサラが戻るまで光の鏡を守りきる事が出来れば天使を倒す事が出来るかもしれない。

人間対天使の命を掛けた最後の戦いが始まる。