異世界戦記 Holy children2
【ロザリオ王国侵攻編①】
時は少し遡る…
ここは、遥か南の大陸にある国
光の国【ルミエル】
神殿前の広場には1万人を越える民衆が集まっていた。
真の創造主を名乗る国家元首ラファールは聴衆の前で大きく両手を広げた。
「神聖なる国民に告ぐ。我々は豊かな生活と平和を手に入れた。敵国からの侵略の心配も無く安全と高度な医療により国民の寿命は100年前とは比べ物にならない!」
「しかし!」
「安全と引き換えに急増した人口を支える領土も資源も食料さえも、深刻な不足の状態に陥った。」
「そんな時に神は我々に新大陸を発見させた。実に10年も前の事である。我々は新大陸に資源と食料を求め七度に渡り使いの船を向かわせた。」
1万人を越えるルミエル国民はラファールの言葉に聴き入っている。
広場の前方、ラファールが演説をする少し離れた場所に一風変わった2人組が居た。
「聞いたかゼオン。俺達の兄妹が誕生したらしいぞ。」
声の主は黒髪に鋭い目付きをした男タオ・シュンイエ。年齢は26歳。
タオの隣に居るのはゼオン、まだ10代後半の背の低い少年である。
「タオ兄さん、聞いたよ。メイリン以来しばらく誕生していなかったから驚いたよ。」
「7人目のホーリーチルドレンか…。どんな能力だろうな。」
「さあね。そんな事よりほら、そろそろ演説も終わる頃だよ。きちんと聞かないとラファール様に怒られるよ。」
ゼオンは兄と呼んだタオをたしなめる。
彼等は本当の兄弟では無い。国中に大勢いる子供達の中からラファールに認められた子供だけが神の神殿に連れて行かれる。
神の神殿に足を踏み入れた子供達は神聖なる神の加護を得る為に祈りの日々を送る。その中で神の加護を得られた子供のみが神の神殿から出る事が許されるのだ。
何千人にも及ぶ子供達が神の神殿に足を踏み入れたが、今までに神の加護を得られた子供は7人。
彼等は神の力(異能力)を身に付け、国民からは神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)と呼ばれている。
創造主ラファールの演説に力がこもる。
「我は決断した!話の通じない新大陸の野蛮な原住民を排除し新大陸に我々の国を創る事を!」
観衆の大歓声は最高潮に達する。
「野蛮人に殺された親愛なるメイリンの為にも我々は新大陸の野蛮な原住民に宣戦布告をする!!」
「全国民に神の祝福を!神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)が新大陸の野蛮人を打ち倒し、我々に勝利をもたらす事を祈ろうではないか!」
演説を聞いていたゼオンは呟く。
「やっぱり戦うのは僕らなんだね。出来れば新大陸なんか行きたくないなぁ…。」
ゼオンの呟きを聞いたタオは心の中で突っ込みを入れる。
(てめえの能力が一番怖いっつーの。)
____________
半年後、アルゼリア暦3357年09月21日
ロザリオ王国に侵攻したルミエル軍の指揮を取るのは神聖なる子供達の1人ラオ・シュンイエ。
ラオはもう一人の子供達の1人ゼオンの突撃を唖然として見守っていた。
ゼオンの能力は「物体操作」メイリンの「人体操作」と違い人間を操る事は出来ないが生物以外の物体なら何でも操れる能力。
ゼオンは突撃と共にロザリオ王国の兵士が持つ大剣を取り上げた。ゼオンの能力により空中に浮いた大剣がくるりと向きを変え、持ち主である騎士に襲い掛かる。
「ギャー!」
「ぐわぁ!」
戦場の至るところでロザリオ王国の騎士の悲鳴が聞こえて来る。
「騎士は下がれ!魔導師団に任せろ!」
ロザリオ王国の魔導師達が一斉に攻撃魔法を放つ。ゼオンは片手を上げて魔法を操ろうと試みる。しかし攻撃魔法はそのままゼオンに飛んで来た。
「あぶない!魔法は操れ無いっ…と!」
ゼオンはそう言うと自分の周りにある地面に手をかざす。すると大量の土が滝のように持ち上がり飛んで来た攻撃魔法を粉砕した。
「今度は僕の番だよ!」
そして今度は、先ほど騎士を倒した空に浮いている大剣を魔導師目掛けて解き放つ。
「うお!ちょっと待ったっ!」
魔法攻撃を続けていた魔導師達は仲間の騎士が持っていた大剣に次々と穿かれて行く。
【ロザリオ王国侵攻編②】
戦況を見ていたタオは「やれやれ」と呟いて部下の兵士達に命令する。
「ゼオンに遅れを取るな!射撃隊は城内へ突入!狙うは敵の王の首だ!」
タオの命令にルミエル軍の兵士達 数百名が城内に雪崩れこんだ。
兵士達の武器はマスケット銃。
ダダーンッ!
ダダーンッ!
城内で待ち受ける騎士と魔導師達を容赦なく撃ち殺して行く。
城の最上部にはロザリオ王国騎士団のジェガンがルミエル兵を待ち構えていた。
隻腕のジェガンは巨漢の厳つい男で武器は巨大なアックス。
「世界大戦とエルザ王国との戦争で兵力が半減していると言うのに、何なんだお前達は!」
ジェガンが怒りにアックスを握りしめる。
射撃隊と共に城内へ侵入したタオはジェガンに向けて言う。
「貴様等の事情など知らない。俺達ルミエルはこの大陸を支配する為に来たのだ。悪いが野蛮な原住民には死んで貰う。」
そしてタオは部下達に命令する。
「射撃隊構え!撃て!」
ダダーンッ!
ダダーンッ!
マスケット銃から鉛の弾丸が一斉に放たれる。
しかしジェガンはその巨漢からは想像も出来ない速さで射撃隊の一団との距離を一気に縮めた。
何発かの銃弾はジェガンに命中したのだがジェガンはものともせずアックスを振り回す。
「ぐわぁあぁ!」
「ぎゃあぁぁ!」
接近を許した射撃隊がアックスの餌食となり首を身体を切断されて行く。
「銃弾が効かないのか…、これだから野蛮人には嫌になる。」
タオはそう言うと部下達の前に躍り出てジェガンの前に立つ。
「俺が相手になろう。神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)の1人タオ・シュンイエだ。」
ジェガンはタオを睨み言い放つ。
「ロザリオ王国騎士団ジェガンだ。お前が大将か…。もはやこの戦はロザリオ王国の負けだが、せめてお前の首は獲らせて貰うぞ!」
ジェガンは巨大なアックスをタオの頭上に振り下ろす。何も武器を持っていないタオは右手をかざしジェガンのアックスから身を守ろうとした。
「素手で俺のアックスを防げるか!!」
怒声を上げるジェガン。
アックスがタオの右手を切断するかと思われたその時、ガキィーン!と鈍い金属音が鳴り響いた。
「なに!!」驚くジェガン。
ジェガンの巨大なアックスは、それ以上に巨大なアックスにより防御される。
タオは武器など持っていなかったはずとジェガンは目を丸くする。
「何だお前は!」
思わず声を洩らしたジェガンが見たのは、タオの右手から生える巨大なアックス。
タオは右手のアックスを構えジェガンに言う。
「俺の能力は「人体変形」。自身の体を自由に造り変える能力!」
「バカな!」
驚くジェガンに向けてタオは右手のアックスを振り下ろす。
慌ててアックスで防御をするジェガン。
すると今度はタオの左手が鋭いランスに変形する。
「防御が がら空きだよジェガン!」
「しまった!」
タオの左手のランスがジェガンの腹部をグサリと音を立てて突き抜けた。
「ぐわっ!」
「残念だったな。」
そう言ってタオは留めの一撃のアックスをジェガンの脳天に振り下ろした。
(ふん、手応えの無い。新大陸の兵士とはこんなものか…。)
ロザリオ王国へ侵攻したルミエル軍の強さは圧倒的であった。
神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)の2人、タオとゼオンが率いるルミエル軍は、わずか半日も掛からずにロザリオ王国を制圧した。
【ロザリオ王国侵攻編①】
時は少し遡る…
ここは、遥か南の大陸にある国
光の国【ルミエル】
神殿前の広場には1万人を越える民衆が集まっていた。
真の創造主を名乗る国家元首ラファールは聴衆の前で大きく両手を広げた。
「神聖なる国民に告ぐ。我々は豊かな生活と平和を手に入れた。敵国からの侵略の心配も無く安全と高度な医療により国民の寿命は100年前とは比べ物にならない!」
「しかし!」
「安全と引き換えに急増した人口を支える領土も資源も食料さえも、深刻な不足の状態に陥った。」
「そんな時に神は我々に新大陸を発見させた。実に10年も前の事である。我々は新大陸に資源と食料を求め七度に渡り使いの船を向かわせた。」
1万人を越えるルミエル国民はラファールの言葉に聴き入っている。
広場の前方、ラファールが演説をする少し離れた場所に一風変わった2人組が居た。
「聞いたかゼオン。俺達の兄妹が誕生したらしいぞ。」
声の主は黒髪に鋭い目付きをした男タオ・シュンイエ。年齢は26歳。
タオの隣に居るのはゼオン、まだ10代後半の背の低い少年である。
「タオ兄さん、聞いたよ。メイリン以来しばらく誕生していなかったから驚いたよ。」
「7人目のホーリーチルドレンか…。どんな能力だろうな。」
「さあね。そんな事よりほら、そろそろ演説も終わる頃だよ。きちんと聞かないとラファール様に怒られるよ。」
ゼオンは兄と呼んだタオをたしなめる。
彼等は本当の兄弟では無い。国中に大勢いる子供達の中からラファールに認められた子供だけが神の神殿に連れて行かれる。
神の神殿に足を踏み入れた子供達は神聖なる神の加護を得る為に祈りの日々を送る。その中で神の加護を得られた子供のみが神の神殿から出る事が許されるのだ。
何千人にも及ぶ子供達が神の神殿に足を踏み入れたが、今までに神の加護を得られた子供は7人。
彼等は神の力(異能力)を身に付け、国民からは神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)と呼ばれている。
創造主ラファールの演説に力がこもる。
「我は決断した!話の通じない新大陸の野蛮な原住民を排除し新大陸に我々の国を創る事を!」
観衆の大歓声は最高潮に達する。
「野蛮人に殺された親愛なるメイリンの為にも我々は新大陸の野蛮な原住民に宣戦布告をする!!」
「全国民に神の祝福を!神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)が新大陸の野蛮人を打ち倒し、我々に勝利をもたらす事を祈ろうではないか!」
演説を聞いていたゼオンは呟く。
「やっぱり戦うのは僕らなんだね。出来れば新大陸なんか行きたくないなぁ…。」
ゼオンの呟きを聞いたタオは心の中で突っ込みを入れる。
(てめえの能力が一番怖いっつーの。)
____________
半年後、アルゼリア暦3357年09月21日
ロザリオ王国に侵攻したルミエル軍の指揮を取るのは神聖なる子供達の1人ラオ・シュンイエ。
ラオはもう一人の子供達の1人ゼオンの突撃を唖然として見守っていた。
ゼオンの能力は「物体操作」メイリンの「人体操作」と違い人間を操る事は出来ないが生物以外の物体なら何でも操れる能力。
ゼオンは突撃と共にロザリオ王国の兵士が持つ大剣を取り上げた。ゼオンの能力により空中に浮いた大剣がくるりと向きを変え、持ち主である騎士に襲い掛かる。
「ギャー!」
「ぐわぁ!」
戦場の至るところでロザリオ王国の騎士の悲鳴が聞こえて来る。
「騎士は下がれ!魔導師団に任せろ!」
ロザリオ王国の魔導師達が一斉に攻撃魔法を放つ。ゼオンは片手を上げて魔法を操ろうと試みる。しかし攻撃魔法はそのままゼオンに飛んで来た。
「あぶない!魔法は操れ無いっ…と!」
ゼオンはそう言うと自分の周りにある地面に手をかざす。すると大量の土が滝のように持ち上がり飛んで来た攻撃魔法を粉砕した。
「今度は僕の番だよ!」
そして今度は、先ほど騎士を倒した空に浮いている大剣を魔導師目掛けて解き放つ。
「うお!ちょっと待ったっ!」
魔法攻撃を続けていた魔導師達は仲間の騎士が持っていた大剣に次々と穿かれて行く。
【ロザリオ王国侵攻編②】
戦況を見ていたタオは「やれやれ」と呟いて部下の兵士達に命令する。
「ゼオンに遅れを取るな!射撃隊は城内へ突入!狙うは敵の王の首だ!」
タオの命令にルミエル軍の兵士達 数百名が城内に雪崩れこんだ。
兵士達の武器はマスケット銃。
ダダーンッ!
ダダーンッ!
城内で待ち受ける騎士と魔導師達を容赦なく撃ち殺して行く。
城の最上部にはロザリオ王国騎士団のジェガンがルミエル兵を待ち構えていた。
隻腕のジェガンは巨漢の厳つい男で武器は巨大なアックス。
「世界大戦とエルザ王国との戦争で兵力が半減していると言うのに、何なんだお前達は!」
ジェガンが怒りにアックスを握りしめる。
射撃隊と共に城内へ侵入したタオはジェガンに向けて言う。
「貴様等の事情など知らない。俺達ルミエルはこの大陸を支配する為に来たのだ。悪いが野蛮な原住民には死んで貰う。」
そしてタオは部下達に命令する。
「射撃隊構え!撃て!」
ダダーンッ!
ダダーンッ!
マスケット銃から鉛の弾丸が一斉に放たれる。
しかしジェガンはその巨漢からは想像も出来ない速さで射撃隊の一団との距離を一気に縮めた。
何発かの銃弾はジェガンに命中したのだがジェガンはものともせずアックスを振り回す。
「ぐわぁあぁ!」
「ぎゃあぁぁ!」
接近を許した射撃隊がアックスの餌食となり首を身体を切断されて行く。
「銃弾が効かないのか…、これだから野蛮人には嫌になる。」
タオはそう言うと部下達の前に躍り出てジェガンの前に立つ。
「俺が相手になろう。神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)の1人タオ・シュンイエだ。」
ジェガンはタオを睨み言い放つ。
「ロザリオ王国騎士団ジェガンだ。お前が大将か…。もはやこの戦はロザリオ王国の負けだが、せめてお前の首は獲らせて貰うぞ!」
ジェガンは巨大なアックスをタオの頭上に振り下ろす。何も武器を持っていないタオは右手をかざしジェガンのアックスから身を守ろうとした。
「素手で俺のアックスを防げるか!!」
怒声を上げるジェガン。
アックスがタオの右手を切断するかと思われたその時、ガキィーン!と鈍い金属音が鳴り響いた。
「なに!!」驚くジェガン。
ジェガンの巨大なアックスは、それ以上に巨大なアックスにより防御される。
タオは武器など持っていなかったはずとジェガンは目を丸くする。
「何だお前は!」
思わず声を洩らしたジェガンが見たのは、タオの右手から生える巨大なアックス。
タオは右手のアックスを構えジェガンに言う。
「俺の能力は「人体変形」。自身の体を自由に造り変える能力!」
「バカな!」
驚くジェガンに向けてタオは右手のアックスを振り下ろす。
慌ててアックスで防御をするジェガン。
すると今度はタオの左手が鋭いランスに変形する。
「防御が がら空きだよジェガン!」
「しまった!」
タオの左手のランスがジェガンの腹部をグサリと音を立てて突き抜けた。
「ぐわっ!」
「残念だったな。」
そう言ってタオは留めの一撃のアックスをジェガンの脳天に振り下ろした。
(ふん、手応えの無い。新大陸の兵士とはこんなものか…。)
ロザリオ王国へ侵攻したルミエル軍の強さは圧倒的であった。
神聖なる子供達(ホーリーチルドレン)の2人、タオとゼオンが率いるルミエル軍は、わずか半日も掛からずにロザリオ王国を制圧した。