最近は「エスカレーターは歩かずに乗る」のが新常識になりつつあるが、まだ急ぐ人のために片側に寄ってレーンを空ける場合が多い。そして何故か大阪だけは皆がエスカレーターの右側に寄って左側を空ける。20年ほど前だが大阪出張でこれを不思議に思った私は大阪勤務者に訊いたことがあった。

「大阪では、なぜ皆さん右側に寄るんですか?」
大阪人「逆になぜ左側に寄らんといかんの?」
「そりゃ、ほら遅いクルマは左側に寄るじゃないですか」
大阪人「東京の人は皆そう言いはりますが、“クルマは左側通行”でも、“人は右側通行”やないですか?」
「あ・・・そうか、なるほど。“人は右側通行”でしたね」

この時は見事に私が論破されてしまって、それ以来、右側に寄る大阪流のお作法の方が正しいと私は思っていた。しかし実は「人は右側通行、クルマは左側通行」というのは勘違いだということが最近になって分かった。日本は“クルマは左側通行”だが、けっして“人は右側通行”ではないのだ。

確かに「道路交通法」に歩行者等は、歩道等と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない」という条文はあるが、読めば分かるように、これは歩道等(歩道や路側帯など)と車道の区別のない道路に限っての特殊なケースに過ぎないのである。

【↓左の写真は歩道等と車道の区別のない道路】

    【右の写真は両側に歩道等(路側帯)がある道路↑】

それ以外の道路においては「歩行者は歩道等を通行しなければならない」と定めているだけで、右側通行とも左側通行とも定めていない。要するに、歩道も路側帯もない道の左側の端を人が歩くと背後から車が来て危ないから、右側の端に寄って歩くように法律で定めたのだろう。

法律の目的は社会の秩序が乱れるような問題を未然に防ぐことであって、人間がどう行動すべきかを規定することではない。だから歩行者が歩道等を通行し、車両がそこに侵入しない限り「歩行者と車両の事故」は防げるから、法律的には歩行者は右側通行でも左側通行でも構わないのだろう。

 【片側だけに歩道等(写真は路側帯)がある道路も多い】

歩行者は歩道等を通行する必要があるため、上の写真のように道路の片側だけに歩道等がある場合は、行きと帰りでは道の左右反対側を通行することになる。また両側に歩道等がある道路でも歩行者は道路の右左どちらの歩道等を通行しても良く、必ずしも道路の右側を通行する必要などない。

翻ってエスカレーターで大阪だけが右に寄るのは、1970年の万博(EXPO'70)開催に先立ち海外から多数の来街者が来ると想定して調査をした結果、欧米をはじめ諸外国では、車は右側通行の左ハンドルが主流であり、多くの外国人も右側に寄ると判ったので「大阪では右側に寄る」と決めたらしい

では日本がなぜ少数派の左側通行にしたのか調べたら、当時の最先進国だった英国に倣ったようだ。だから英国や英国所縁のインドや豪州では今も左側通行だ。そして当時の車両とは自動車ではなく馬車であり、御者の多くは右利きなので鞭が通行人に当たらぬよう右側に座り左側通行にしたそうだ。

そう考えると英国流の左側通行(右ハンドル)に理があるように思えるのだが、逆になぜ英国以外の欧州各国や米国など大多数の国が右側通行(左ハンドル)なのかが不思議ではないか。その答えははっきりしないのだが、どうやら「(当時の超大国であった)英国への反発」ではないかとも言われている

なんだよ、結局、マジョリティ(多数派)となった国々の方が理に叶ってないじゃないか。“郷に入っては郷に従え”だから、我々が米国で車を運転する時に右側通行をするように、EXPO'70でも外国人に「日本は左側通行だからエスカレーターでも左に寄って」と言えば良かったんじゃないの?

Saigottimo