仕事で多忙な現役時代は「リタイアしたら趣味など好きな事を始めるぞ!」と思っていたのに、実際に退職したら何もする気にならず虚しい日々を送る。これは“退職あるある”だ。本来、退職して時間的にも経済的にも精神的にも余裕が出来れば何でも出来るはずだが、実に不思議な事ではないか。

私自身も「老後はデッサンでも習って絵画を始めよう」等と思っていたが老境の今も全く習う気はない。でも現役時代に始めた歌や朗読は今も続けている。てことは「本当にやりたい事」は多忙でも始めるのであって、現役時代に始めていないことは結局、余裕が出来てもやらないのかも知れない

ただ伊能忠敬のような例外もある。彼は婿入りした伊能家を再興し地元の名主となって天明の大飢饉で多くの人々を救い、長男に家督を譲って50歳で隠居(リタイア)した。隠居後は江戸で暦学や天文学を学び56歳から亡くなる73歳まで17年間日本中を歩いて測量し極めて正確な日本地図を作った

   【伊能忠敬肖像 from 伊能忠敬記念館

彼の場合、現役時代から測量をしていた訳ではない。逆境育ちで苦労しながら家業に励み、地元の人達にも尽くした。当時は毎週末(土日)が休みではないので、興味があった暦学や天文学の勉強を始めたのは長男が成人し隠居願いを提出してからだ(願い出てから5年後にようやく受理され隠居できた)。


   【アントニオ猪木氏 from 東京新聞訃報

故・アントニオ猪木氏は人前でいつも「元気ですかー?」と大声で問うた後に「元気があれば何でも出来る!」と言っていた。そして、かのジョン・F・ケネディが“尊敬する日本人”として紹介した上杉鷹山にも「為せば成る。為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」という名言がある。

    【上杉鷹山肖像画 from 江戸ガイド

まさにその通りで「人は何かに元気に取り組めば何でも出来る」し「出来なかった」という場合も多くは自分が「やらなかった」のだ。それは私も含めて多くの人は理解している。しかし、問題は「自分が何かを元気に取り組む気にならない場合」にどうすればよいのかが分からないのだ。

恐らく、人間は「❶やらなきゃならない事」か「❷本当にやりたい事」しかやらないし、やれないのだろう。だとしたらリタイアして余裕が出来れば❶は無くなるので、❷がない場合は何もやらない虚しい日々を送る事になってしまう。これが冒頭に書いた“退職あるある”の正体ではないだろうか。

新たに❷を見つける事はそれほど難しい。多くの人が退職後すぐに仕事に就こうとするのは、仕事という❶を作ってしまう方が、新たに❷を見つけるよりラクだからではないか?仕事はストレスも伴うが他人から感謝されたり期待に応えられれば自己効力感や達成感も充実感もそこそこ得られるし。

「いや、そうではなくて、今やっている仕事が自分にとっては❷なのだ」と当事者は主張するかも知れない。もし本当にそうなら理想的だが少なくとも私は違った。リタイアしたら現役時代に勤しんだITや広報や経営企画や人事や障害者雇用に殆ど興味が持てず、❷ではなかったと思い知ったからだ。

なのでリタイアして4年目になる私は今のところ仕事は何もしていない。とはいえ常に❷をやっているわけでもなく、何もやらずにボーっと過ごすのも得難い時間として楽しもうとしている。そしてなによりそんな自分の現況をこうしてブログに書くこと自体が実は❷なのだろうとも思っている。

Saigottimo