ロシア侵攻のニュースから歴史的背景を調べていたら、不謹慎なことに“アネクドート”と呼ばれる旧ソ連時代のジョークにハマってしまった。一例を挙げると…酔っ払いと秘密警察のやりとり「ソ連の指導者はアホだ!」「お前を逮捕する!」「何の罪だ?不敬罪か?」「いや、国家機密漏洩罪だ」…といった具合である。

 

【上記のサイトから】

 

マスメディアの報道だけでは発生事象や公的見解等は分かるが、その国で生活している人々が何を考えどう感じているのかが分からない。その点、こうした話はデフォルメされた与太話だが肌感覚が得られる。また、我々はどうしても自国の価値観に陥りがちだが、人種や国民性をネタにしたジョークを読むとハッとさせられる。

 

例えば、客船の乗客を海に飛び込ませ(救命ボートに誘導す)る際、米国人には「今飛び込むとヒーローです」ドボン!イタリア人には「今飛び込むと女にモテます」ドボン!ドイツ人には「飛び込む規則です」ドボン!日本人には「皆さん飛び込みましたよ」ドボン!フランス人には「飛び込まないで下さい」ドボン!等々…。

 

 

国内でも、東北人は忍耐強い、東京人はカッコつけしい、関西人は饒舌、九州人は朴訥など、出身地によって人種のステレオタイプがあるが、ミュージシャンも楽器によって人種が違うという。トランペッターは目立ちたがり屋、ピアニストは自己チュー、ベーシストは寡黙でタカビー、トロンボー二ストは他人を褒める、等々…。

 

話してくれた人は私がヴォーカリストだからか、ヴォーカリストはどういう人種かは言わなかったが、私自身ある程度は自覚しているつもりだ。一言で云えば「図々しい奴」に違いない。何故なら楽器奏者は難易度は様々だが少なくとも楽器を操って音階を奏でられるレベルの修練を積んでようやくステージに上がれるのである。

 

なのにヴォーカリストだけは、(健常者なら)誰でも出せる声を出すだけでステージに上がり、譜面を渡して「こういう風に歌うのでよろしく」と、リズムもテンポも自分に合わせるよう、エラそうに「指示」して様々な楽器プレーヤーに「自分の伴奏をさせる」のである。これを図々しいと言わずして何を図々しいと言おうか。

 

管楽器のようなフロントプレイヤーだってヴォーカリストが入ってきたら「これ、どんな感じ(リズムやテンポ)で演るんすか?」とヴォーカリストの指示に従うが、ヴォーカリストが「これ、どんな感じで歌えばいいすか?」なんて誰かに聞く事はあり得ない。「私が歌い易いように伴奏してくれたまえ」と言わんばかりの傲慢さだ。

 

まあクラシックの声楽家のように身体全体を楽器として共鳴させ、反響板だけでオペラハウスの隅まで声を届かせるには相応な鍛錬が必要だが、マイクもアンプもあるからそんな鍛錬自体不要。結局、ヴォーカリストは上手く歌う「自信」があるか、さもなくば「度胸」があるかの二択で、どちらにしろ「図々しい奴」であろう。

 

私は自分が図々しいと自覚の上20年以上歌い続けてきた。だから若い女性ヴォーカリストが「私、上手くないしィ、アガり症なんですゥ」等と言ってると「オメーは自分が図々しい奴だと自覚しろっ!」と言いたくなるが、結局ニコニコして「いいんじゃない?」と言ってしまう。あーあ、図々しい上に助平で馬鹿!こりゃあ笑えないわ。

 

Saigottimo