私はジャズスポットで歌う事が多いが自らをジャズ・ヴォーカリストではなくスタンダード・ヴォーカリストと称しているのは「ジャズ好き」な訳ではなく「ジャズ好き」だからだ。だが、ミュージシャンとの雑談で「どんなヴォーカリストが好き?」と聞かれ「ピアフとプレスリーかな?」などと答えると、そこで会話が終わってしまう

 

 

いわゆる“ジャズ屋”さんの多くはジャズの巨人達を崇めているから、男性ヴォーカルならきっとシナトラとかサッチモとかナット・コールという答えを期待しているのだろう。従って、シャンソンのエディット・ピアフ等は論外で知らない可能性もあるし、プレスリーは知っててもジャズから遠すぎて話題が嚙み合わないのだ。

 

プレスリーが開祖とされるロックンロールは1950年代に白人のカントリーと黒人のR&Bが融合して生まれ、一方のジャズも1900年初頭に当時フランス領だったニューオリンズで白人教育を受けた仏系黒人(クレオール)らによって創られたとされている。素性が似ている両者が何故こんなに距離があるのか不思議だが。

 

そのプレスリーの曲の中でジャズスポットでも演奏されるのは「ラブミーテンダー」くらいだろう。でも、この曲は南北戦争時代のアメリカ民謡「オーラ・リー(Aura Lee)」なのだ。そして「Love Me Tender」とは、プレスリーの初主演映画のタイトルで、彼は劇中でもこの曲を歌って1956年に全米No.1の大ヒットにしている。

 

 

プレスリーはカントリー分野で人気が沸騰してメジャーレーベルのRCAに移籍後、マネージャーのトム・パーカー大佐(「大佐」は階級ではなく愛称)の戦略によって、ライブコンサートは一切やらず映画出演に専念し始めた頃だったから、この曲の大ヒットは彼にとってもRCAにとっても大佐にとっても大きな起爆剤となった。

 

上記の様な事情もあってか、プレスリーも作詞者としてクレジットされている原詞は歌詞専門サイトをご参照戴くとして、このプレスリー盤は、石原さとみ主演の2019年のNTVドラマ「高嶺の花」の主題歌にも採用された。まだ2年前のことだから、もしかしたらこのドラマを通して若い人達にも耳馴染みがあるかも知れない。

 

ただ私自身のイチオシはカナダの歌姫、リンダ・ロンシュタット盤だ。カントリー/フォーク系からロックンロールに舵を切った1978年のリンダのアルバム「Living in The U.S.A」の最後の曲として収録されており、ワディ・ワクテルがギター伴奏とバック・ヴォーカルを担当し、Duet風の静かなバラードに仕上がっている。

 

 

 

このリンダ盤をイメージしたDuetをNostal♪sicとして2019年秋の雑居祭りで披露したのだが、下記の音源はその前年のスタジオでのリハーサル。一般的にはプレスリーの歌というイメージがあるので女声は遠慮がちになるところを私が「前面に出て!」とお願いしたのでマッキーの存在感あるヴォーカルがイイ感じでしょ。

 

♪ラブミーテンダー Duet withマッキー(牧かおる)…2018年11月30日、都内スタジオでのリハ(pf:Joejii)♪

 

Saigottimo