ジャズのスタンダードは色恋をテーマとした歌が多く、また同じ曲を男性でも女性でも歌っている。厳密に曲の背景まで考えると「本来この曲は男性(女性)が歌う曲だ」といった事情はあるにせよ、歌詞のgirlとboyを、ladyとmanを読み替えることで、男性でも女性でも違和感なく歌えるようになっている。
このブログでも、マグダラのマリアがキリストを想って歌う「私はイエスが分からない」を男性の私が歌う際の苦心談は既に書いたが、例えば「春の如く(It Might As Well Be Spring)」という曲は、本来はミュージカル「ステートフェア」で女性が歌う曲だが歌詞のmanをgirlに置き換えれば男性でも歌える(私も歌っている)。
あのボサノヴァの名曲「イパネマの娘(The Girl From Ipanema)」はそのまま女性が歌う場合もあるがgirlをboyと読み換えて「イパネマの少年(The Boy From Ipanema)」として歌う場合もある。この場合は読み替えるとタイトルが変わってしまうので違う曲だと思っている人も居るが、実は同じ曲である。
そうは言っても「私の彼氏」という邦題の「The Man I Love」(1924)などは「さすがに男性は歌えないだろう」と思っていたら、SEABIRDのマスターが「たしかシナトラがManをGirlに変えて歌ってるよ」と言うのでyoutubeを探したら、シナトラ盤は見つからなかったがトニー・ベネットが「The Girl I Love」で歌っていた。
う~ん、そうか。どんなスタンダードでも背景を無視すれば男女どちらでも歌えるのかと思っていたが、どうしても男性が歌えない曲を見つけた。それはディズニー映画「白雪姫」(1937)の挿入歌「いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)」である。この曲はビル・エバンスやマイルス・デイビスの演奏で有名だ。
【公式サイトから】
本来は白雪姫が歌うのだから、当然バーブラ・ストライザンドのように女性が歌う分には問題ない。メロディが美しいので私は好きなのだが歌えない。背景を無視して男性の私が歌おうとした場合、読み替えをしても上手くいかないのだ。原詞は専門サイトをご参照戴くとしてナンチャッテ和訳をすると、こんな歌詞である。
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いつか私の王子様が来るの
いつかまたお会いしましょうね
永遠に幸せになるために
私は彼のお城に行くわ
いつか春が来るでしょう
新しい愛を見つけるでしょう
いつか私の夢がかなうとき
鳥は歌い結婚式の鐘は鳴るでしょう
(translated by Saigottimo)
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これで「王子様(prince)」を「お姫様(princess)」に読み替えても「いつか私のお姫様が迎えに来る」って、いくら男女同権とはいえ、やっぱりおかしいよね?とはいえ白雪姫になり切って歌うのもヘンだし、なんとかして歌う方法はないか…。こんな悩みはヴォーカリスト以外のミュージシャンは抱かないよなあ。
Saigottimo




