コロナ渦でも2021年は始まった。一昨晩(大晦日)、NHK紅白歌合戦を観ていたら紅組のあいみょんが、歌う前に「(司会者に「無観客ですが」と振られて)緊張感を持って歌いたいと思います」と言ったのが新鮮で印象に残った。よく「緊張しないように歌いたい…」などとは聞くが「緊張感を持って…」とは初めて聞いた。

 

ステージでパフォーマンスをすれば規模に関係なく緊張するもの。ましてや「NHK紅白歌合戦」といえば日本の歌手にとってはトップ・オブ・トップ、これ以上緊張する状況はない最高の舞台である。そんな中で「緊張しないように歌いたい」ではなく「緊張感を持って歌いたい」という彼女の心意気に、「おお、」と思ったのだ。

 

プロの歌手や役者などは常に多くの観客や聴衆を前に仕事をしているので慣れてしまって緊張などしないのではないかと思うが、必ずしもそうではないようだ。昔、日生劇場で毎年リサイタル(独演会)を開いていた越路吹雪は幕が上がる度に凄く緊張したそうだし、あの豪放なイメージの和田アキ子も緊張すると言っている。

 

【あいみょんのTweet】

 

ビジネスにしろ趣味にしろ「人前に立つと緊張してしまって思うように実力を発揮できない」というケースは多い。私は仕事のプレゼンテーション等で、この「緊張」について考察した結果、ある結論に達した。それは「『どうしたら緊張しないか』という問い自体(考えの方向性)が、そもそも間違っている」ということだ。

 

どういうことかと言えば「緊張(すること)」自体は必ずしも悪いことではない。むしろ緊張は集中力に繋がって良い結果を生むことさえある。問題なのは「緊張する」ことではなく、「アガッて」しまい心身がガチガチになって本来のパフォーマンスが出来なくなることである。だから問題は「緊張」ではなく「アガって」しまうことだ。

 

「アガッて」いる時は必ず「緊張して」いるが、逆に「緊張して」いる時は必ずしも「アガッて」はいない。例えば、地震などの災害時は誰でも身構えて「緊張する」が「アガッて」はいないだろう。だから人前では「緊張しないように」するのではなく「アガらないように」すれば良いということになる。

 

そして次の3条件が揃った場合に「アガる」ことを発見した。

 ①.自分が試されると思っている

 ②.失敗は許されないと思っている

 ③.失敗するかもしれないと思っている

上記の3条件のうちの1つでも満たさなければアガる事はない。

 

例えば結果が自分の評価に影響しないなら他の2条件が揃ってもアガらないし、失敗しても構わない状況だったら他の2条件が揃ってもアガらない。また(飛び越えるハードルの高さがたった10センチ等)失敗の可能性が皆無なら他の2条件が揃ってもアガらない。つまりこの3条件のうち1つでも欠ければアガらないのだ。

 

そして既にお気付きかも知れないが、この3条件には一つ共通点がある。それは全て主語が「自分」のことばかりなのだ。つまり「アガる」ということは、意識が自分側に向いている時に起きるということであり、「我(自分)を忘れて無我夢中」で何かをしている時などは、上記の3条件に関係なく人はアガッたりしないのである。

 

プレゼンテーションもそうだが最も大切なのは受け手の「お客様」であって送り手の「自分」ではないことはMCの記事で書いた通り。だから真剣に「お客様」に意識を向けている間は自分に意識は向かない。つまり「アガる」というのは、お客様より自分(の出来)が気になる“自意識過剰で不真面目な状況”なのである。

 

よく「あなたは(図々しいから)人前でアガらなくていいですね。羨ましいですぅ...私は(謙虚で控えめだから)アガッてしまうんですぅ」と抜かす奴がいる。まあ私が図々しいのはその通りだからいいとして「人前でアガるお前は謙虚じゃないぞ。ただ自分を良く見せたいだけのドスケベだからなー」と、思いながら黙っている。

 

「自分がカッコ良く」ではなく、自分のなりふりなど構わずお客様に意識を向けていれば絶対にアガらない。あいみょんが、今回のように「無観客」でお客様に意識を向けにくい状況でも敢えて「緊張感を持って歌いたい」と言ったのは、日頃から意識をお客様に集中して歌うからだろう。今回の紅白での歌唱も素晴らしかった。

 

Saigottimo