映画「上流社会(High Society)」(1956年)はとても豪華な音楽映画だ。主役は1930年代からトップスターのビング・クロスビー、ヒロインは後にモナコ王妃となるグレース・ケリー。それにエンタメ界の大御所フランク・シナトラ、20世紀初頭から活躍するジャズ・ヴォーカルの開祖サッチモことルイ・アーム・ストロングも共演している。

 

こうなるとストーリーはどうでもいい。ビングとサッチモの共演「Now You Has Jazz」ではサッチモの存在感とビングの歌唱が圧倒的!次にグレースとシナトラの共演「Mind if I Make Love to You」での華麗なダンスシーン、さらに30年代(ビング)&40年代(シナトラ)のレジェンド同士のデュエット共演What a Swell Party」も豪華だ。

 

そして極め付けは、グレースがビングとのヨットでのハネムーンを回想するシーンでのコール・ポーターの名曲「True Love(真実の愛)」だ。この映画の直後にモナコ王室に嫁いでしまったグレースの可憐な歌声はこれが聴き収めとなってしまったが、短いフレーズながらヨット上での二人のデュエット部分は初々しくて美しい

 

私はこの映画は観ていたしこの曲も好きだったが当初は自分がこの曲を歌うことは想定していなかった。でも思いがけず歌仲間の大津晃子さんからデュエットのお誘いがあったので喜んで応じた。大津さんは日本のジャズシンガー第一人者マーサ三宅のお弟子さんで同スクールの発表会でも度々受賞している実力者だ。

 

彼女は、同門のベテラン男性ヴォーカリストで精神科の先生がこの曲をデュエットしていたのを聴いて自分もいつか歌いたいと思っていたらしい。もう20年近く前のことになるがデュエットは殆ど初めてだった私は随分緊張した。でもソロと違って美しいハーモニーが出来た時の歓びはひとしお、歌うたびに毎回感動してしまう。

 

その後、いろんな曲を男女様々なヴォーカリストとデュエットする機会を得たが、この曲は私にとって特別な存在でもある。タイトルが「True Love(真実の愛)」だし、歌詞もそれに相応しい内容だけに大津さんとは「この曲はお互い、全男性、全女性の代表として歌う曲ですからね」と申しあわせて、いつもそういう心境で歌う。

あるセッションで歌った後に「ダメだよぉ、大津さんとTrue Loveを歌った後に他の女性とデュエットしちゃあ」と言われてましたよ、と大津さんから告げられドキッとした事も。なので、この曲はその後、大津さんと30回以上歌っているが他の人とは決して歌わないし、この曲を歌った後のステージではデュエットはしない事にしている。

 

下記は、Catswingこと大津晃子さんとの「True Love(真実の愛)」デュエットの初期の音源だが、キメのエンディング「Love Forever ~ True…」のハーモニーもバッチリ決まっている。終わりよければすべてよし!上流社会(High Society)の真実の愛(True Love)はハーモニーも気高いのだ。

♪True Love with Catswing 2001年8月25日・大塚「Greco」でのヴォーカルセッションにて♪

 

Saigottimo