私の弘田三枝子追悼記事に彼女の絵を描いてくれた「とうくろう」氏は企業人にしてピアニスト、さらに業界紙に漫画を連載する才人。その彼が「改めて気付いたのですが私の前職の『社歌』も彼女によるものでした」と述懐。ああ、そうだった!かの有名な小林亜星作曲のレナウン娘のCMソング↓も弘田三枝子の歌唱だった。

 

このCMで私が思い出すのは小学生の頃、NET(現テレビ朝日)でレナウン1社提供の「危機一発シリーズ」。中身は「ハニーにおまかせ」と「それ行けスマート」の米国ドラマ二本立てだった。ハニー役のアン•フランシスは美人で大好きだったし、ドン•アダムス扮する間抜けな情報部員86号マックス・スマートは私のヒーローだった。

 

そして同様に親の目を盗んで観てたのが「ハワイアン•アイ」だ。当時、子供が寝る時間から始まる米国ドラマは「ララミー牧場」も「サンセット77」も「アンタッチャブル」も、み〜んな大人の香りがして魅力的だった。「早く寝なさい!」と親に怒られながらも観てたなあ。

そして気付いたのは「ハワイアン•アイ」が私のジャズの原体験だったという事。探偵事務所の主人公達行きつけのナイトクラブで専属女性シンガーがジャズのスタンダード•ナンバーを歌うシーンが必ず挿入されていた。その間にこの探偵ドラマでは事件が進展するのだが、バックではジャズ・スタンダードを1曲しっかり聴かせるのだ。

私はまだキャバレーに行ける歳でもなく当時ラジオで流れる音楽はオールディーズなので、ジャズのスタンダードを聴く機会はこのドラマ以外にない。“男女がお酒を嗜む店のステージで小編成のバンドをバックにカクテルドレスに身を包んだ歌姫が奏でる妖艶なオトナの音楽”それが私のジャズのイメージかつ原体験だったのだ。

 

歌っていたのは、当時アイドルの様に若くて可愛い女優で歌手のコニー•スティーブンスだった。軽快なナンバーからスロウバラッドまで難なく聴かせる歌唱力には今聴いても感嘆させられる。そしてドラマは毎回事件が解決して大団円となり、再びこの店「SHELL BAR」に皆が集まって笑顔で彼女の歌を聴いて終わるのである。

 

小学生の私は「いつか自分もこんな店に出入りするような大人になりたい」と思っていたが、まさか30数年後にジャズスポットで自分がステージに立ってスタンダードナンバーを歌うとは想像できなかった。弘田三枝子の訃報から次々に思い出が繋がり「ああ、これが自分のジャズの原体験だったのか」と発見でき実に感慨深い。

 

Saigottimo