コロナ禍での休業要請等は概ね解除されたものの、まだ社会活動は本格始動していない。私が参加している「座・高円寺(杉並区立杉並芸術会館)」での絵本読み聞かせイベント「絵本の旅@カフェ」も通常ならGW明けから再開するのだが今季はまだ開催に踏み切れていない。

 

この読み聞かせイベントは教室などでの集団対象ではなく、子供達一人ひとりが選んできた絵本をカフェのテーブルで個別に読むので、感染防止対策が難しいからだろう。そこで主催者は「絵本の旅もしもし便」という代替企画をスタートさせた。

これは我々のような「本読み案内人」と呼ばれるボランティアや会館スタッフが利用希望者に電話で絵本を読み聞かせるという、いわば「リモート絵本読み聞かせイベント」である。今回、会館スタッフさんから「ご利用者さんの希望なんですが平日の夕方でも大丈夫ですか?」と打診があり、私はその日(6/23)にPM半休が取得できたので応諾した。

今回の利用者さんは杉並区内在住のご兄弟。二人が希望した絵本は小2のお兄ちゃんが「サイモンは、ねこである」、4歳の弟くんが「キャベツくんとブタヤマさん」。お子さんの手元(ご自宅)にある絵本と同じ絵本を会館側で用意してくれることになっている。

 

16時半がご希望の開始時刻との事なので、私はその前に会館に出向いて当該絵本を下読みし、開始時刻になったら会館の会議室からスタッフさんに電話をかけてもらって読み聞かせる、という手筈である。

【↑2階の絵本カフェを見下ろせる3階の書庫前スペース】

 

どちらも初めて読む絵本なので会館に1時間ほど前に到着してスタッフさんから絵本を受け取り、3階の書庫前スペースでしっかり下読みをした。ま、録音するわけではないので絶対に読み間違えちゃダメという訳ではないが、間違えないに越したことはない。ほう、ブタヤマさんだから「ブーッ」と叫ぶのかと思いきや、よく読むと「フーッ」だった、危ない危ない…。

 

そして本番5分前。2階の会館事務所内にあるガラスで仕切ったフツーの会議室にスタッフさんと2人で入る。16時半丁度にスタッフさんが会議室の電話機から利用者さん(の恐らくスマホ)に電話をかけ、その場に兄弟二人と絵本があることをお母さんに確認して「では今日は本読み案内人のさるごーさんが読んでくれますので電話を代わります」と私に代わる。

 

先方のスマホはスピーカーフォン状態にしてもらった。そうすれば子供も手が空くし、一緒に聴いている(であろう)お母さんの声など周囲の音も拾うので雰囲気が少しは伝わるからだ。

image

「はーい、さるごーでーす。じゃキャベツくんの方から読むけど、この本はもう何回も読んだのかな?」「…うん」てな感じでスタート!通常のリアル読み聞かせと違って電話だと子供の表情が見えないので本当にそのページを見て集中しているか半ば飽きているか等はこっちからは分かり難い。

 

でもまあ、それは予想してたので、読み手としての所感や会話を頻繁に挟むことにした。「…おおきなミミズが出てきました(と本文をキチンと読んでから、トーンを変えて)でもさー、このミミズさあ、いっくらなんでもデカ過ぎるだろう、そう思わない?」「うん、そーだね、アハハハ、でかすぎー!」てな感じで相手の状況を確認しながら読み進める。

image

お兄ちゃんの絵本はネコ科の動物がいっぱい出てくる。「次のページの動物でお兄ちゃんはどれが好き?」「・・・うーん、チーター!」「へえ、なんで?」「・・・足が速いから」「ああ、そうだね、時速何キロくらいだか知ってる?」「うん、110キロ(㎞/h)」「いやあ、そんなに速くないっしょ、それじゃ高速道路走れるじゃん」「うん、走れるよ」「まさか・・・(いや70~80Km/hだろう、と思いつつ)じゃ今、さるごーさん、スマホで調べるよ・・・あ、ホントだ!110Km/hって書いてある!」「でしょ?」なーんてやってるうちに、アッという間の2冊、丁度30分間だった。

 

スタッフさんが最後に電話を代わってくれて「面白かった?…そう、よかったね」と笑ってくれていたので、何とか役割を果たせたようでホッとした次第。私としては「リモート絵本読み聞かせ」は初体験だったが、まあ、これはこれでITではなく電話というローテクだけど面白かった。うん、これもアリ、ですかね。

 

Saigottimo