2017年12月、池袋と湘南にも“ニューヨークの魔法”がかかった。
我々朗読集団「5Thanks(サンクサンクス)」が4月に渋谷で朗読コンサートを行った際、岡田光世さんの36万部を超えるベストセラーエッセイ“ニューヨークの魔法”シリーズの文庫化第7弾となる「ニューヨークの魔法の約束」からエッセイを何編か朗読させて戴いた。
そのご縁で我々の朗読を気に入って戴いた著者・岡田光世さんから、第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」出版を記念した12月の一連の講演会に朗読出演のオファーを戴いた。

12/9は池袋のカルチャースクールで、そして12/16は藤沢にある湘南蔦屋、と2週にわたって“ニューヨークの魔法”をかけるお手伝いをすることになった。

 

1時間超の岡田さんの講演の中で我々が最新刊から朗読するのは次の7編。
●「郵便局のサンタクロース」久木崎なお江
●「日本の母とアメリカのマム」前尾津也子
●「テロリストにあげたいもの」大幡かおり
●「幻のサーロインステーキ」大幡かおり
●「警官の拳銃の謎」前尾津也子
今回、最後に披露したこの作品は、岡田さんからの「京都弁で朗読して!」という強い要望で実現した、世にも珍しい京都弁での朗読となった。通常なら作品を方言に直して朗読するなんてことは著作権上許されないのだが、今回はなんたって著作者自らが要望しているから実現したというワケだ。
原作では「ひねらないと抜けないんだよ」が「ひねらへんと抜けへんねん!」になっちゃうし、アクセントは違うし、まるで岡田さんとニューヨークの警官が掛け合い漫才をしているような感じになって、それはもう、聴衆にも岡田さんにも大ウケだった。
 
(※湘南では日程上都合がつかなかった久木崎なお江と大幡かおりに代わって、雪乃さん(左)と中田真由美さん(右)が朗読)

 

そして二期会所属の音楽家でもある横山一恵がピアノで朗読内容に合わせた音楽(というより音)をアレンジする、これが5Thanks流である。
音楽はあくまでも朗読を生かすことが目的なので、基本的に読む前後に数小節分のメロディ、そして場面展開があるところなどでポロポロン、と鳴らす程度で最小限とするのだが、それだけ

に音やメロディの選択は非常にシビアだ。

練習の時点でも、音楽についてはメンバー間で、かなり突っ込んだやりとりをする。
「この作品はコメディタッチなので、もう少し弾んだ感じでお願い」
「不安な感じだから、サティみたいな雰囲気のメロディがいいんだけどな・・・」
「あ、そこはもっと短く」「いや、もう少し長く」などと朗読する側は、もう好き勝手な注文をつけるのだが、横山さんは嫌な顔一つしないでオリジナルのメロディを即興(インプロヴィゼイション)で生み出してしまう。
一応、ヴォーカリストとして音楽にも関わっている私としては、彼女のクリエイティビティの高さに、ただただ驚嘆し敬服するばかりだ。
そして今回は私にとって思いがけない余禄もあった。
私を除くメンバーの朗読のお師匠さんである先生が我々の練習を見に来て下さったので、弟子でもない私もちゃっかり、ついでに稽古を付けてもらえたのだ。
私はヴォーカルもそうだが朗読もちゃんと先生について習ったことが全くないので、とても新鮮で貴重な経験だった。そこで先生がコメントされたのは例えば次のような点だった。
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・この作品はどういう作品かを考えて、それが伝わるように読むこと。
(例えば「遊び心を持って」なら文中の「クスリと笑みがこぼれる」ように読む、など)
・お金をもらっている(自分はもらっていなくてもお客様は払っている)のだから、堂々とプロとして振る舞うこと。
(この点はjazzヴォーカルを始めた際に和田バンマスに言われた「西郷さん、ステージに立つ以上はプロもアマも無いからね」と同じで、私はステージパフォーマーとして常に心掛けている事だ)
・貴方は助詞と語尾が強くなり過ぎる傾向がある。
(これはCDレコーディングの際にいずみさんに指摘された「ポルタメントがかかっている」と同じで、全く自分では気付いていないクセだろう)
・いつも語り始めと読点「、」の直後の言葉がモゴモゴして聞き取りにくい。
(うわ、これは歌と全く同じで歌う際も最初の音の音程や発声が難関なのだ)
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この他にもアクセントの違いや読み方について沢山のダメ出しで貴重な教えを頂戴し、改めて朗読というパフォーマンスの深遠さの一端に触れた思いがした。
(岡田さんを囲む懇親会でのスナップ)
 
これまでの朗読コンサートの聴衆は「朗読に興味を持って聴きに来るお客さん」で「作品は読む素材のひとつ」だったが、今回は全く逆で聴衆は「(岡田さんの)作品に興味を持って聴きに来るお客さん」で「朗読は作品紹介手段のひとつ」である。
「今回、朗読というものを初めて聴きましたが、自分で読むのと違った立体的な面白さがありますね」という感想を述べて下さるお客さんも多く、初めて朗読を聴いたこともインパクトを増した要因だったのかも知れない。その意味でも朗読に親しむ方を増やして下さった岡田さんに感謝したい。
岡田さんご自身も今回の一連のイベントによって朗読の可能性を認めて下さったようだが、我々5Thanksとしても朗読そのものや採り上げる作品に興味を持って戴けるようなパフォーマンスを心掛けていきたい。
湘南での朗読は動画でアップされ、岡田さんのコメントも付記されています。
 
Saigottimo