令和6年度税制改正大綱で、交際費の損金不算入が見直され、交際費等の5,000円基準の上限が1万円以下まで拡充されます。そこで今回はあらためて『損金算入』と『損金不算入』について、損金と費用の違いや、条件によっては損金として扱えるものなどを解説します。

『損金算入』『損金不算入』とは? 損金と費用の違いを解説

 損金とは、法人の資産減少の原因となる原価や経費・損失など会社の支出から、一定額を引いたものです。会社の支出という意味では費用と似ていますが、税法上の損金の額と会計上の費用の額は、必ずしも一致しません。損金と費用を計算式であらわ
した場合、以下のようになります。
(法人税) 課税所得 = 益金 - 損金
(会計)   利益  = 収益 - 費用
 

   計算式からもわかるように、損金は税法上の考え方であり、会計上の費用とは異なります。また、税務会計の課税所得と会計上の利益で一致しない差額は、法人税等調整額という勘定科目を用いて、最終的に整合性が取れるようにします。
 法人税を計算するうえで、損金は『損金算入』と『損金不算入』の2種類に分かれます。これらの違いは以下の通りです。
【損金算入】税務計算上は損金となるもの
【損金不算入】会計計算上は費用にできるが、税務計算上は損金にならないもの
 

   では、損金算入できる項目には何があるのでしょうか。たとえば、租税公課で計上している税金の一部、代表的なものとして固定資産税や法人事業税などがあてはまります。そのほか、水道光熱費や消耗品費などがあります。
 一方、損金不算入には法人税や法人住民税、延滞税をはじめ、一定の要件にあてはまらない役員報酬や損金算入の特例が適用されない交際費などがあります。

原則不算入でも条件次第で算入可  損金算入できる特別な項目と条件

   令和6年度税制改正大綱で、損金に算入できる交際費の上限が、現状の一人当たり5,000円以下から1万円以下までに引き上げられ、上記金額まで交際費ではなく、全額損金算入できる会議費等として会計処理できます。そのほか、「接待飲食費の50%損金算入特例」と「中小企業の定額控除限度額(年800万円)の特例」も、令和9年3月末まで3年間の延長が示されています。
 税務上、交際費等は原則、損金不算入ですが、特例が設けられています。交際費のうち接待飲食費の50%を損金に算入することができます。また、資本金1億円以下の法人の場合は、その方法か、年間800万円を限度額として交際費を損金に算入する方法のいずれかを選ぶことができます。ただし、100億円超の法人はこの特例の対象外となり、接待交際費の損金算入は認められていません。
 

   交際費以外にも以下の要件のいずれかを満たした場合、役員報酬も損金算入することができます。
①定期同額給与:事業年度を通じて毎月の支給額が一定である役員報酬
②事前確定届出給与:事前に税務署へ届出を行なったうえで支給される役員報酬
③業績連動給与:企業の利益(業績)と連動して支給される役員報酬
 ただし、社会通念上高すぎると判断される役員報酬は、不相当とされて損金不算入になることがありますので、注意が必要です。
 

  このように、損金算入と損金不算入となる項目には一定の条件があります。それぞれの役割を理解し,日々の経理業務や経営に活かしましょう。