近年、SNSなどの普及により『インフルエンサー』という言葉を耳にするようになり、それをマーケティングに活用するケースが増えてきました。今回は、インフルエンサーマーケティングの重要性、自社で導入するメリットや注意点について、事例を交えつつ解説します。

インフルエンサーの定義と特徴  活用するメリットとデメリットとは

 インフルエンサーとは、その言動が世間や人の思考・行動に大きな影響を与える人物のことです。たとえば有名なスポーツ選手やテレビタレント、ファッションモデル、ブロガーやユーチューバーなどがそれにあたります。そして、このようなインフルエンサーを活用して企業のマーケティングを行うことを『インフルエンサーマーケティング』といいます。
 インフルエンサーマーケティングは、主にSNS上で大きな影響力をもつインフルエンサーに自社の製品やサービスをPRしてもらうことでクチコミを誘発し、消費者の購買行動に影響を与えるものです。
コミュニケーション型のマーケティング手法であり、企業が消費者に対して直接メッセージを発信する従来型のマーケティングと比べ、消費者の視点を取り入れた共感性と訴求力の高いPRが可能になります。商品やブランドに対する認知や購買意欲の向上
が期待できるメリットがあり、その市場規模は年々拡大傾向にあります。
 インフルエンサーマーケティングの成功事例は数多くあります。たとえば、コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社は、コロナ禍による外出自粛時に、自宅で楽しめるダンス動画を数パターン制作しました。複数の人気TikTokerにダンス動画をPRしてもらい、『#おうちでリフレッシュ』のタグをつけての投稿を促し、大成功しました。
 また、カビキラーなどを販売するジョンソン株式会社が、タレントの辻希美さんとタイアップした事例も有名です。4人の子育てに奮闘する辻さんがブランドイメージに合致したこともあり、ユーチューブで多くの視聴回数を得ました。

2023年10月からステマ規制強化  忘れてはならないリスクと注意点

 多くのメリットがあるインフルエンサーマーケティングですが、デメリットもあります。広告臭が強すぎると『ステルスマーケティング(以下「ステマ」)』を疑われる可能性もあります。ステマとは企業から報酬をもらって製品のPRを依頼されている
ことを隠し、あたかも自然に製品を見つけたかのように宣伝をすることです。ステマが発覚すると炎上し、インフルエンサーだけにあらず企業の社会的信用を失う可能性もあります。
 ここ数年でステマによる炎上が続いた結果、2023年10月からステマに対する規制が強化されることになりました。広告と明示せず、クチコミや感想を装って宣伝した場合は事業者名の公表、改善されない場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科すものです。
 インフルエンサーマーケティングはアイデア次第で資金力の少ない中小企業でも大きな効果を得られる可能性がある一方、炎上やイメージダウンにつながるリスクも潜んでいます。現在では、インフルエンサーマーケティングを専門で請け負う企業も
多数あります。メリットとデメリットを理解したうえで、これらの企業の利用も視野にいれつつ、インフルエンサーマーケティングの導入を検討してはいかがでしょうか。