労働基準法では、使用者は労働契約締結や労働契約の変更時には、従業員に労働条件の明示を求めています。書面での交付が必要な項目もあり、この書面を『労働条件通知書』『労働条件明示書』『雇用契約書』などと呼びます。今回は労働条件通知書作成の注意点について解説します。

労働条件通知書に記載しなければならない項目

 労働基準法では、企業が従業員と労働契約を締結する際に、明示すべき労働条件が定められています。
以下の項目については、書面での交付が必要です。
① 労働契約の期間に関する事項
①-2 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
①-3 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
② 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並       びに労働者を二以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
③ 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。 以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払  の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇 に関する事項
④ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
④-2 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
 

 上記のほかにも、就業規則などで定めがある場合、以下の8項目については採用時に明示が必要です。
❶ 退職手当に関すること
❷ 賞与などに関すること
❸ 食費、作業用品などの負担に関すること
❹ 安全衛生に関すること
❺ 職業訓練に関すること
❻ 災害補償などに関すること
❼ 表彰や制裁に関すること
❽ 休職に関すること
 これらは書面での明示義務はありませんが、後のトラブルを避けるためにも、通知書に記載しましょう。


定めがあれば明示すべき項目とパート従業員などへ明示すべき事項

 パートタイム従業員やアルバイトは正社員と待遇が異なることがあるため、雇い入れ時には前述の項目に加えて、『昇給の有無』『退職手当の有無』『賞与の有無』『相談窓口』の4つの事項を書面にて明示しなければなりません。これらを怠ると、行政指導が行われ、改善がみられなければ、10万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
 昇給や賞与については、業績や勤務成績・勤続年数などによっては、昇給されなかったり、賞与支給なしの場合があることを明記しておくことが大切です。「業績により不支給の場合あり」や「勤続年数○年未満は不支給」などの記載を通知書に入れておきましょう。
 なお、労働条件通知書は、すべての従業員に対して交付しなければならず、違反した場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、労働基準法では、「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」とされています。つまり、必要な項目が抜けていたり、記載した労働条件と就業の実態が異なる場合、従業員は即時に労働契約を解除できます。そのためにも、労働条件通知書は正確である必要があ
ります。厚生労働省のホームページでは、労働条件通知書のひな形を公開しているので、参考にしながら作成しましょう。
 

 労働条件通知書の交付はこれまで書面のみとされていましたが、労働者の希望があればメールなどによる交付も認められるようになりました。また、通知書は5年間の保管義務が定められているため、写しを交付し、原本はなくさないよう注意が必要です。
 このように、労働条件通知書に記載すべき内容には、さまざまな定めがあります。自社の就業規則とともに見直し、正しく記載できるよう確認しておきましょう。