夕方、再び、不動産屋から電話があった。
やはり、妻から連絡をしていないらしい。
俺は、妻の実家の電話番号を教え、
直接、電話をしてもらうことにした。
これで、妻は逃げられないだろう。
任したことは、ちゃんとやってもらう!
責任を果たしてもらう!
妻には縁遠い話なのだろう…。
「もはや、関係ないこと。」
なんて思っているんだろう…。
そうはいかない。
もう、不動産屋のことは、
妻に預けた。
というか、
不動産屋が何とかしてくれるだろう。
そして、夕方の面会時間が来た。
母乳を与えるために、
少しずつでも搾乳して、
冷凍保存で持参してくるはずだ。
いや、そうするべきだ。
でも、きっと来ないだろう…。
子どものために、
僅かな母乳でも、
持ってきてもらいたかった。
妻を待ち続けるわけにいかないから、
俺は、子どもの面会を始めた。
だいぶミルクも慣れたし、
オムツ交換も大丈夫だ。
ウンチが出ているときは、
自然と観察していた。
このニオイ。
この色。
これなら大丈夫!
始めは緑色のウンチには、
かなり驚いたけど、
赤ちゃんのウンチは、
こんなものだと聞いたし、
ニオイも含めて、
健康のバロメーターだ。
面会時間が終わり、
俺は、ロビーにいながら、
時間が過ぎるのを待った。
結局、妻は来なかった…。
この日、妻は、子どもの面会には、
一度も来なかったんだ。
もしかして、規定を守らずに、
面会時間外に来ているのか?
そう思って、看護師さんに聞いたけど、
規則上、それは不可能だし、
妻は、来ていないとのことだった。
感染症の治療をしている病棟だ。
そんなデタラメな管理はできないだろう。
面会の記帳にも、妻の名前はない。
何かあったとき、
そんな特例を許していたら、
原因の特定ができなくなるから、
絶対に許されないことだ。
そうすると、やはり妻は、
子どもの面会に来なかったんだ。
・体調が悪くなったのか?
いや、体調が悪いのであれば、
妻の母親にでも頼んで、
母乳だけでも持ってくるべきだ。
どんなに僅かな量でも、
入院中の子どもにとって、
母乳は貴重なものだ。
だから、毎日一緒に搾乳していたんだ。
毎日少しでも持ってきて飲ませるべきだ。
・俺に会いたくないからか?
おそらくそうだろう。
つまり、子どものことよりも、
自分の感情を優先しているってことだ。
本当に子どものためを考えるなら、
イヤな奴と会おうが会うまいが、
そんなこと関係ないはずだ。
俺も、妻が出て行った日から、
毎日、首に激痛があった…。
とても運転できない状態だった。
でも、子どものためなら、
自分の身体が調子悪いなんて、
全く関係ない。
妻には、それが通じないんだろう…。
俺は、頭の中で、
妻が来ない理由を、
あれこれと考えながら帰宅した。
この日、妻からは、
不動産屋の件の連絡は、
結局来なかった…。