病院のロビーへ着くと、
おふくろと妻の母親がいて、
並んで椅子に座っていた。
当然、かなり険悪な雰囲気だった。
おふくろは、
「はい、これ。」
と、俺に印鑑を手渡してきた。
そう!
この印鑑こそ、
子どもの出生届で使ったものだった。
役所の訂正印に必要なものだった。
やっぱり、あったんじゃねえか!
結局、妻のバッグに入っていたらしく、
妻が妻の母親に渡し、
妻の母親から、おふくろが預かったらしい。
どうせ待っていたんだから、
妻の母親が、
直接、詫びを入れて返すべきだろう。
しかも、今、妻の母親の目の前で、
印鑑を手渡されてるんだから、
一言くらい言えねえのか!
そもそも、探しもしないで、
「無い!」
って言ってた矢先に、
自分で持ってたんだから、
妻が詫びを入れて返すべきだ!
妻は、どこにいるんだ?
まさか、帰ったんじゃないだろうな?
妻がいないんじゃ、
妻の母親が妻に代わって、
詫びを入れよ!
でも、そんな話が通じるような、
常識のある相手じゃないから、
何を言っても無駄だな…。
俺は、おふくろと妻の母親の間に座り、
親父たちと話してきたことを、
おふくろと妻の母親に話し始めた。