「申し訳ありませんが、実家へ帰らせて頂きます。」





たったそれだけ書かれた


小さなメモ用紙が、

誰もいないリビングにある


テーブルの上に

ただ置かれていただけだった………。






俺は、我が目を疑った。





つい10分前に、


電話で話したばかりだ。




もう少ししたら、


髄膜炎で入院している


赤ちゃんのお見舞いへ


一緒に行くことになっていた。




搾乳した母乳は、


冷凍庫に入れたままだった。





難産の後に、


赤ちゃんが髄膜炎で入院して、

疲れているから、


休ませていただけだった。




田舎からは、俺の両親が、


赤ちゃんのお見舞いに来ていた。




俺の母親と妻の母親に、


妻のサポートを頼んだばかりだった。







いったい何が起こったのか…、


さっぱり分からなかった……。







俺の両親も、


言葉が出なかったようだ…。







気を取り直した俺は、


すぐに、妻の携帯電話へ連絡したけど、

電源が切られているようだった…。



メールを入れたけど、


やはり返信は来なかった…。






妻が、実家へ帰った?




妻の車は駐車場に置いたままだ。





どうやって帰ったんだ?





妻の実家までタクシーで帰るとなると、


相当な金額になるはずだ。



その時間のバスの本数は、


かなり少ない。





どうやって帰ったんだ?









俺は、妻の実家へ電話をしてみた。





誰も出ない……。






そういえば、妻の両親が帰るとき、

何やら怪しげな会話と


怪しげなサインを出していた…。




なるほど…。





妻の実家もグルになって、


計画的な行動なのか……。








とにかく、赤ちゃんの面会時間が


終わってしまうから、

俺は、一人で赤ちゃんの面会へ向かった………。