妻の出産予定日が近づいてきて、
いよいよ生まれる気配が漂い始めてきた。
シングルマザーだった妻にとっては…、
二度目だろうけど、
俺にとっては…、
初めての出来事になる…。
その日、仕事をしていると、
突然、妻からメールが届いた。
「今日は残業しないで帰ってきてね。
そろそろ生まれるかも。」
俺は、定時になるのを待って、
すぐに家路についた。
俺は、帰りの電車とバスの中で、
妻から電話が来ないか、
かなりドキドキしていた。
俺の帰宅を待っていたかのように、
妻は、俺が帰るとすぐに産気づいた。
そのまま俺は、
妻を車で近所の産婦人科に連れて行った。
子どもは、妻の実家へ行かせていたので、
あとは出産を待つばかりだった。
医者によると…、
すぐには生まれそうにないけど、
でも、そのまま陣痛を待つことになった。
俺は、波形が表示される機械を見ながら、
妻と一緒にいた。
誰からも何の説明もなかったから、
その機械が何なのか、
さっぱり分からなかったけど、
どうも波形の山が来ると、
妻が苦しんでいるようだった…。
そうか、これは陣痛の波形なんだ。
その山が近づいてくるときに合わせて、
妻の腰をさすっていたら、
「イライラするからやめて!」
そうなんだ…。
それにしても……、
いつもの妻の様子とは全然違って、
かなり迫力があった…。
その波形の間隔が、
だんだん短くなってきているようだった。
その都度、苦しんでいる妻を見て、
出産って、こんなに大変なんだな……。
って、改めて感じたりしていた。
妻は、出産の立ち会いを望まなかった…。
その病院自体も、立ち会いができないようだった。
18時頃に病院へ連れてきてから、
どんどん時間が経っていった…。
とにかく時間が経つのが、
とても遅かった…。
21時…。
まだまだのようだった…。
0時…。
まだまだのようだった…。
俺がいると邪魔かも?
「あなた、病室で休んでて。」
やっぱり!
俺は、病室で待つことにした。
でも、ただ待つってのは難しい…。
俺は、病室と妻のいる部屋を
行ったり来たりしていた……。