2023年は、逆転の年です。
ロシアのウクライナ侵攻を言い訳とした軍拡とそれに伴う防衛費倍増を許さず、社会保障の削減や負担増、増税の方針を転換させ、不十分なコロナ対策を見直し、疲弊している医療従事者・介護従事者を支援し、人員増のための施策を行ない、憲法改悪を阻止し、安心して働ける職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。
そして、トルコ・シリア地震の被災者の皆さんにお見舞いを申し上げます。一刻も早く生活が再建されることをお祈り致します。
3月31日、緊急学習会「統一地方選挙に向けた私たちの要求と役割」にオンライン参加しました。講師は全日本民主医療機関連合会の増田剛会長でした。
以下、概要をまとめます。
まず、情勢の共有が行なわれました。
増田先生は、今は政治を変えないと命が守れない、これ以上の後退を許すと最低限のルールが壊されてしまう状況であり、だから選挙に行こうと呼びかけました。
今の時代は、人権と公正を求めているとも述べました。コロナパンデミックの教訓をいかした新しい社会へ向かうべきであり、気候危機へのアクション、BLM、ジェンダー平等などの動きがそれにあたると述べました。
気候危機に対するために開かれた「COP27」で、パキスタンの首相は自国の二酸化炭素排出量は少ないのに大きな被害を受けていることを訴え、「これは人災」だと述べたそうです。被害を受けた人への補償を求める運動が行なわれているそうです。一方、日本は「化石賞」を受けています。
開催国のエジプトはデモを禁止している国ですが、特別な計らいで会場の外ではデモが行なわれたそうです。
新型コロナウイルス感染拡大の第8波では、救急が崩壊したそうです。週8,000台の救急車が搬送困難となり、これはコロナ前の3.5倍だそうです。119番をかけてもつながらない状況であり、日本の医療はいざという時の備えがいかに足りなかったのかを明らかにしました。常に人員は病床に余裕がある必要があり、そのためにも統一地方選挙が重要だと指摘しました。
オックスファム報告書では、コロナ禍によって貧富の差が拡大したと書かれているそうです。コロナ禍と約30年間の新自由主義が政治の弱体化を招いたということです。バイデン大統領も、トリクルダウンは起きなかったと認めているそうです。こうした状況では富裕層への課税が必要であり、世界最低税率が合意されたり、化石燃料からグリーンエネルギーへの転換が行なわれたりしているそうです。「課税正義」という言葉で、不公正な税制を正すことが提起されているそうです。アメリカのサンダーズ上院議員は、「医療は特権ではなく人権」と演説し、若者に支持されているそうです。ソウルでは、梨泰院の問題を人権の視点から解明を求める動きが起こっているそうです。
人権の問題では、当事者運動である「結婚の自由をすべての人に」訴訟で、画期的判決が札幌地裁で出されたそうです。同性同士の結婚を認めないのは憲法違反だとされたそうです。
2023年1月23日に出された旧優生保護法訴訟の熊本地裁判決では、「優生条項に基づく優生手術を受けた者に対して除斥期間の規定を適用することについては(中略)著しく正義・公平の理念に反するというべき特段の事情がある」との判断が示されたそうです。
日本の情勢は、大軍拡し、戦争する国になるのか、憲法を生かし、平和と人権・社会保障が充実した国になるのか、戦後の日本が瓦解するかもしれない危機にあると指摘しました。
日本の1人あたりGDPは、1997年にはOECDで第4位で、経済的に強い国でしたが、2019年には19位となっているそうです。経済発展するための鍵であるジェンダー平等については元々下位であり、選択的夫婦別姓も認められていないのは時代遅れだと指摘しました。
2022年3月8日、国際女性デーにおいて、国連のグテーレス事務総長は、「パンデミックは、家父長制が根深く存在するという長年の事実をよりはっきりと際立たせてきました」と述べ、2023年の同日には、「ジェンダーに基づく差別は、あらゆる人、すなわち女性、女児、男性、男児に害をもたらします」と述べたそうです。
日本や韓国は、ジェンダー平等で下位であり、選挙で政治的変化を勝ち取らなければ変わらないと指摘しました。
2022年12月16日に閣議決定された「安保3文書」は、これまでの悪法と比べてもとんでもないものだと述べました。「安保3文書」とは、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」のことであり、アメリカ国防省の戦略文書と同じ名称へそろえたそうです。それらは、日本をアメリカと一体的に戦争する国へ変えるためのものだと指摘しました。日本が持つとされている「反撃能力」は、実際は「先制攻撃」であり、それを専守防衛でやれるというのは欺瞞であり、南西諸島の基地化、各地の基地強靭化が進めらようとしているそうです。
ウクライナ戦争の教訓は、軍事対軍事では平和は実現できないということだと指摘しました。外交上の不成功があったことはほとんど報道されず、突発的な争いが生じれば戦争状態になってしまうと述べました。
なぜ日本が戦争をせずにすんだのかというと、憲法9条があったからだと述べました。
故・半藤一利さんは、「日本は海岸線が長く、そして背骨のような山脈があり、人は殆ど海岸線に住んでいる」、「全国の海岸線に原発が54基もあり、これを攻撃されたら終わり」と述べたそうです。
韓国やフィリピンは、アメリカからの参戦要求に応えてベトナム戦争に参戦し、賠償を求められているそうです。日本は、アメリカからの参戦要求に対して憲法9条が事実上の盾となり、参戦することはなかったと指摘しました。
9条の会・医療者の会が再活性化しているそうです。
イラク戦争から20年が経ちました。この戦争は、ウクライナと同じで、国連決議がないまま米英「有志連合」が「先制的自衛権」をかかげてイラクに侵攻したそうです。攻撃の理由とした「大量破壊兵器」はなかったことが明らかになり、イラク戦争は「アメリカ最大の失敗」とされ、パウエル元米国務長官は「私の人生の汚点」と述べているそうです。
日本はイラク戦争において真っ先にアメリカを支持しましたが、その総括をしておらず、ロシアはずっとイラク戦争の問題を主張しているそうです。
全日本民医連の選挙への姿勢は、1953年に初代会長の須田朱八郎氏が『全日本民医連』誌において、病める患部だけを診るのではなく、患者の生活全体として診ること、健康と、健康が支えられる生活を守ろうとしていると述べたように、SDHの視点、共同の営み、多職種協働、アウトリーチ、アドボケート、人権としての社会保障といった考え方に基づいていると述べました。
2019年のリーマン・ショックの際は、民医連は駅前相談会などのアウトリーチ活動に取り組みました。コロナ禍ではフードパントリー活動を行ない、多くの若い職員が参加し、貧困を肌で感じました。そして、政治を変える必要があると感じていると指摘しました。
こうしたことを経験した私たちは、選挙に臨むべきだと指摘しました。
2008年、健康の社会的決定要因委員会が出したファイナルレポートには、「健康の不公平性を低減することは倫理的義務である。社会的不正義のために多くの人々が殺されている」と指摘し、「権力、資金、リソースの不公正な分配にタックルしよう」と呼びかけたそうです。
全日本民医連歯科部が発行している『歯科酷書』では、貧困による口腔崩壊が起こっていることが示され、それは自己責任なのかと問いかけました。
キューバの人々の歯は例外なくきれいであり、それは全ての国民に医療は無料で提供されることが憲法で定められているからだそうです。日本も憲法25条で健康で文化的な生活が保障されているはずですが、口腔崩壊が起こっているのは政治の違いがあるからだと指摘しました。エキタスは、「最賃が1500円になったら歯医者へ行こう」と呼びかけているそうです。
2022年分の経済的事由による手遅れ死亡事例調査では、60代の男性が経済的な困窮状態になり、健康保険は資格証明書になっており、生活保護は車を持っていたため受けられず、受診できずにいましたが、無料低額診療を紹介されて受診してガンが発見されたという事例が報告されたそうです。
民医連の役割は絶大であり、人権の砦となることを呼びかけました。そして、患者さんに最善の治療を提供することと、患者になれない人への支援もするという、「2つの人権」を意識して行動することを提起しました。そして、日本社会のペネトレーターとして、壁や困難にぶち当たり、突破を目指すことを呼びかけました。
なにが民医連を前進させてきたのかというと、第1に、「生活と労働の視点」や「共同の営み」の医療観にたち、医学医療の進歩に学び、自ら後継者育成に取り組んできたこと、第2に、非営利原則に基づき、要求に応えて地域住民とともに保健、医療、介護活動を展開し、事業所の科学的で民主的な管理と運営に努力してきたこと、第3に、日本国憲法に依拠して社会保障制度を守り発展させる運動をすすめ、政治活動にも積極的に取り組んできたことをあげました。
怒りを表出することが大切であり、「若者よ怒れ! これがきみたちの希望の道だ」というフランスの元レジスタンス闘士の言葉を紹介しました。
岸田首相は2022年10月3日の所信表明演説において、「3年ぶりに緊急事態宣言等の行動制限を行なわずに今年の夏を乗り切れた」と述べましたが、コロナ禍で最大の死者を出した夏だったと指摘しました。
日銀の黒田総裁は、2023年3月10日の会見で、「金融緩和は成功だった」、「副作用の面より、プラスの効果がはるかに大きかった」、「雇用が増加、ベアが復活、就職氷河期も完全になくなった」と述べましたが、雇用が増加しているのは非正規雇用であり、シングルマザーがダブルワークをしているケースもあることや、ベアが復活しているのは大企業の内部留保を使ったからだということを指摘しました。
こうした発言に対して、そろそろ怒るべきだと指摘しました。
『福祉は誰のために』という藤田孝典さんらの共著では、社会保障はたたかいとって得られるものだと書かれているそうです。
2022年12月16日に出された全世代型社会保障構築会議報告書では、「社会保障は世代を越えた全ての人々が連帯し、困難を分かち合い、未来の社会に向けて協力し合うためにある」、「社会全体での支え合いによって、個人の幸福増進を図る為に存在するもの」とされていますが、本来の社会保障は人権であり、それを保障するのは国の義務だと指摘しました。
1950年10月16日に出された社会保障制度審議会の社会保障制度に関する勧告では、「国民には生存権があり、国家には生活保障の義務がある」とされているそうです。
社会保障は人権であるという原点に立ち返るべきであり、民医連としてもそのことを動画にして訴えるとのことでした。
統一地方選挙にあたっての民医連の訴えを出しており、それをみんなで学び合ってほしいと呼びかけました。
それぞれの候補者は、選挙ではいいことしか言わないので、その人が属する政党や会派が、普段どんなことを言っていて、どんなことをやっているのかと照らし合わせて、投票の選択をしてほしいと述べました。
現場での矛盾を解決するにはどういった選択をするべきか、ぜひ話し合ってほしいと呼びかけました。参考となる書籍として、斎藤美奈子さんの『学校が教えないほんとうの政治の話』をあげました。
今は、かつてない戦争の危機であり、財務省でも止められないほどタガが外れた状態だと指摘しました。それを止めるには、大軍拡、大増税を推進する人を選挙で落とさなければならず、普段選挙に行かない人、選挙に行っても変わらないと思っている人へ伝えてほしいと呼びかけました。
以上で報告を終わります。