第67回埼玉母親大会 記念講演「今さらながら?今だからこそのジェンダー平等」 | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

ロシア軍によるウクライナ侵攻に抗議し、1日も早く停戦し、ウクライナに平和が戻ることを願います。

また、ロシアによる核兵器使用の脅し、原発への攻撃は、世界を危険にさらす暴挙であり、決して許されるものではないことを訴えます。

 

2022年は、再起の年です。

総選挙での野党共闘の成果と不十分だった点をもう一度確認し、参議院選挙に向けて再出発し、深刻な医療従事者・介護従事者不足に具体的な対策を講じ、不合理な病床削減をストップさせ、憲法改悪を阻止し、差別やハラスメントのない職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。

 

 

6月26日、第67回埼玉母親大会にオンライン参加しました。

以下、記念講演「今さらながら?今だからこそのジェンダー平等」の概要をまとめます。

講師は文芸評論家の斎藤美奈子さんでした。

 

斎藤さんはジェンダー平等について、今日の料理は誰がつくるのかから政治・経済まで問題があると述べました。

そして、まずは日本の「トホホ」な現状を知っておこうと提起しました。

ジェンダー・ギャップ指数では、日本は2021年の順位で120位でした。1位はアイスランド、2位はフィンランド、3位はノルウェーと、北欧の国が続きますが、6位にはナミビアが入っているそうです。ナミビアは南アフリカの植民地だった国で、1990年に独立し、差別に対するたたかいをしてきたので平等の意識が高いとのことでした。選挙は比例代表制で、ゼブラ方式という名簿を男女交互のする方法を執っているそうです。7位はルワンダで、非常に悲惨な内戦の後、国をつくり直すために女性が社会的役割を担ってきたそうです。女性の国会議員の割合が高いそうです。8位はリトアニアで、バルト3国の1つです。前回から25位アップしているのですが、女性大臣が0%から43%に増え、女性議員も27%になっているそうです。アメリカは30位ですが、前回から23位アップしているそうです。バイデン大統領が女性大臣を増やしたからだそうです。

韓国は102位、中国は107位だそうです。韓国は文大統領の政策で男女平等が進み、2019年に日本を追い抜かしたそうです。経済も発展しており、2018年にGDPでも日本を追い抜いたそうです。日本は政治分野で147位、達成率6.1%と低く、経済分野でも117位だそうです。教育分野は92位、医療分野は65位だそうです。

あらゆる組織は、30%以上の女性が入らなければならないと指摘しました。それだければ、女性の意見が反映されるようになるそうです。

例えば戦隊ヒーローでは、男女比は4対1が多く、たまに3対2の場合があります。「セーラームーン」は女性がたたかいますが、あれは女性だけの戦隊で、男女共同の中での活躍ではありません。

10人の組織で女性が1人だと、お飾り、いるだけで、孤独になってしまい、意見を言っても相手にされず、決定から排除されてしまうそうです。また、意見を言っても「女性の代表」扱いされてしまうと指摘しました。

10人の組織で女性が2人だと、共闘できますがまだ意見は通らず、会議の後に女性2人でグチを言い合うことになってしまうそうです。

10人の組織で女性が3人になると、やっと意見が無視できなくなり、多様性も生じるそうです。また、女性がいることが当たり前になると指摘しました。

政治分野では、日本の女性議員の割合は世界最低レベルだそうです。地方議員も女性は少ないそうです。2019年のランキングでは、1位はルワンダで61.3%、2位はキューバで53.2%、3位はボリビアで53.1%だそうです・日本は165位で、衆院で10.2%、参院で23.1%だそうです。

世界では、閣僚も半数は女性が当たり前だそうです。2021年の順位では、1位がニカラグアで58.8%、2位がオーストラリア、ベルギー、スウェーデンで57.1%、5位はアルバニアで56.3%、6位はルワンダで54.8%、7位はコスタリカで52.0%だそうです。日本は124位で、15.0%だそうです。閣僚はトップの判断が大きい項目です。

各国で女性議員が増えた理由は、自然に増えたのではなく、ポジティブ・アクションにより積極的に増やす努力をしてきた成果だと指摘しました。候補者の一定の人数や比率を女性に割り当てるクオータ制や、候補者を男女同数にするパリテ制などが行なわれているそうです。

日本でも、2018年5月に「政治分野の男女共同参画推進法」が成立し、2021年に改正されましたが、数値目標の義務化はされなかったそうです。ただし、今回の参院選では、立憲民主党が女性候補を51%、共産党が女性候補を55%にしているそうです。

経済分野では、男女間の賃金格差が大きいそうです。日本では、男性の平均賃金が426万円、女性の平均賃金は270万円で、女性は男性の63%だそうです。韓国も賃金の男女格差が大きい国ですが、賃金そのものは急激に上がっているそうです。日本は賃金そのものが低下しており、ダブルパンチとなっています。

女性管理職者の割合も世界最低レベルだそうです。1位はフィリピンで46.6%、2位はアメリカで43.4%、3位はスウェーデンで39.2%だそうです。日本は11位で13.0%、韓国は12位で10.5%だそうです。また、日本の女性管理職は、地位が上がるほど少なくなっており、係長級は18・6%、課長級は10.3%、部長級は6.6%、役員級は5.5%だそうです。社長級は14.2%と高くなりますが、上場企業に限ると1.1%だそうです。

他にも、日本ではいろいろなものが遅れているそうです。夫婦同姓を法律で強制しているのは、世界でほぼ日本だけだと指摘しました。他国はどんどん法改正し、日本では最高裁でも認めないそうです。LGBT平等法がないのも日本だけで、80ヵ国で法整備がされているそうです。日本では同性婚も不可ですが、30ヵ国で法整備がされているそうです。

また、都道府県版のジェンダーギャップ指数も比較しました。

国会議員・地方議員・首長などの男女比による政治分野では、1位が東京都、2位が神奈川県、3位が新潟県で、埼玉県は10位だそうです。行政の管理職・審議委員・大卒職員などの男女比による行政分野では、1位が鳥取県、2位が徳島県、3位が滋賀県で、埼玉県は14位だそうです。大学進学率・小中高校長・教育委員の男女比などによる教育分野では、1位が広島県、2位が神奈川県、3位が石川県で、埼玉県は42位だそうです。フルタイム労働者賃金・共稼ぎ過程の家事時間・社長&管理職の男女比などによる経済分野は、1位が沖縄県、2位が東京都、3位が石川県で、埼玉県は41位だそうです。世界のジェンダーギャップ指数の上位にいろいろな国が出てきたように、都道府県もそれぞれがいろいろな政策を執っており、世界の状況と似ていると指摘しました。

ちなみに、埼玉県についての講評は、女性ゼロ議会がなく、意思決定の場に女性が増えている一方、四年制大学への女性の進学率が低く、フルタイムの女性労働者が少ないというものだったそうです。

 

次に、それでも日本は変わろうとしているということが指摘されました。

2021年2月、当時オリンピック組織委員会の委員長だった森喜朗氏が、「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」、組織委員会の女性については、「みなさんわきまえておられて」などと発言したことが報道されました。すぐさま、ツイッターで「#わきまえない女」というハッシュタグで批判が拡散され、森氏は辞任に追い込まれました。ひどいことに、組織委員会の総括では、森発言についてこれをきっかけにジェンダー意識が高まったと取り上げているそうです。

この森発言が批判されたのには、オリンピックだから国際社会の監視があった、五輪憲章が差別禁止を明記している、東京五輪のテーマが「多様性と協調」だった、市民がちゃんと騒いだということがあると指摘しました。

市民の批判の背景には、「#Me Too」運動の高まりがあると指摘しました。2018年4月に、テレビ朝日の女性記者が財務事務次官のセクハラを告発するという事件があり、事務次官は辞任しました。この時、女性記者はテレビ朝日で取り合ってもらえなかったため、週刊新潮でセクハラを曝露しました。

「#Me Too」運動は、2017年のハリウッドの運動から始まっているそうです。ある大物プロデューサーが30年間もの間セクハラや性的暴行をはたらいており、そのことを2人の女性記者がこつこつ取材して発表し、1人の女優が実名での告発を行ない、プロデューサーの逮捕につながったそうです。もう一つの運動の起源にはトランプ大統領のセクハラに対する批判があり、トランプ就任に抗議する女性デモが行なわれたそうです。

日本の「#Me Too」運動の起源は、2017年のジャーナリストの伊藤詩織さんの性暴力告発です。伊藤さんはひどいバッシングを受けて日本にいられなくなり、海外へ拠点を移しますが、民事裁判では2019年に勝訴しました。最近でも、芸能界、政界で、セクハラや性暴力の告発が続いています。

1989年は「セクハラ元年」と言われており、「セクシャルハラスメント」が流行語大賞の金賞を取ったそうです。福岡地裁で初のセクハラ裁判が起こされ、1992年に全面勝訴したそうです。1999年には横山ノック・セクハラ事件がありました。選挙の運動員の女子大学生が、強制わいせつを告発し、横山氏は在宅起訴され、2000年に有罪判決を受けたそうです。しかし、当時は「横山さんだから」、「いちいち騒ぐな」という男性が多かったそうです。

運動の原点には、1970年代のウーマンリブ運動があるそうです。この運動は「フェミニズム第2波」と呼ばれており、第1波は女性参政権獲得の取り組みだそうです。第2波は性別役割分業、ジェンダー規範の見直し、性の自己決定権など、私的領域での運動だったそうです。1975年には、国際婦人年メキシコ大会が開催されました。

しかし、日本では70~80年代は、まだ男性誌にはセクハラ記事が掲載され、女性誌も意識が低かったそうです。1990年代にはマドンナ旋風で女性議員が増加したそうです。そして、1996年に政権交代が起こり、自社さ政権が発足しました。この政権はリベラルで、自民党内にも見識のある女性議員がいて、男性議員にも差別禁止意識が高い人がいたそうです。

女性議員の共闘によってつくられた法律もいくつもあり、1986年の男女雇用機会均等法に始まり、2022年には困難女性支援法がつくられたそうです。この法律は、女性のためのシェルターの根拠法となっているそうです。また、政令によって一定以上の大企業の男女賃金監査を公表するようになったそうです。女性議員が増えると、政策の優先順位が変わるということが指摘されました。

 

今、ジェンダー平等はトレンドで、50年からの歴史がありますが、「今気づいた」という人も多く、声を上げるべき時だと指摘しました。

参院選に向けて、まず、コロナ禍の経験を忘れないことが提起されました。新型コロナウイルス感染症での死者は3万人を超えており、阪神淡路大震災での使者が約6,000人、東日本大震災での死者は約2万人なので、コロナ禍は大規模災害級だと指摘しました。また、対策が執られていたかを問うべきだと指摘しました。ジェンダー平等政策にも注目すべきであり、女性議員が何%になるかも焦点だと指摘しました。

市民のNOで変わった案件として、コロナ禍での10万円の定額給付金、「Go Too!」の停止、五輪については聖火リレーの縮小、無観客にさせたことなどがあげられました。

今さらながら、今だからこそ、数や男女比に敏感になり、自分の周りの男女比率や役職を把握することが提起されました。そして、不満や不信は口に出して言い、おかしいと思ったことも言葉にすることが提起されました。言えば賛同者が出てくると述べました。また、「自分なんかが」と言わないことが提起されました。セクハラ発言に用心し、加害者にならないように注意することも提起されました。「そういう人だから」ですませず、わが身を振り返って「忘れなよ」、「気にするな」などは言わないことも呼びかけられました。

そして、若い人の背中を押すことも提起されました。「できるから」、「応援するから」と伝え、年長者の励ましは力になると指摘しました。

20年、30年の遅れを取り戻し、わきまえない女として一緒に頑張っていきましょうと呼びかけました。

 

以上で報告を終わります。