埼玉憲法会議学習会「総選挙にあたり、憲法をどう語るか」 | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2021年は、再生の年です。

新型コロナウイルス感染症が浮き彫りにしたこの社会の脆弱性に目を向け、社会保障制度を生存権を守るものに再整備し、平和憲法に基づいて法体系を再改正し、私たちの働く場所を雇用体系による差別やハラスメントのない職場へと再構築し、核兵器禁止条約を批准する日本へと再生するために、行動し、声を上げることを提起しました。

 

 

9月14日、埼玉憲法会議主催の「総選挙に向けた憲法・学習決起集会」に参加しました。

そこで行なわれた学習講演「総選挙にあたり、憲法をどう語るか」の概要をまとめます。講師は慶応大学の小林節名誉教授でした。

 

小林先生は、私の役割は総選挙の前にいかに憲法を語るかということだと述べました。自民党はトリックを繰り返して話をそらしてきて、今は総裁選でメディアジャックをしていると批判しました。

菅首相が辞めると言っただけで世論調査の自民党支持率が上昇したそうです。菅首相は安倍政権を引き継いで政治を私物化してきた人物であり、バカ丸出しで、会見では頭が真っ白になって何も言えない姿を見せてきたと指摘しました。総裁選では、岸田さんはへこへこしてきたし、誰が総裁になっても自民党は自民党だと述べました。

2012年、自民党が野党の時に憲法改正草案をつくった時に、小林先生は自民党と決裂したそうです。自民党は学者を都合よく利用すると批判しました。小林先生は自民党に話したことを外で話しただけで「変節」と言われたそうです。

自民党の憲法改正法草案は、憲法を全て書き直す案であり、あまりにもまず過ぎると指摘しました。草案は安倍さんが野党時代につくった自民党の本心であり、「明治憲法の現代語訳」だとも述べました。明治憲法は世界の常識から言うとニセ憲法であり、現実憲法はアメリカの押し付けだが、多くの国民がそれを受け入れたという事実があると指摘しました。

続いて、小林先生は自民党改正草案のやばいところをあげました。

まず、99条の憲法尊重擁護義務は権力者が憲法を守る義務があるという内容ですが、これが自民党は気に入らず、新102条1項に一般国民は憲法を尊重するとし、2項に権力者は憲法を擁護するとしたそうです。つまり、下々が憲法を守っているか、権力者が監視するという意味です。たとえば、改憲草案には国旗国歌尊重義務が入っており、入学式や卒業式で国旗を尊重しているかをチェックし、ちゃんとしていなければ「非国民」と言われるようになるということです。

岸田さんはコロナ対策で緊急事態条項が必要だと言っていますが、自民党の改憲草案には緊急事態条項が入っています。これは、総理大臣が宣言すれば、行政権と同時に立法権も握り、予算編成権も持ち、司法も従わせることができるという内容だそうです。

小林先生は、現憲法には「公共の福祉」という概念による人権制限があると指摘しました。そして、コロナ感染拡大は公衆衛生が守られていないということであり、今の政権にないのはまともな科学的根拠に基づく政策を考える頭と、それを実現する心だと指摘しました。

緊急事態条項が必要なのは他国と戦争する場合だけであり、日本は憲法9条によって交戦権がないのだから戦争はできないので必要ないと述べました。そして、自衛隊は軍隊ではなく第二警察であり、海外へ出て武力行使すれば海賊と扱われると指摘しました。

唯一の希望は、改憲はされていないということだと述べました。安保法制も廃止法案を成立させれば止められると指摘しました。関連法も変えなければならないから廃止は難しいと言う人もいますが、後法が優先される原則があるので、廃止法案にこの法律に反する法律は停止するという条文を入れればいいだけだそうです。

9条改憲は、安倍さんが「自衛隊員の子どもが泣いているから」などと言って進めようとしましたが、しかし、自衛隊は防衛省の下部機関だと指摘しました。憲法に書かれている国の機関は国会、内閣、最高裁、会計検査院だけであり、財務省も警察庁も防衛省も書かれていません。法律で改廃する機関を憲法に書く必要はないと述べました。

自衛隊は、「必要最小限の専守防衛の自衛隊」であるから合憲だとされています。「必要」はどのようにでも言えますが、「最小限」で国から出ることはできないという制限がされていると指摘しました。そして、自民党は「必要な自衛のために自衛隊を持つ」としており、「最小限」が消えていると指摘しました。

また、衆議院と参議院については、憲法上は特徴は書かれていません。例えばアメリカでは、上院は人口に応じて議員が選出され、下院は州代表として選出されるそうです。これは、それぞれの州が憲法を持っており、裁判制度も違うからだそうです。対して、日本の都道府県は日本国の一部であり、憲法上、国会議員は地方代表ではありません。このことは、「議員は人の代表であって、山や川の代表ではない」と表現されているそうです。

しかし、自民党の改憲案では国会議員の人口比例を外すとしているそうです。これは目先の議席と欲得のためだと指摘しました。

もう一つの自民党改憲案の「教育の充実」は、努力目標であって憲法に書くことではなく、法律と予算によってできることだと指摘しました。たとえば、民主党政権が行なった高校の無償化を、自民党政権が壊したという経緯があります。

このような指摘をしても自民党には話が通じず、だから野党共闘が必要だと述べました。一本の旗を立てなければ勝てないと指摘しました。立憲民主党の福山氏が「野党間で予備選挙を」と主張しましたが、それは立憲民主党に従えということであり、そうではなく、全国の比例票の比率で統一候補を割り振ればいいと指摘しました。そして、それぞれの党の強いところで候補を立て、その候補を自党の候補が立たなかった場合でも統一候補として全力で応援するべきだと述べました。つまり、候補者は必ず一本化するべきであり、本気で代表が手を取り出すべきだと述べました。協力しろと言いながら閣内には入れないでは成り立たず、自衛隊についての考えが合わないと言うが、共産党の志位委員長は「自衛隊も安保もない日本を目指すが、今現在そうできないのはわかっている」と言っていたと指摘しました。

暴力革命主義の発言については、共産主義者で暴力革命を行なったのはレーニンと毛沢東だけであるが、その際も相手側も軍事力を振るっていたという状況があり、今の日本ではそうした必要はないと述べました。また、アメリカ独立戦争も暴力革命であり、その影響で起こったフランス革命も暴力革命であったのに、それらを暴力革命と言わないのは情報統制だと指摘しました。共産党は野党共闘のために我慢しているので、だから支持者が代わりに言うべきだと述べました。そして、マルクスとエンゲルスは暴力革命をするとは言っておらず、悪い先例が多いが、日本にはそれはないと述べました。

共産主義は資本主義に対抗するために生まれたものであり、資本主義は富を持つことがよいとしているが、しかし、富の9割を一部の人が持つことはないと指摘しました。富を分け合えばもっと豊かになることができ、ブラック企業もなくなると述べました。ただし、権力のコントロールを間違うと官僚主義になってしまうので、そこを間違えなければいいと指摘しました。

小林先生は最後に、私が共産主義といいと言うことになるとは思わなかったが、72歳になっても成長できるということだと述べました。

 

以上で報告を終わります。