2020年は、勝負の年です。
今年こそ、憲法9条を中心とする憲法改悪策動を葬り、沖縄の辺野古新基地建設は不可能であることを知らせ、社会保障改悪をストップさせ、特定秘密保護法・戦争法・共謀罪法などの悪法の廃止を求め、雇用形態による差別を解消し、ハラスメント防止法を職場で実効性あるものとし、労働者をはじめとする99%の人たちのいのちと健康と働く権利を守るために行動し、憲法が活きる社会となることを目指し、声を上げることを提起します。
5月3日、今年の憲法集会は、新型コロナウイルス感染症防止対策のため、国会正門前からのネット中継を視聴して参加することになりました。
近々、録画が字幕つきで公開されるとのことですが、概要をお伝えします。
司会は、「9条壊すな!実行委員会」の菱山南帆子さんでした。菱山さんは、長い歴史の憲法集会を途切れさせる訳にはいかないと述べました。安倍首相はさらに改憲を進めようとしているが、おかしいと言うべきであり、3密をつくらずに安倍政権を必ず打倒しようと呼びかけました。
開会あいさつは、総がかり行動実行委員会の高田健さんが行ないました。高田さんは、第73回めの憲法集会において、全国でネット中継を見ている人たちに連帯のあいさつを送りたいと述べました。新型コロナウイルスは目に見えない危険であり、安倍政権は外交日程や東京オリンピック開催を優先して対策を遅らせ、無謀な一斉休校やアベノマスク配布などの失政は枚挙にいとまがないと指摘しました。自粛要請は対策が不十分なままで行なわれ、同調圧力が強まり、人権の制限が起こっていると指摘しました。安倍政権は相変わらず改憲の動きを強めており、本当に新型コロナウイルス感染拡大を解決するなら憲法審査会をやっている場合ではないと述べました。それは何の正当性もない暴挙であり、この状況下で憲法は一層輝きを増していると述べました。軍事大国のアメリカは何もまともな対応をできておらず、軍事力によって平和は実現しないと示していると指摘しました。韓国は、財政確保のために、戦闘機やイージス艦の購入費を新型コロナウイルス対策にあてているそうです。新型コロナウイルスが沈静化した後に、戦争する国にしてはならないと指摘しました。物言わぬ市民になることを拒否し、悪政に反対し、政治を変える奮闘をしなければならないと述べました。新型コロナウイルスが収束したら、11月3日には大規模集会を行ない、改憲発議反対を訴えようと呼びかけました。総選挙では、野党統一候補で勝利しようと述べました。壮大な政治変革の展望があり、ともに頑張りましょうと呼びかけました。
ここで、政党からメッセージが届いていることが紹介されましたが、時間短縮のために政党名のみの読み上げとなりました。立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党、そして国会議員個人からのメッセージが届いているとのことでした。
続いて、スピーチが行なわれました。
早稲田大学名誉教授の浅倉むつ子さんは、様々な形での連帯、ネット配信の主催者に感謝すると述べました。不安のはけ口として、新型コロナウイルス感染者、医療従事者、外で働く人たちが批判されており、事件が起きないか心配だと述べました。歴史を振り返ると、関東大震災の際に朝鮮人虐殺が起こったことなど、日本が目をそらしてきたことがあり、国が責任を取らなかったので国民が学んでこなかったと指摘しました。メルケル首相は3月の演説で、開かれた民主主義のためには透明性を確保し、行動の根拠を示し、理解を得ることが必要だと述べたそうです。世界の人々の胸をうつ名演説だったと述べました。そして、安倍首相が誠実なリーダーではないのが残念だと述べました。安倍政権は、集団的自衛権の行使容認、罨法関連法の強行などの暴挙を重ね、公的ルールを破壊し、従う者のみを重用し、尊い命が失われたと指摘しました。赤木俊夫さんのことを決して忘れないと述べました。その中での新型コロナウイルス危機であり、安部政治とは逆の政治が必要だと指摘しました。障害の社会モデルというものがあり、障害者自身から障害が生じるのではなく、社会の相互作用から生じるという考え方で、社会が変われば障害は軽減できるという考え方だそうです。最も弱い人が生きやすい社会を目指すべきだと述べました。この事態に対して、最も弱い人が安全に生きられることが優先課題であり、弱い人たちとはシングルマザー、高齢者、医療従事者、ヘイトに遭っている人たちだと指摘しました。国家の安全保障ではなく、人間の安全保障を実現すべきであり、平和とは社会における公正、基本的人権、自由を含むものであり、必要なのはあらゆる暴力を反省し、防止すること、ヘイトを禁止することだと述べました。それができないのは、公正、思いやり、理性を無視してきた現政権の責任だと指摘しました。憲法は灯台の灯であり、それを改正する必要はないと述べました。憲法を貫き、本当の平和主義を発信すべきであり、自信を持って憲法を守り抜こうと呼びかけました。
福島原発告訴団の武藤類子さんからはメッセージが届けられました。武藤さんは、この国の真の平和と人々の幸せについて語り合いたかったと述べました。現状が東京電力福島原発事故と重なり、複雑な思いだそうです。緊急事態宣言の中、原発の汚染水処分についての小委員会が開かれ、海洋放出が確実だとの報告書が提出され、関係者の意見をうかがう場が強行されたそうです。傍聴することもできなかったそうです。アルプスによる処理水は120万トンにもなっており、トリチウムだけでなくそれ以外の放射性物質も含まれているそうです。漁連は増産に向けて舵を切ろうとしている時だとして反対し、農協も反対し、浪江町議会は反対決議をあげ、住民の声を聞いてほしいという声が上がり、世論調査では57%が海洋放出に反対しているという結果だったそうです。安全だとは信じられず、実績のある保管法もあると指摘しました。市民抗議の呼びかけや、337団体の共同声明も出されているそうです。県民大集会の実行委員会は、個人署名を集めているそうです。出来得ることは何でもやって止めたいと述べました。新型コロナウイルスで集うことが難しくなっているが、バラバラにされないようにしましょうと呼びかけました。つながり、助け合うというシンプルなことが、人々が生き延びることだと述べました。
続いて、憲法学者の稲正樹さんがスピーチしました。稲さんは、大変な新型コロナウイルス危機の中で憲法記念日を迎えており、憲法学者の声を伝えたいと述べました。憲法に基づく政治とは何かというと、私たちの命と暮らしを守る政治を実現することだと指摘しました。憲法13条に、「生命、自由及び幸福追及に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあり、これは平和主義とともに、憲法が生命権を保障しているということだと述べました。平和的生存権とは、国家に対して生命を脅かすことを止めてくれということだが、もう一つ、国家にやってくれということがあり、健康で文化的な最低限度の生活を保障することだと指摘しました。憲法13条は、国家が国民の生命を侵害してはならないということだけでなく、国民を、生命の侵害の危険から守らなければならないということを定めていると指摘しました。しかし、そうなっているかというと、PCR検査ができない、自宅で放っておかれるといったことが起こっており、埼玉県知事はお詫びしたと述べました。医療現場では、裸で闘うと言うに等しい政治になっていると指摘しました。その一方、ろくに補償もせずに、テレビ広告をつかって「3密を避けろ」と言っていると指摘しました。政治を転換しなければならず、科学的判断をすべきだと述べました。いい加減な専門家ではなく、国民の命のために真剣に考える科学者の意見を聴くべきだと述べました。学校の閉鎖により、子どもたちは家にいなければならず、学習権をどう保障するか、どれだけ真剣に考えているのかと問いかけました。非正規労働者、中小業者に対しては、第29条の「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」に基づいて、第25条生存権、第27条勤労権をてこに、自粛と補償はセットにすべきだと述べました。表現、集会、移動の自由を制限することはやむを得ないのかと問いかけ、真に必要な場合に留めるべきだと述べました。ともに語り、議論し、考える自由を制限すれば、私たちの力は衰え、物言わぬ国民になってしまうと指摘しました。どこに感染者がいるか明らかにすべきだが、スマホの履歴を集めるが個人情報を保護すべきだと指摘しました。現在、自民党は新型コロナウイルスの危機の中、憲法の緊急事態条項を入れようとしているが、不要不急の火事場泥棒だと述べました。安倍改憲案は恐るべき内容であり、法破りの張本人がそれを憲法の中へ入れようとしていると指摘しました。新型コロナウイルスに苦しんでいる国民の生活を保障すべきであり、全国の仲間とともに頑張っていくと述べました。
次に、沖縄一坪反戦地主会の青木初子さんからのメッセージが紹介されました。青木さんは、1947年の天皇の沖縄メッセージで沖縄は米軍が支配するとされ、1952年のサンフランシスコ条約で日本が独立すると同時に結ばれた日米安保条約により、沖縄は米軍統治下に置かれたと述べました。「沖縄の自治は神話」とされ、民主主義、人権、自己決定権が奪われてきたそうです。そして、今も日米安保条約において米軍は治外法権とされ、地位協定に守られて米兵は事件、事故を起こし、住民を危険にさらしていると指摘しました。沖縄に寄り添うと言う安倍政権の下で、沖縄は踏みにじられていると指摘しました。新型コロナウイルスにより、沖縄も自主的に緊急事態宣言を出した中で、PFOS流出事故が起こったと述べました。辺野古では、世界に例がない90メートルの軟弱地盤での工事を行なおうとしており、河野防衛大臣は沖縄県と普天間基地撤去では一致していると述べているそうです。しかし、辺野古新基地建設は2030年へずれ込んでおり、普天間基地の危険除去は破たんしていると指摘しました。しかし、政府は沖縄の民意を無視して工事を強行しようとしているそうです。これ以上基地はいらないという叫びも踏みにじられており、宮古島などの軍事要塞化も進められているそうです。引き続き支援をと呼びかけ、共に頑張っていきましょうと述べました。
続いて、ジャーナリストの堀潤さんがスピーチしました。堀さんは、YouTubeで発信する時代となり、初めて集会を聴く方もいると述べました。世界は混迷を極めており、未知のウイルスが人間の尊厳を脅かし、分断していると指摘しました。その中で、強いリーダーを求める気持ちが強くなっており、自分にもその種があると自覚し、自分自身へも恐れを感じると述べました。これまで民主的プロセスの必要性を訴えてきたのに、目の前の危機に強い決断力を求めてしまうと述べました。しかし、それでいいのかと問いかけ、今、民主主義の底力が試されていると指摘しました。この10年、戦争と貧困に向き合い、民主主義とは何かを考えさせる人々を取材してきたと述べました。今年の年末年始にスーダンを取材したそうです。スーダンでは30年続く独裁政治に抗議し、軍が独裁政権の大統領を解任し、軍事政権から民主主義への移行を目指しているところだそうです。スーダンの人は、「アラブの春から学んだ」と述べ、徹底的に平和主義を辛い抜いたそうです。スーダン市民は忍耐と信念で市民革命をやり遂げたと述べました。そして、みんなが豊かになるためには公正さが必要だと述べました。スーダンの人たちに、民主主義の先に貧しさが待っていたらどうするかと問うと、回答は様々だったそうです。経済力のある国と連帯する、たとえば中国という回答もあったそうです。民主主義には時間がかかり、忍耐強くそれを維持できるかと問いかけました。民主主義があっという間に吹き飛んでしまうのではないかという不安があり、新型コロナウイルスによって疲れ果てた社会の先が心配だが、問われているのは自分自身だと指摘しました。民主主義の対義語は、独裁や全体主義だとされているが、私は沈黙だと思うと述べました。沈黙すれば、誰かがの大きな声に従って生きていくしかなくなると指摘しました。声を上げるのは勇気のいることであり、だから勇気を振り絞って声を上げている人がいれば、駆け寄って支え合えることが民主主義の第一歩だと述べました。101歳になったジャーナリストのむのたけじ氏に、亡くなる前に取材したそうです。むのさんは太平洋戦争時に朝日新聞の記者で、大本営発表というつらい歴史があり、それを悔いて戦後は朝日新聞を辞め、故郷で新聞をつくったそうです。むのさんに「若い世代に訴えたいことは?」と問うと、「誇りを持って生きること」と述べたそうです。それは、あなたがあなたらしく生きられることだと述べました。沈黙の先にその願いは叶わず、今こそ連帯して声を上げていきましょうと呼びかけました。
次に、芸人9条の会の噺家、古今亭菊千代さんのメッセージが読み上げられました。菊千代さんは、生活に必要なものを供給してくれているみなさんに感謝を表しました。ウイルスの恐ろしさは、目に見えないこと、感染することだと述べました。平和でなければ笑ってもらえないと平和を訴えてきたが、今は落語はなんと無力なのかと感じていると述べました。お互いの息遣いを感じながら楽しむのが本物の落語だと述べました。前向きなことを考えようとしているが、この先どうなるのか想像もつかないと述べました。戦争や原発事故などは人災であり、私たちが頑張れば防げると指摘しました。いざという時に私たちを守ってくれるのが憲法だと述べました。助け合っていき、まずは無理せず、明るく、思いやりを忘れずにいようと呼びかけました。最後に、コロナとかけて、オリンピック反対の菊千代ととき、どちらもかんせん(感染、観戦)したくないと述べました。
続いて、市民連合の山口二郎さんのメッセージが読み上げられました。山口さんは、市民が憲法集会に集まれないのは残念だと述べました。国民の生命が脅かされている現実から、安倍政権は目をそらしていると指摘しました。そして、今、緊急事態条項をと言うのは恥知らずだと指摘しました。政治の力が必要だとみんなが気付いており、民主的な政府をつくることは私たちの命を守ることだと述べました。憲法は輝きを増しており、1年あまりのうちに総選挙が行なわれることになると指摘しました。それに向けて、市民と野党の協力を強化すべきだと述べました。真っ当な政治を取り戻すために頑張りましょうと呼びかけました。
続いて、全労連の小田川義和議長による行動提起が行なわれました。小田川さんは、集会を視聴している全国各地の皆さんに感謝すると述べました。新型コロナウイルスの広がりの下、集会はできず、毎年5月と11月に開いてきた憲法集会も、毎月19日の行動も、いつ再開できるのか明確には言えないと述べました。再開できるようになれば、ホームページで知らせるとのことでした。どんな状況であっても、改憲を断念させるまで行動は止めず、スタンディングや署名など、できる範囲での行動をしていこうと呼びかけました。日本の感染対策、暮らし、生業の応援は、あまりにも遅く、あまりにも規模が小さいと指摘しました。忖度政治では危機には対処できず、今だからこそ批判すべきだと指摘しました。差別と偏見という、心のウイルスとの闘いにも力を合わせようと呼びかけました。フランスのマクロン首相も、新型コロナウイルスが収束した後は経済的利益よりも人が優先される社会へ変わると述べたそうです。それは、憲法、平和的生存権を生かす道と一致すると述べました。緊急事態条項を言い出すことも、武器爆買いをもたらす9条改憲も、火事場泥棒だと強く拒否すべきだと指摘しました。手紙やSNSで、改憲発議反対署名を広げ、改憲反対が過半数の世論をさらに強めようと呼びかけました。
最後に、菱山さんが集会宣言を読み上げました。恐らく全文がホームページで紹介されると思いますが、概要をまとめます。
目に見えないウイルスのため緊急事態宣言が出されましたが、感染拡大はやんでいないと指摘しました。5月3日の憲法施行記念日に、憲法を守り、生かす決意を示し、反戦平和の市民運動の柱にし、この運動の伝統を引き継ごうと呼びかけました。安倍首相は自衛隊を憲法に書き込み、集団的自衛権容認を合憲化しようとしているが、私たちは3度にわたって改憲発議を阻止してきたと指摘しました。安倍首相に残された日程はタイトであり、筋違いの改憲正当化を行ない、火事場泥棒的に改憲をしようとしており、新型コロナウイルス対策で失策を繰り返している中、過剰な同調圧力がかけられていると指摘しました。憲法の基本理念を守り、知恵を絞り、物言わぬ市民になることを拒否しようと呼びかけました。新型コロナウイルスが収束すれば、11月3日に憲法集会を行なおうと呼びかけました。そして、政治を変えることにこそ希望があると宣言しました。
以上で報告を終わります。