まず、台風と水害の被害に遭われた皆さんにお見舞い申し上げます。
2019年は、正念場の年です。
憲法9条を中心とする憲法改悪を断念させ、沖縄の辺野古新基地建設をストップさせ、「自己責任論」を背景に進行し続ける社会保障切り下げに歯止めをかけ、特定秘密保護法・戦争法・共謀罪法などの悪法の廃止を求め、「働き方改革」一括法に含まれている毒を制し、よい部分を生かし、労働者をはじめとする99%の人たちのいのちと健康と働く権利を守るために行動し、憲法が活きる社会となることを目指し、声を上げ続けることを提起します。
12月21日、仕事の学習会がありました。概要をまとめます。
学習会のテーマは「日本国憲法は希望-ともに学び行動する仲間へ」で、講師は八王子合同法律事務所の白神優理子弁護士でした。
白神弁護士は弁護士になって6年目で、高校生の時は平和サークルに所属し、その活動の中で憲法と出会い、弁護士になる夢を持ったそうです。「憲法は国家権力を縛るもの」ということに衝撃を受けたそうです。それまでは、憲法は校則みたいなものだと思っていましたが、そうではなく、私達の自由、権利を奪ってはならないと国家権力を縛るためのものだということを知り、感動したそうです。
しかし、大学の友人にそのことを話すと、「自分たちが選んだ政治家をなぜ縛らなきゃならないの」と言われてしまったそうです。そこで、なぜ国家権力を縛らなければならないのかを考え、国家権力が暴走するとどれだけ大変なことになるかを知ることが大切だと思い至ったそうです。
白神弁護士は、研修期間を沖縄で過ごしたそうです。沖縄では、よく通行止めのお知らせが配布されるそうですが、不発弾や遺骨が見つかったときだそうです。沖縄戦では20万人近くの人が亡くなっているので、今でも遺骨が見つかることがあるそうです。
東京から20人の高校生とともに沖縄の高校生平和大州集会に参加し、文子おばぁ(島袋文子さん)の話を聴いたそうです。文子おばぁは15歳の時に沖縄戦を体験し、艦砲射撃の中を必死で逃げ、前を行く人の首が飛ぶのを目撃したそうです。ある時、夜に水たまりを見つけ、その水を飲み、家族にも飲ませましたが、翌朝になってその水たまりに死体が浮いているのを見たという体験も話してくださったそうです。そして、こんな思いを若い人にはさせたくない、命はたった一つしかないのだから、どこの国とも戦争をしてはいけない、一緒に戦争のない国をつくっていこうねとおっしゃっていたそうです。
参加した高校生たちは、半分くらいは沖縄に行きたいというだけで参加したのですが、文子おばぁの話にはみんなが身を乗り出して聴いていたそうです。
白神弁護士は高校の授業で沖縄へ行き、集団自決について学んだそうです。沖縄の人たちは「公民化教育」といって天皇のために命を捨てるように教育され、米軍につかまりそうになった自殺せよという押し付けをされていたそうです。そのため、家族同士、住民同士が殺し合う集団自決へつながってしまったそうです。沖縄戦では、県民の4人に1人が死亡したと言われていますが、艦砲射撃などで殺された人だけなく、集団自決で亡くなった人もたくさんいたそうです。さらに、若い人たちは強制的に徴兵され、2000万人もの命を奪う侵略戦争に参加させられました。
高校生の時にこうした歴史を知って衝撃を受け、国家権力は暴走し、侵略した事実があると学び、国家権力を憲法によって縛ることがいかに大切かを学んだそうです。
東京大空襲の経験談を語った証言者の方も、自分はただの被害者ではなく、戦争に賛成してしまった世代として加害者でもあると告白されたそうです。そして、戦争がなぜ起こるか、どうすれば食い止められるかを考えなければならないとおっしゃっていたそうです。
当時、戦争に反対した人は、治安維持法によって逮捕されてしまったそうです。
小学校の先生だった竹本源治さんは、戦後に「戦死せる教え児よ」という詩を書き、教え児を戦争へ送り出してしまった後悔と懺悔をつづり、「繰り返さぬぞ絶対に!」と決意したことが紹介されました。
教師だけでなく、召集令状を配った公務員など、あらゆる職業の人が戦争に加担しており、もう繰り返さないということが戦後の出発点となっているそうです。
沖縄には「命どぅ宝」という言葉があり、だまされていたことだけのせいにしてはならず、今度こそだまされないようにするためには「命どぅ宝」を失ってはならないと教えているそうです。
こうした後悔と決意が、日本国憲法の出発点だと白神弁護士は指摘しました。
そのことは、憲法前文に書かれています。前文には、「政府の行為によって、ふたたび戦争の惨禍の起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」という文章があります。
再び戦争をさせないためには、徹底的に国民が主権者になることが重要だと指摘しました。
ここで、「憲法は誰が守るものですか」というクイズが出されました。選択肢は、①首相、②国会議員、③国務大臣、④公務員、⑤天皇、⑥国民でした。①~④にはほとんどの人が手をあげ、⑤では減り、⑥ではほとんど手があがりませんでした。正解は、①~⑤で、国民には憲法を守る義務はありません。権力を持った人が国民の権利を奪いかねないので、憲法99条で憲法を守る義務があるのは国家権力を持っている人としているのです。
そうした仕組みを立憲主義ということが説明されました。立憲主義は、権力者の手足を縛るのが憲法だという考え方であり、国民は憲法を守らせる側であり、国民のために憲法があるということです。
日本国憲法の特徴は、立憲主義に一切の例外を認めないということだそうです。他国の憲法では、緊急の時は国家権力が国民の権利を制限できる「緊急事態条項」が入っていますが、日本は戦争への反省からあえて「緊急事態条項」をつくらなかったそうです。
そうしたことを、白神弁護士は高校生の時に知って感動し、「人間を信じてみよう」という気持ちになったそうです。ずっと、人間は戦争をし、過ちを繰りかえすものだと思っていたのが、人間は過ちから学んで次へ進んでいると思えたそうです。
ある被爆者の方は、学校の授業として体験を話すと真剣に聴いてくれるが、みんな暗くなってしまうということが悩みだったそうです。その悩みに対して、被爆、戦争の悲惨さを知り、こんなことを繰り返さない社会をつくるためにどうするかを考え、そのために人間がどうやって仕組みをつくってきたかを学ぶことが必要だと述べました。そして、学んだこと、意見を表現し、それを肯定してもらうことで自信につながると述べました。
ある教育学者は、「子どもたちは主権者になる前に表現者にならなくてはならない」と述べているそうです。表現したことを受け入れてもらうことが自信になり、主権者として発言できるようになることにつながるということでした。
憲法9条は、国家権力が戦争をしようとしてもできないように檻に入れるものであると述べました。韓国は、アメリカから求められてベトナム戦争に若者を送り出すことを拒否できず、約5000人が亡くなったそうです。憲法9条がある日本は、若者を戦場に送ることを拒否することができ、これが9条の力であると指摘しました。
憲法13条は、「命どぅ宝」の条文化であり、憲法の目的を定めている条文だと述べました。生命、自由、幸せになる権利が国の政治において最も大事であり、この考え方は大日本帝国憲法とは180度違うものだそうです。自民党の杉田議員の「生産性がない」発言は、国にとって役に立つかどうかで国民を差別するものであり、憲法13条違反であると指摘しました。
そして、憲法13条を実現するための手段が、憲法9条や25条であるという関係にあるそうです。
憲法25条は、いのちを守る手段として、「健康で文化的に生きる権利」を保障していると述べました。憲法25条のない世界がマイケル・ムーア監督の映画「シッコ」であり、盲腸の手術で一家が破産したり、スラム街の住民は病院に行っても追い返されたりするそうです。アメリカでは、路上で倒れている人がいても救急車を呼べず、起こして救急車を呼んでもいいか確認しなければならないそうです。もしそうしないと、救急車を呼ぶと約20万円がかかってしまうので、救急車を呼んだ人が倒れていた人から損害賠償訴訟を起こされてしまうそうです。
国家は国民のためにあるものであり、国民の自由と権利を守る義務を負っています。そうした自由と権利は、私たちが勝ち取ってきたものであるということは、憲法97条に書かれています。
このように、日本国憲法は人間の歴史が前に進んでいることを証明してくれる希望の存在なのだと述べました。
次に大事なのは、平和は現在進行形の問題だと学ぶことだそうです。
そのために、日本国憲法と日米安保条約について学ぶ必要があります。現在、米軍と自衛隊の一体化が進んでおり、常設の「日米統合司令部」が、海上自衛隊と在日米海軍については横須賀に、航空自衛隊と在日米空軍については横田に、陸上自衛隊と在日米陸軍については座間におかれているそうです。
中身の強化も行なわれており、辺野古では米軍新基地建設が進められています。辺野古の基地建設は普天間米軍基地の移転だと言われていますが、滑走路が1本から2本に増え、オスプレイが大量配備される予定であり、弾薬庫や軍港も併設された一大軍事拠点とする計画であり、住民の意思を無視して工事が進められている状況だそうです。
なぜ沖縄に米軍基地があるのかというと、沖縄が米軍の統治下におかれていた時に銃剣とブルドーザーで無理矢理基地をつくられたそうです。沖縄におかれている部隊で最も多いのは海兵隊であり、侵攻時に先頭に立ち、最も殺される可能性が高い部隊で、黒人やスラム街出身者が多いそうです。海兵隊は侵略戦争を予定していなければ必要がない部隊だそうです。
元海兵隊員のアレン・ネルソン氏はスラム街の出身で、若者が米軍に入り理由は「学費」が最も多く、次に多いのが「医療費」だと述べていたそうです。「学費」は米軍に入れば無料となるうえ、家賃も国が補助してくれ、「医療費」については家族も含めてほぼ無料で医療を受けられるそうです。しかし、海兵隊に入ると人殺しの訓練をさせられてベトナム戦争へ送られ、帰還した時にはPTSDになってしまっていたそうです。離婚し、路上生活を送るようになりますが、小学生に戦争体験を話したことをきっかけに、平和活動を行なうようになったそうです。
イラク、アフガンからの帰還兵もPTSDになっており、自殺者も出ているそうです。
アメリカのチェイニー国防長官は、「米軍が日本にいるのは、なにも日本を防衛するためではない。日本は米軍が必要とあればつねに出動できるための前方基地として使用できる。しかも、日本は米軍駐留経費の75%を負担してくれている」と述べていたそうです。
そして、アメリカが戦争をする理由は、石油などの資源が目的だと指摘しました。
日米地位協定は、ほぼ日本がアメリカの植民地であるかのような不平等な扱いとなっており、ヨーロッパの国々の地位協定とは大きく違うそうです。
しかも、アメリカは世界でたくさんの憎しみを生み出し、テロリストを生んでいると指摘しました。
日本政府は、”日本版海兵隊”の創設まで行なっているそうです。
集団的自衛権の行使を可能とする安保関連法が強行採決されましたが、これは明らかに憲法9条違反であると指摘しました。そのため、法律がつくられても、日本政府はそれを実行することはできていないそうです。だから、今狙われているのが9条改憲なのだそうです。自民党の改憲案には「必要な自衛の措置をとることを妨げず」という文言が入っており、「そのための実力組織として」、「自衛隊を保持する」ことになっているそうです。
改憲の動きにどう立ち向かうかというと、これは「1%vs99%の闘い」だと述べました。「1%」とは、超富裕層や財界などで、戦争になれば武器が売れてもうかり、日本に有利な条約や協定を押し付けることができると考え、戦争をできるようにするよう圧力をかけているそうです。「99%」とは、それ以外の、今の憲法が徹底されれば幸せになる人々だそうです。この「99%」が力を合わせ、社会をいい方向へ持っていく必要があります。オール沖縄など、立場を超えて米軍基地建設に反対、オスプレイ配備に反対するという動きは既に起こっています。
白神弁護士が沖縄にいた頃は、オスプレイの配備が決まり、沖縄の人々は落ち込んでいたそうです。しかし、1年後、翁長さんが知事に立候補し、新基地反対を公約として当選しました。
6年前、2つに分かれていた憲法集会が統一されたそうです。そのことによって、それまでは5000人ずつくらいだった参加者が3万人へ増え、その後も増え続け、2019年には6万5,000人となったそうです。
憲法を守る運動の統一は、野党の政治家に手をつながせることとなり、野党統一候補が立てられ、今回の参議院選挙では改憲派の議席を3分の2割れにすることができました。
声をあげることで輪が大きくなっており、どんどん命、権利、幸せが勝ち取られていくという状況にあります。憲法を守り、生かす取り組みを広げていくことが提起されました。
以上で報告を終わります。