経済的困難による受診困難 昨年、77の死亡事例(しんぶん赤旗より) | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2019年は、正念場の年です。

憲法9条を中心とする憲法改悪を断念させ、沖縄の辺野古新基地建設をストップさせ、「自己責任論」を背景に進行し続ける社会保障切り下げに歯止めをかけ、特定秘密保護法・戦争法・共謀罪法などの悪法の廃止を求め、「働き方改革」一括法に含まれている毒を制し、よい部分を生かし、労働者をはじめとする99%の人たちのいのちと健康と働く権利を守るために行動し、憲法が活きる社会となることを目指し、声を上げ続けることを提起します。

 

 

全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)は、3月6日に記者会見を行ない、2018年に経済的利用によって治療が手遅れになって死亡した事例が77事例あったことを発表しました。

記者会見には複数のメディアが来ていたはずですが、検索してみてもヒットしたのはしんぶん赤旗の記事だけでした。

 

 

この記事もぜひ読んでいただきたいのですが、仕事関係で入手したより詳しい資料が手元にありますので、この調査の概要をご紹介したいと思います。

まず、調査規模についてですが、全日本民医連加盟事業所は病院142、有床診療所14、無床診療所480、計636事業所なので、日本中の医療機関の中ではほんの一握りです。つまり、この77事例は氷山の一角だと考えてください。ただ、北は北海道から南は沖縄まで、全国26都道府県から集められたものです。

対象は、国保料などの滞納などにより、無保険、もしくは資格証明書、短期保険証発行に至り、治療が遅れたためにより病状が悪化し、死亡したと考えられる事例、正規保険証を持っていながらも、経済的事由により治療が遅れたために死亡に至ったと考えられる事例です。

この調査は2005年から行なわれており、これまでのピークは2010年の71件でしたが、2018年は77件で最多となりました。

男女比は、男性77%、女性23%で、年齢層は60代が42.3%が最多で、60~70代で7割を占めています。20代、30代も1事例ずつ報告がありました。世帯構成は、独居が最も多く、54.5%でした。住居は借家・アパートが最も多く、50.6%でした。雇用形態は無職が最も多く、36%、非正規雇用が23%でした。受診前の保険種別は、無保険が最も多く28.6%、次に多いのが国保で27.3%でした。

また、全日本民医連の加盟事業所が多く実施している無料低額診療事業の利用につながったのは、77件中34件、44.2%でした。受診後の相談で利用につながった事例が多かったそうです。

自覚症状の出現や健診での異常指摘から受診に至るまでの期間は、1ヶ月以内が15件あったものの、1年を超す事例も12件ありました。治療期間は、1ヶ月以内に亡くなった事例が21件、不明が15件でした。死亡原因は最も多いのががんで、57件、74%でした。

 

経年的な変化を見ると、調査を始めたばかりの時期の事例は無保険、短期保険証、資格証明書など、正規の保険証がない状況のケースが多かったのですが、最近は正規の健康保険証を持っていたり、生活保護を利用していたり、従来は受診を控えることはないと思われていた状況にある事例が増えてきています。2005年は後者の事例は5件、第一のピークの2010年でも29件だったのが、2018年は39件です。調査を重ねるごとに年々意識が高まり、事例に対する注意力が増したのかもしれませんが、経済的困難が広がり、正規の保険証があっても窓口負担金を支払う余裕がない人が増えたのかもしれません。また、生活保護の事例は2件だけですが、医療費は医療扶助として支払われるのに受診を控えたということは、背景に生活保護バッシングがあるのではないかと気になります。

 

全体的に見て、男女比や年齢層、死亡原因などに一定の傾向はあるものの、雇用形態や受診前の保険種別、受診抑制の期間や治療期間などはバラバラで、今は典型的な困窮状態というものはなく、様々な状況下で、ほんの少しつまずくと困難に陥ってしまう社会になっているのではないかと思います。