2018はたらく女性の埼玉集会 全体会 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、西日本豪雨災害の被害者の皆さま、台風21号の被害者の皆さま、北海道胆振東部地震の被害者の皆さまにお見舞いを申し上げます。

そして、8月8日に逝去された翁長雄志沖縄県知事に哀悼の意を示すとともに、辺野古新基地建設阻止と沖縄県民の幸せのために力を尽くされたことに敬意を表します。合わせて、翁長知事の遺志を継ぐ玉城デニー知事の誕生をお慶び申し上げます。

 

2018年は、特定秘密保護法・戦争法・共謀罪法を早急に廃止することを求め、沖縄をはじめとする全国での基地強化・日米軍事一体化の策動を許さず、医療・介護・生活保護など、社会保障を切り捨てる政策に反対し、労働者をはじめとする99%の人たちのいのちと生活と働く権利を守るために行動し、9条を中心とする憲法改悪を阻止し、あらゆる分野で憲法が活きる社会となることを目指し、声を上げ続けることを提起します。

 

 

11月23日、「2018はたらく女性の埼玉集会」に参加してきました。以下、全体会の概要をまとめます。

 

午前中の全体会は、今年はパネルディスカッションを行ないました。パネリストは、全労連女性部長の長尾ゆりさん、弁護士の小内克浩さん、精神科医の雪田慎二さんでした。

まず、長尾さんが労働組合の立場から発言しました。

今年のはたらく女性の中央集会には650人が参加し、全国各地でも地方の集会が開催されているそうです。

女性労働者の現状は、まず、賃金が低いという問題があります。長尾さんは大阪で教員をしていたそうですが、橋下知事になった競争が強化されてしまったそうです。差別賃金を許さない闘いも行なってきて、賃金を公表するように求めてきたそうです。女性の賃金は現在も寝たきりであり、男性も50歳代になると上がらなくなってきましたが、国税省の調査では女性の賃金は男性の約半分だそうです。そして、女性の半分がワーキングプアなのだそうです。ジェンダーギャップ指数は、日本は144ヵ国中114位であり、健康分野では1位なのに、経済分野では賃金格差によって、政治分野では女性議員比率や女性閣僚比率によって低い順位になってしまうそうです。女性は経済的理由で自立ができないのです。

役職者に占める女性の割合も低くなっています。それは、転勤ができない、長時間残業ができないといった理由から総合職を選べないからだそうです。そのため、正社員で比べても、女性の賃金は男性の7割なのだそうです。

第一子出産を契機に離職する女性の割合は、現在は5割となっているそうです。再就職は非正規であることが多く、女性の55.9%は非正規雇用だそうです。女性の非正規労働者の賃金は男性正規職員の3割しかないそうです。

そして、女性の多い職種は低賃金であり、それが女性の貧困、子どもの貧困、女性の低年金の原因となっていることが指摘されました。

世界経済フォーラムの予想では、日本が女性の賃金を男性並みにしたら、約35億円のGDPアップになり、女性の賃上げが経済成長につながると指摘しているそうです。

長時間労働については、若い女性の過労死が社会問題になっています。働き方改革一括法審議の際、過労死遺族が安倍首相に15分の面会を求めましたが、拒否されました。非正規労働者の50.5%が残業しているそうです。なぜかというと、自らの責任で期日までにやらなければならない仕事があり、人手不足だからだそうです。年次有給休暇も取れていないそうです。

政府は人手不足から外国人労働者を増やそうとしていますが、外国人技能実習生は最低賃金以下で、劣悪な環境で働かされています。

労働条件をよくし、賃金をあげ、労働時間を適正にすれば、人は集まるはずだと指摘しました。

また、女性には重い家事、育児、介護の負担があり、それは男女役割分担意識によるものだと指摘されました。家事時間の平均は、男性が46分、女性が4時間54分であり、日本の女性は世界で一番睡眠時間が短いそうです。夫が育児休業を取得した割合は、全労連調査で5.8%だそうです。

全労連女性部調査では、4人に1人が流産経験があるそうです。女性の権利を勝ち取ってきましたが、それが使えない現場になっていると指摘しました。使われない権利は消えていってしまうかもしれません。マタハラも増加しているそうです。労働相談のトップはハラスメント、いじめで、成績主義で追い立てられている中で起こっているそうです。

女性労働者の要求は、人員増と賃金引き上げであり、それはどの職場でも正当な要求だと述べました。

CEDAW勧告では、同一価値労働同一賃金原則の実施、家族的責任により女性にパートタイマーに偏るので、両親休暇の導入や十分な保育施設を提供すること、セクハラの禁止と制裁の法定化、労働監督の強化、ジェンダー統計の作成などが求められているそうです。私たちの要求はわがままではなく、世界標準のなのだということが指摘されました。日本政府は都合の悪い数字は隠しており、「女性の活躍推進法」はスローガンだけなので、国連が知りたい実態は、労働組合が伝えているそうです。23人の委員が聴き取りを行なったそうです。

麻生大臣は「セクハラ罪はない」と言いましたが、だからと言って容認はできず、今が法定化のチャンスであり、連合、全労連、自由法曹団、労働弁護団が一緒になって要求しているそうです。

ではどうするのかというと、声を上げるべきだということが提起されました。新聞労連の女性アピールは、「セクハラを我慢するのはもうやめよう」と呼びかけており、政府が加害者を擁護したことに対して、声を上げた彼女を一人にしないためにまとめたものだそうです。ベテランの女性記者は、「私たちが我慢してきたことで、若い女性たちが苦しんでいる。今こそ声を上げるべき時」と述べたそうです。

セクハラ問題は今がチャンスであり、憲法を力にして、大きく日本を変えようと呼びかけました。

 

次に、小内弁護士が発言しました。小内弁護士は、労働事件を多く担当してきたそうです。大学生の時にホワイトカラー・エグゼンプションが提案され、2008年末に年越し派遣村があり、今年は「働き方改革一括法」として成立してしまいました。「働き方改革一括法」は、残業代ゼロと、一見労働者のメリットになりそうなことをセットにしています。労働者にとってプラウマイナスが混在しており、しかも、13の法案を一括提案したものです。そこで、警戒すべきもの、活用できるもの、今後要注意なものに分けて解説すると述べました。

警戒すべきものの第一は、「高度プロフェッショナル制度」です。これは、労働時間規制を適用除外とするもので、残業代もゼロになります。対象者は、高度の専門知識を有し、従事した時間と成果との関連性が通常高くない労働者とされましたが、現在省令での具体化を議論しており、アナリスト、コンサルタントなど、あいまいな職種が出されており、注視する必要があるとのことでした。対象者の収入は平均給与額の3倍とされていますが、これも具体化は省令でということになっています。

残業時間の上限規制は、1日8時間が大前提のはずであり、それに例外がたくさん重ねられてしまっていることが指摘されました。一つ目のラインは36協定で月45時間以内であり、二つ目のラインは忙しい月の例外で、2〜6ヶ月の平均が80時間以内であり、三つ目のラインが極めて忙しい月は100時間未満とするものです。しかも、一つ目と二つ目のラインは休日労働は対象外であり、年最大960時間の時間外労働が可能になる規制です。

脳・心疾患での過労死は、時間外労働が月80〜100時間で最も多いそうです。法律で時間外労働の上限を決めたのは戦後初めてであり、一歩前進という見方もありますが、この規制をもっと強化すべきだということが指摘されました。

年5日の年次有給休暇の義務化は、Aさんが1年目に10日有給休暇が付与され、2日使った場合、8日を繰り越すことができ、2年目は11日が付与され、合計19日使うことができましたが、これからは1年目に5日以上取得することが義務化されたということです。原則は、労働者が希望したとおりに休ませなければなりません。しかし、多くの相談は「有給休暇を取りたいと言えない」というものであり、忙しい、人が足りないなどが理由だそうです。まずは権利だから行使しましょうというアドバイスしかできませんでしたが、「そうは言ってもみんな取れていないし……」と言われてしまうことが多かったそうです。これからは、「年5日取得させるのが会社の義務です」と言うことができると指摘しました。

今後狙われているものは、まず、裁量労働制の拡大であり、経団連は全く諦めていないそうです。裁量労働制の本質は、仕事の量は労働者にはコントロールできず、仕事の進行方法には裁量があるが、仕事が終わっても新たな仕事を頼まれ、帰れなくなることだそうです。長時間残業がまん延します。裁量労働制については、2種類の業務を追加しようとしているそうですが、わかりにくい条項で、会社が拡大解釈してしまうということが指摘されました。

労働時間把握の義務化については、タイムカード等の客観的な方法で労働時間を把握するようになり、残業代の請求が容易になり、労災申請も増加するだろうと述べました。

正規と非正規の待遇差の説明義務化については、不合理な格差は法律で禁止すべきであり、判例も増えていると述べました。ハードルは、労働者型が格差の不合理な理由を説明しなければならないとされていたことだが、説明義務化で格差解消すべきだと述べました。

 

最後に、雪田医師が発言しました。雪田先生は、今困っている問題にチェックを入れてほしいと、長時間労働や成果主義賃金などの選択肢をあげました。そして、自分の変化に気付いていますかと尋ねました。ストレスがたまると体に不調が起こり、放っておくと大変なことになると指摘しました。例えば、雪田先生はストレスがたまると口内炎ができるので、それでセルフモニタリングを行なっているそうです。慢性疲労がたまると身体症状が生じ、それが黄色信号であり、ここで引き返すことが重要だそうです。引き返せないとうつ状態になり、それはもう赤信号で、ここまでくると快復に時間がかかるそうです。そして、そうなったら迷わず精神科へ行くことが呼びかけられました。生活、働き方を見直すことは、自分を守ることであり、自分を守るのは、労働組合や法律もありますが、やはり自分だと指摘しました。

スピリチュアルペインという概念があり、心の中に生じる痛み、自分の存在意義の揺らぎを指すそうです。自分を支えるものは、自律存在、関係存在、時間存在としての自分であり、自律存在が揺らぐと自分のことができなくなり、関係存在が揺らぐと大切な人間関係を失うことになり、時間存在が揺らぐと未来に展望が持てなくなるそうです。

あるモーレツ社員の40代男性は、営業成績抜群でしたが、うつ病になり、すぐ復帰しようとするが失敗してしまい、そのことによって家族や同僚のことを考えていなかったことに気付いたそうです。つまずいた時こそ自分を振り返ることが必要であり、自分は何かを大切にしていくかを考えることが勧められました。そして、それまでとは少し違った自分になって戻ることができたそうです。これを「成長モデル」というそうです。

実際に具合が悪くなったらどうするかについては、黄色信号の段階では仕事をしながら、仕事や生活を振り返り、打開策を立てて考えるべきであり、孤立が一番危険がと述べました。そして、原因が2つ以上ある場合は、一つに絞って対策するべきだと述べました。赤信号になったら迷わず自信すべきであり、早く対処しないと戻りにくくなると指摘しました。一定の自宅療養が必要であり、前半は休みに専念し、後半は復帰に向けて努力すると述べました。

回復の仕方は、まずは不安感が軽くなり、身体症状が軽くなり、意欲が戻り、集中力が戻るという経緯になると指摘しました。五感、季節感が戻ってくるのがサインであり、意欲だけで無理をしてはいけないと述べました。自分の感じる回復と実際の回復には乖離があると指摘しました。そして、復職直後は笑わないことを勧めているそうです。笑っていると完全によくなったと誤解させてしまうからだそうです。

何に取り組むかということについては、精神障害者患者さんのスローガン「ひとりぼっちをなくそう」があげられました。孤立していると不安になってしまうので危ないと指摘され、つながろうと呼びかけているそうです。一人一人に焦点をあてた活動が大事だそうです。長時間労働、過重労働にプラスアルファがあると心が壊れてしまうのですが、プラスアルファはハラスメントであることが多いそうです。ハラスメントは、人として扱われない人間関係の歪みから生じるものであり、LGBT差別など、レッテルを貼って十把一絡げにし、一人一人を見ないものだと指摘しました。そうしたものとは闘っていかなければならないと述べました。格差も大きなストレスだそうです。

企業価値とは何かというと、経営者にとっては社会にどれだけ貢献できるかということであり、働きやすい職場をつくることもその一つだと指摘しました。精神科病院の提言運動では、労使交渉の中で「こうすればよくなる」との提言を行なっているそうです。

いのち、雇用、平和を守るために、そして子どもたちの未来を守るために、同じ間違いを繰り返さないようにしようと述べました。

 

ここで休憩に入り、その間に出された質問用紙に基いて質疑応答が行なわれました。

まず、雪田先生には、復職プログラムの問題について、県のプログラムは過重ではないかとの質問がされました。雪田先生は、多くの企業が復職プログラムを持つようになったが、適切なものも問題のあるものもあると述べました。教員は一人の負担が重いので、ゆったりしたプログラムにすべきだと指摘しました。「リワークプログラム」という復職準備プログラムも始まっているそうです。もう一つ、同僚が復職した時にどのように接すればいいかとの質問に対しては、産業医面接や上司面接があるので、その際に使えることをアドバイスすべきであり、復職した人を孤立させない声かけが必要であり、はれ物に触るような対応はしない方がいいと述べました。

小内弁護士には、まず、労働契約法20条は、無期転換すると使えなくなるのかとの質問がありました。無期転換は、労働者の側から申し出る制度であり、労働弁護団の中でも議論しているそうですが、それを使ったからと言って格差解消ができなくなるのはおかしく、無期転換前からあった不合理な格差が無期になったからと言って解消される訳ではなく、転換の際に格差を是正すべきだと述べました。年次有給休暇を指定されることは疑問だとの声に対しては、労働者が選んで5日以上取得していれば指定されることはなく、基準日が迫っても5日休めない場合に指定されると説明しました。固定残業代の明示義務については、何時間か明示しないと固定残業代は無効になるそうです。契約書や就業規則に明示されていない場合、指摘はせずに、残業代を請求する際に、明示していないから固定残業代は無効だと指摘すべきだと述べました。会計年度任用職員制度については、非正規公務員が増える恐れがあり、法律上、その会計年度のみ存在する仕事とされているので、年度が終わった後の雇用継続の期待が認められにくくなると述べました。36協定の交渉は組合によって違うが、毎月行なうのは多いと思うと述べました。外国人労働者の増加については、見えづらいけれど増えており、いかにコミュニケーションをとって組織化していくかが課題だと述べました。

長尾さんに対しては、女性はもっと権利意識を持つべきだとの意見が寄せられました。日本の男性は世界一家事時間が短く、男女の役割分担意識を利用してきた日本では、男性は長時間労働をする企業戦士で、女性は男性を支えるという戦争中の発想であり、それで女性の地位、賃金を低く抑えてきたと述べました。戦争を行なう発想で経済活動をしようとしていると指摘しました。長崎県では、女性の県議会議員が自民党も含めて「3人以上産め」発言に抗議し、自民党県議会議員がバッシングを受けたそうです。憲法24条を変えようとしているのが自民党改憲案だと指摘しました。女性の非正規労働者は扶養されている人も含まれるのではないかとの質問に対しては、扶養されている人も含むが、その人がそれでいいと思っているかはわからず、自立したいと思っているかもしれないと述べました。そして、賃金は一人一人が生きていくことを前提に考えなくてはならないと述べました。最低賃金は統一すべきではないかとの意見に対しては、その通りであり、全労連も各県で最低生計費調査を行ない、どこで暮らしても最低生計費は同じくらいであり、生きていける最低生計費を考えるべきだと述べました。最低生計費は、月次では23万円、時給では1490円くらいだそうです。両親休暇とは何かとの質問に対しては、ヨーロッパと比べて日本は労働時間が長く、子の看護休暇は5日間、2人なら10日間ですが、両親休暇は学校行事などでも休める休暇で、両親一緒に子育てし、地域で子どもを育てていくことにつながると答えました。

金融機関で総合職で働き、学童や労組活動もやっている方は、学童の待遇が悪く、どんどん辞めてしまい、未払い残業もあるため、夜眠れなくなり、健康診断に引っ掛かってしまったと述べました。産業医に、会社に伝えてもいいかと言われたが、不利益を受けるのではないかと質問しました。雪田先生が答えて、率直に言って、現状では企業によると述べました。不利益対応をする企業もあり、どのような事業主なのか見極める必要があると指摘しました。産業医は中立だが、労働者の健康を第一に考えることが原則であり、慎重な対応をするべきだと述べました。

 

続いて、まとめ発言が行なわれました。

雪田先生は、自分自身を振り返ることを時々するべきであり、参考になる本も出ていると述べました。医療現場でもいろいろな問題があり、介護現場には外国人労働者も入ってきていると述べました。そうした事態の原因は処遇の悪さであり、介護現場の抜本的改善が必要だと指摘しました。医師の働き方も問題であり、医局員が無償で働いていて、土日のアルバイトで生活しているそうです。救急の現場では昼も夜も働き、36時間労働が当たり前になっているそうです。若い医者が救急を支えており、そうしないと救急が維持できないと述べました。医師を増やして働き方を変えていかなければならないと指摘しました。

小内弁護士は、労働者は厳しい立場だが、今の法律でも闘い方はあると述べました。希望を失わずに、積極的に取り組んでほしいと述べました。高校や大学などでワークルール教育を行なっており、高校生や大学生は強い関心を持っていると述べました。わかりやすく伝えていけば広く関心が持たれ、最近は若い人も街宣のチラシを受け取るようになったそうです。継続することで一定の理解が得られると述べました。

長尾さんは、「ひとりぼっちをなくそう」が今一番求められていることだと述べました。KKR病院の看護師の過労自死で和解が成立した際、遺族は「誰かひとりでも話を聴いてくれる人がいれば死ななくて済んだのではないか。組合を強くしてください」と述べたそうです。一人の要求がみんなの要求であり、一人を救うことがみんなが働ける条件をつくっていくことにつながると指摘しました。改めて自分の組合役員としての役割を考えていきたいと述べ、話し合う場、語り合える場が大切だと実感したと述べました。使える法律も勉強できたと述べました。

 

以上で全体会の報告を終わります。