埼玉女性の市民連合学習会「安保関連法で自衛隊はどう変わったのか」 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、「8時間働いたら帰る、暮らせるワークルールをつくろう」の署名へのご協力をお願い致します。

 

https://www.change.org/p/8%E6%99%82%E9%96%93%E5%83%8D%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%89%E5%B8%B0%E3%82%8B-%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%9B%E3%82%8B%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8D%E3%81%86

 

 

そして、特定秘密保護法・戦争法・共謀罪法を早急に廃止することを求め、沖縄をはじめとする全国での基地強化・日米軍事一体化の策動を許さず、医療・介護・生活保護など、社会保障を切り捨てる政策に反対し、労働者をはじめとする99%の人たちのいのちと生活と働く権利を守るために行動し、9条を中心とする憲法改悪を阻止し、あらゆる分野で憲法が活きる社会となることを目指し、声を上げ続けることを提起します

 

 

働き方改革一括法案関連の取り組みでまとめが遅くなってしまいましたが、5月22日、埼玉女性の市民連合主催の学習会「安保関連法で自衛隊はどう変わったのか」に参加してきました。講師はジャーナリストの布施祐仁さんでした。以下、その概要をまとめます。

 

まず、布施さんは加計問題を取り上げ、安倍首相は獣医学部新設について「一切聞いたことがない」と言っていたが、3年前に説明を受けたことが愛媛県の公文書でわかったと指摘しました。しかし、安倍首相は今朝(5月22日)「会っていない」と主張し、またそこから始めるのかと思ったでしょうと述べました。

自衛隊の日報問題も同じで、2016年7月に南スーダンのジュバで大規模戦闘があったことについて、日本政府は「戦闘ではない」と主張し、自衛隊に駆け付け警護の任務を付与しましたが、世界中ではジュバで内戦が起こっていると報道され、国連のレポートもそうなっていたそうです。布施さんはおかしいと思い、情報公開請求を行なったそうですが、防衛省は日報は破棄したと回答し、不服審査請求をすると、上司が部下に隠ぺいするよう指示したことが判明し、担当者が処分され、事務次官が辞任したそうです。この問題について、稲田元防衛相が関与したかが焦点でしたが、手書きメモで稲田元防衛相が日報の存在の報告を受けていたことが判明し、「いつまでこの件を黙っておくのか……」と言っていたとの記載もあり、国会で虚偽答弁と行なったと指摘されたそうです。しかし、稲田元防衛相は最後まで「知らなかった」と言い続け、監督責任ということで辞任したそうです。稲田元防衛相は辞めただけえらいと述べました。

物的評価は強いが、安倍首相は公文書が出てきたのに居直っており、早く辞めていただきたいと述べました。

改憲についての安倍首相の発言は、「自衛隊を書き込むだけ」、「書いても何も変わらない」というものですが、本当にそうでしょうかと問いかけました。

「自衛隊は変わらない」と言うが、いつの時点での自衛隊なのかという問題を指摘しました。そして、自衛隊は急速に変わっており、2015年には安保関連法が成立していることを指摘しました。

昨年来の北朝鮮への対応について、アメリカの圧力は経済制裁と軍事的圧力の両方を選択肢に持つというものであり、自衛隊がそれに協力することが求められています。昨年11月、日本海において日米共同訓練が行なわれたそうです。その訓練には、アメリカの空母3隻が参加し、海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦も参加したそうです。米軍戦略爆撃機を航空自衛隊の戦闘機が護衛するということも行なわれたそうです。この米軍戦略爆撃機は、大量の爆弾を詰め、核兵器も搭載可能だそうです。グアムに配備されていますが、北朝鮮への威嚇のために北朝鮮に接近し、その後、韓国で空爆訓練を行なったことが、数ヶ月後に報道で判明したそうです。

安保関連法により、こうした平時の米軍護衛が可能になりましたが、場合によっては偶発的戦闘が起こりうるということが指摘されました。安保関連法により、自衛隊も参戦が可能になっており、米軍は撃たれそうなら撃てというのが基準であり、自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクは高まっているということでした。

2018年3月、日本版海兵隊もつくられたそうです。海兵隊とは「殴り込み部隊」であり、国外へ攻撃する専門部隊で、防衛任務はないそうです。沖縄の海兵隊は英語では遠征部隊を意味するExpenditionaly Forceですが、日本政府は「機動展開部隊」と言い換えているそうです。日本版海兵隊はアメリカの海兵隊と一緒に訓練を行ない、水陸両用車で上陸し、町を想定した施設での戦闘訓練も行なったそうです。

日本政府は日本版海兵隊を何のためにつくったかというと、「島しょ防衛」のためであり、尖閣諸島を占領された時に奪還することを想定しているということですが、アメリカとの訓練のポスターには世界地図がデザインされており、閉会式でもアメリカ側の高官が「世界を平和にする」とあいさつしていたそうです。この日本版海兵隊は沖縄にも配備する予定であり、アメリカ海兵隊と一緒に行動することになるそうです。

空母の保有も進められているそうです。日本海での日米合同訓練に参加した「ヘリ搭載型護衛艦」とは小さい空母であり、つくった時から空母にすることを想定されていて、ちょっと改良すれば戦闘機も搭載できるようになっているそうです。空母とは、遠くへ行くために必要であり、歴代の政府は憲法上持てないと言ってきましたが、現在の政府は「防衛型空母を持つ」と言っているそうです。言葉さえ言い換えれば何でもありになっており、米軍の戦闘機も使えるようにし、一体化が進んでいるとのことでした。

また、頭の部分も一体化が進んでいるそうです。つまり、司令部の一体化です。この3月を節目に、陸上総隊が朝霞に置かれたそうです。これまでの陸上自衛隊は、北部、東北、東部、中部、西部に分かれて運営されていましたが、それらを一つにし、一人の司令官が一元的に動かせるようにしたそうです。5つに分けられていたのは軍国主義化の反省からだったそうです。司令部は在日米軍司令部がある座間に置かれ、日米共同部となっているそうです。航空自衛隊は横田、海上自衛隊は横須賀に司令部が置かれ、陸海空全てで一体化が行なわれているそうです。

2015年11月に、常設の日米統合司令部である「共同運用調整所」も置かれているそうです。

こうした動きは、2015年4月の日米ガイドラインにより、安保関連法ができる前に日米で合意されており、この具体化のためにつくられた法律が安保関連法だということでした。

日米ガイドラインの特徴は「シームレス」、切れ目なくということであり、日米が完全に、有事だけでなく平時も一体化し、活動範囲もアジア・太平洋地域からグローバル、全世界に拡大されたそうです。

PKOの任務も拡大し、「駆けつけ警護」が可能になり、それによって武装勢力と戦闘になる可能性が生じているそうです。政府は「衝突」と言い換えていますが、南スーダンで戦闘が起こっていないと言っているのは、日本と南スーダンだけだそうです。南スーダンは他国から介入されたくないため、戦闘ではないと主張しているそうです。また、治安維持活動も可能になりましたが、南スーダンでは実施されなかったそうです。派遣要件も緩和され、以前は「非戦闘地域」に派遣するとしていましたが、「現に戦闘が起こっていない地域」なら派遣できるようになったそうです。日本政府は実際に戦闘が始まったら活動を止めて引き上げるとしていますが、それは戦闘の実際にかい離していると指摘されました。実際は反撃しなければ逃げられないということでした。

安倍首相が言う改憲は、そういう自衛隊を憲法に書き込むということであり、それを憲法で追認することでもあると指摘されました。自衛隊の任務はなし崩し的に拡大し、集団的自衛権の行使につながる恐れもあります。

そもそも自衛隊とは何かという問題が提起されました。

2018年3月発表の最新の内閣府世論調査によると、自衛隊に何を期待するかという質問に対して8割が「災害派遣」と回答しているそうです。「海外派遣」は3割以下だったということでした。

しかし、安倍政権が憲法に書き込もうとしているのは、北朝鮮に圧力をかける自衛隊であり、佐藤副大臣は「北朝鮮にもっと軍事的圧力をかけるべきだ」と主張しているそうです。

アメリカはそもそもそのために自衛隊をつくったということが指摘されました。

1950年に自衛隊の前身である警察予備隊がつくられましたが、1950年8月の総合参謀本部議長から国防長官へ送られたアメリカの公文書に、「軍事的空白というのは以上で、ごく短期間のものである。アメリカは中立、非武装の日本に存在している真空状態を埋めることをいつまでも続ける立場にない。反対に、世界戦争が起きた時、アメリカが日本の戦力を活用できることがアメリカの戦略にとって極めて重要であり、おそらくは世界戦争で最終的によい結果をもたらすことになろう」と書かれており、「日本は効果的な自衛力を持つために、実質的に適切な再武装をさせる必要がある」、「アメリカが日本に対してとる措置は、すべて再武装した友好国・日本に向けた暫定的措置であるべきである」、「世界戦争に際しては、日本の戦力がアメリカにとって利用できるものであるべきである」とされているそうです。これがアメリカの本音であり、アメリカの世界戦略のために活用しようとしてつくられたのが自衛隊であると指摘されました。

このアメリカの構想の障害となったのが、憲法9条とそれを変えさせない日本国民であるということが指摘されました。憲法9条がある限り、日本国外で自衛隊は使えず、そのため、アメリカは憲法9条を変えろと言ってきたそうです。その障害を取り払ったのが安倍政権であり、2015年の安保関連法成立だということが指摘されました。

安保法制前も、アメリカの戦略に利用されてきたのが自衛隊だそうです、NHKの「日本の諜報」という番組によると、ソ連の戦闘機が大韓航空機を撃墜した際、日本の情報部が集めた情報が自動的にアメリカへ、防衛相も知らないうちに送られたそうです。つまり、日本に肩代わりをさせているということです。それを更に進めたのが安保法制であり、対等の一体化ではなく、米軍の下に自衛隊が組み込まれる一体化だということが指摘されました。そんな自衛隊を憲法に書き込むのが安倍政権が行なおうとしている改憲です。

2017年3月に自衛隊は南スーダンから撤収しましたが、表向きは道路工事等が終わったからだとされていましたが、本音は自衛官が死ねば政権が飛ぶかもしれないからであり、長期先見を見据えてリスクを取り除いたということだと指摘されました。

海外派遣時の教育として、これは政治的判断に基づく国家としての活動であり、国際世論は死亡者が出ることを許容できないので、1名の犠牲者も出さずに任務を完了することが求められると教えるそうです。

しかし、安保法制懇のメンバーである防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏は、死者が出る事態にも耐える必要があると主張しているそうです。「自衛隊が海外での平和維持活動で犠牲者ゼロというのは、僥倖に近い。そういう状態の持続を期待するのは、根本的に誤っていると言うべきであろう」と述べているそうです。

どんな法律をつくっても、国民世論が海外で自衛官が死ぬことを許容するようにならなければ実現できないのですが、たまたま死者が出なかったから「もっと行け」と言っているのが安倍政権だということが指摘されました。そして、教育で子どもたちに死を許容することを植え付けようとしているのが道徳教育だということが指摘されました。

自衛隊内部のポスターでは、隊員たちに自衛官が足りなくて国を守れなくなるから、友人や弟など、身近な若者を誘えと促しているそうです。自衛隊は募集人員に満たなくなっており、その最大の原因は少子化で、若者人口が100万人から40万人に減っていることと、安保法制によって危険が現実になったからで、母親に泊められて進路変更したという声をよく聞くそうです。

人事教育局長は、外地で米兵を守るために殺されれば、自衛隊員の離隊が続出し、志願者が激減するだろうと述べているそうです。自衛隊への入隊の動機は、海外任務にはほとんどなく、災害派遣などだそうです。

多くの人へ、今の政権がつくろうとしている自衛隊を知らせることが重要であり、現在は「災害派遣の自衛隊」という一般のイメージとギャップがあるということが指摘されました。

しかし、安倍政権が変わっても、アメリカとの関係が変わらなければ変わらないということも指摘されました。

 

続いて、質疑応答が行なわれました。

ミサイル防衛はどうなっているかという質問に対しては、鹿児島から与那国島まで、ミサイル部隊を中心に自衛隊の配備が進んでいるが、本当の目的は中国ではないということが説明されました。アメリカと中国が戦争になった時、アメリカの空母を派遣しやすくするため、中国の軍艦が太平洋に出るのを遮断する役割があるそうです。冷戦時はソ連に対して同じことをしていたそうです。アメリカだけでやるとお金がかかるので、日本にやらせようとしているとのことでした。もし、アメリカと中国が戦争になれば、戦場になるのは沖縄と周辺の島々であり、緩衝国家は戦争になったらどうするかではなく、戦争にさせないことを考えなければならないということが指摘されました。現在、アメリカと中国の間で戦争になるはずがなく、日本はそんなことにお金を使っていられないということも指摘されました。

安保法制ができたことで災害救助のランクが下がるのではないかという質問に対しては、法律上のことではなく、アメリカとの一体化のためにお金を使わされることになると、防衛予算には限りがあるので、災害に予算が使えなくなるということが指摘されました。自衛隊には兵站の概念がなく、高度な武器ばかりを買うので燃料不足で訓練が足りず、事故が起きているそうです。

経済的徴兵制の危険があるのではないかという質問に対しては、アメリカは経済的徴兵制が行なわれていると述べました。アメリカは、ずっと軍隊があり、死ねば英雄、生きて帰ってくればパレードという国だが、どんどん隊員が死ぬので集まらなくなり、奨学金を充実させ、本人だけでなく、子ども、家族にも出すようになっているそうです。最終的に、リーマンショックで仕事がなくなり、軍隊に入る人が増えたそうです。日本でも格差が広がり、セーフティネットが削られていることが指摘されました。先週、佐藤外務副大臣が、「隊員の待遇改善を検討」とつぶやいていたそうです。アメリカと違うのは、海外での戦争に行くことの意識だということが指摘されました。

アメリカは全世界から軍隊を引き揚げようとしているが、日米一体化でアメリカの肩代わりをし、出先機関となってしまうのではないかという質問に対しては、アメリカは財政面で厳しい状況で、軍事費をカットしており、覇権維持のためには同盟国のお金と人の肩代わりしかなく、最も期待されているのが日本だと答えました。アメリカでも海外での死には批判があり、民間軍事会社への肩代わりも行なわれているそうです。9条と国民世論が歯止めでしたが、安保法制で崩されており、アメリカから協力を求められたとき、断る理由がなくなっていっているということが指摘されました。シリアへのミサイル攻撃について、北朝鮮へのメッセージになるからと支持していましたが、こうした意識から脱却する必要があるということが指摘されました。

中国の進出にどうすればいいかという質問に対しては、中国の戦略はわからない、だから不安になるが、中国は大国だが、日本の立場としては米中が戦争をしないためにどうすればいいか考えなければ破綻すると答えました。常識的には米中が戦争することはないが、偶発的戦闘が起こった時に止めるために、日本がどうするかを考える必要があるということが指摘されました。

 

以上で報告を終わります。