平成28年度過労死等防止対策推進シンポジウム 後半 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、熊本、大分を中心とした地震の被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げます。

合わせて、避難不可能な状況下での原発災害を防ぐために、川内原発の運転停止を求める署名への賛同を呼び掛けます。


 

https://www.change.org/p/%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?source_location=discover_feed
 

 

そして、戦争法廃止に向けてたゆまず行動し、憲法に違反する政治を推し進めようとする策動を許さず、医療・介護を国の責任で充実させることを求め、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。

 

 

11月28日に行なわれた過労死等防止対策推進シンポジウム埼玉会場の概要の続きです。

 

休憩を挟んで、2つめの講演が行なわれました。

2つめの講演は、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師を講師に、「受けよう、活かそう、ストレスチェック」というテーマで行なわれました。

山本先生は、現代は非常にストレスが溜まっている時代なので、ストレスはあって当たり前で、死なせないようにすることが重要だと指摘しました。山本先生は当日も25人の診察をしてから講演にいらしていて、この週は6回の講演があり、年間200回は講演をされているそうです。患者さんは370人受け持っていて、8000件の相談メールを受けているそうです。非常に幸せだと思って仕事をしているとおっしゃっていました。

使用者には安全配慮義務があり、労働者には健康保持義務があるそうです。10年前は、自分も職場も元気にするということがスローガンでしたが、今は、自分も家族も職場も日本も元気にするということがスローガンだそうです。

相談は労災病院の仕事としてい受けているそうです。横浜労災病院は相談のセンターになっていて、今は「勤労者こころのメール相談」という名称だそうです。ストレスチェック制度については推進派だそうです。

対象に家族を入れたきっかけは、「お父さんが仕事に殺される」というメールを受けたことだったそうです。そんな職場にしてはならない、家族が背後にいることを忘れないようにと考えたそうです。日本を対象に入れたきっかけは、ハリー・ポッターの訳者が「日本は税金が高い」とスイスへ移住してしまったことだそうです。

日本のサラリーマンは1週間周期で仕事をしていますが、山本先生はストレスは1日決算主義にすべきだと述べました。365日、夜寝る前に、「今日、この会社で働けて幸せ」、「今日、家族と過ごせて幸せ」と思えるようにしようということが提起されました。

1991年、横浜労災病院心療内科で電話・メール相談を始め、8517件の相談を受けたそうです。そこに、「過労の夫が心配です」というメールが来たそうです。異動によって不規則労働になり、土曜日の出勤で、頭痛があり、平行感覚の狂いが生じていたそうです。山本先生は返信に、すぐに対応しなければならない、産業医に相談してくださいと書いたそうです。

労働者が倒れる前に対策ができるよう、ストレスチェックを行なうべきだということが指摘されました。

ストレスチェックを行なうのは使用者の義務であり、労働者にやってもらうには理解が必要だということが指摘されました。そして、それは個人と職場全体の改善に役立つそうです。

横浜労災病院では「メンタルろうさい」というメンタルヘルス相談システムをつくっているそうです。それはNIOSH、「職業性ストレスモデル」に基づいていて、労働者のストレス要員を総合的に把握することができ、医師面接で活用することもでき、テスト終了後にメールを送って相談することもできるそうです。

ストレスコーピングのアドバイス例が紹介されました。30代の女性で、上司との人間関係の悩み、ミスをして「もう仕事をしなくていい」と言われて書類を奪われたことがあり、いつもビクビクしているということが書かれていたそうです。山本先生は返信で、上司もストレス状態にあったのでしょうと指摘し、職場の中に話しを聴いてくれる人を見つけましょう、スポーツなど、ストレス解消法を見つけましょう、あなたならできますと呼び掛けたそうです。2回目のメールには、「上司もストレスがたまっていたのでしょう」と言われてはっとしたということと、スポーツジムに通い始めたということが書いてあったそうです。返信には、その調子でと書いたそうです。

ストレスチェック制度については、現場での戸惑いはわかるがあえて行うべきであり、限界があることをわきまえつつ、定着されるべきだと考えていらっしゃるそうです。メール相談は、cure(医療行為)ではなく、care(相談)だそうです。相談には、24時間以内に返信するようにしているそうです。セルフケアを見直すべきであり、サポーターとして心配しているというメッセージを発信するべきであり、医師面接を希望しない人には「こころの耳」の閲覧をすすめているということでした。

ストレスチェックをやったうえで疑問、意見を出すべきであり、この制度があるおかげで自殺してしまったかもしれない人とつながることができ、産業医も長時間労働を把握していないということが指摘されました。

仕事は志であることを毎日感じてほしい、今日この職場で働けて幸せだという職場にしてほしいということが呼び掛けられました。

セルフケアは、ストレッサーに気付かせることと、サポートに気付かせることが目的だそうです。ストレスチェックと健康診断をセットで行なうべきだということも提起されました。例えば頭痛がある場合、ストレスが原因なのか、それとも健康診断に問題があったのか、判断するためだそうです。

ストレスチェック制度は憲法からも必要なものだということが指摘されました。ストレスチェックの目的はうつ病の発見ではなく、倒れない職場にするためのものだということでした。

サポーターは、上司、同僚のサポートが重要だということでした。上司のサポートがあれば一次予防ができ、コミュニケーションづくりで労働者が倒れない職場にすることが提起されました。

健康的なライフスタイルは、週単位の生活から1日を大切にする生き方に変えることだという指摘がされました。毎日の生活に、運動、労働、睡眠、体調、食事、会話・対話の6つの要素があるようにするそうです。

運動については、すべての自覚症状が、運動をしている人としていない人とでは、していない人の方が多く当てはまるそうです。産業医面接の中でも運動の話をするようにしているそうです。

睡眠については、何時間かまではストレスチェックでは聞かないが、長時間労働をすると睡眠時間が減るそうです。100時間残業をしていても元気な人はセルフケアをしており、22時以降は残業はしない、土日のどちらかは休む、休日出勤したら必ず代休をとるといったことだそうです。勤務時間にパフォーマンスを発揮できるような睡眠の時間と質を保つべきであり、起きる時間は毎日変えず、働く3時間前に起きるようにすることが提起されました。起床後16時間で眠くなるという法則があり、土日も同じ時間に起きれば余裕ができるということが指摘されました。

会話と対話については、IT企業の人はストレスがたまるので、人と向き合う時間を持つべきだということが指摘されました。

仕事以外のストレスは把握できないのがストレスチェックの限界だそうですが、個別のストレス要因についてはカウンセリング、相談窓口が必要だそうです。

職場の中でストレスに対処するためにストレスチェックを活用するのは1次予防であり、2次予防はうつ病の発見だそうです。インターネットを用いた「メンタルろうさい」は、メンタルヘルスチェックシステムであり、無料モニターを募集しているそうです。

医師面接については、やってよかったという意見があり、来た人から様々な情報が得られているそうです。

異議があっても活用し、よい制度にしていくことが呼び掛けられました。

 

続いて、家族の会の方の体験談が語られました。

お一人目は、過労事故で24歳の息子さんが亡くなったという方でした。2013年春、ハローワークで求職し、10月に使用期間ということでアルバイトで働き始め、デパートやホテルに植物のディスプレイを飾る仕事に従事したそうです。10月末から年末にかけては繁忙期で、営業していない時間に作業するため、深夜労働となり、徹夜することもあったそうです。時間外労働時間は月80~100時間以上となり、上司から精神的に追い詰めるようなことも言われていたそうです。公共交通機関は使えないので原付バイクで通勤しており、仮眠室もなかったそうです。2014年3月に正社員になったそうですが、仕事時間は変わらず、同年4月24日にバイクの単独事故で無くなったそうです。家庭に余裕がなく、大学は働きながら2部に通い、奨学金を背負って社会へ出て、正社員を目指しましたが、この会社ではやっていけないと何度も考えていただろうと思われますが、わずか半年で使いつぶされてしまいました。大半の若者の夢が、正社員になり、結婚をして家庭を持つこととなっており、それさえも命がけであることが指摘されました。

21時間連続勤務後の運転は、飲酒と同じくらい作業能力が低下する状態であり、過労事故も労災とすることを求めているそうです。

電車で通勤している時に携帯電話に着信が入り、突然息子の死を知らされたそうです。こうしたことを二度と起こさないでほしい、会社で何かを決める時は、家族を失った人がいることを考えてほしい、若者が健康で、夢を持って生きていける社会にしてほしいと呼び掛けました。

 

お二人目は、友人を過労死で亡くした方でした。

IT子会社のシステムエンジニアをしていて、同期の友人が地上デジタルのプロジェクトの参加し、国策であり、納期は揺るがせないため、即戦力とみなされて長時間労働を強いられることになったそうです。納期が動かせず、仕様変更が多発し、何度もつくり直さなければならなかったそうです。ひたすら時間を浪費し、心身を消耗する日々が続き、うつ病を発症して休職と復職を繰り返すようになってしまったそうです。仕事の後、「生きているか」とメールを送った翌日、27歳で過労死してしまったそうです。

親が労災を申請し、裁判によって労災だと認められたそうです。しかし、命が戻って来る訳ではないということが訴えられました。

ご自身も長時間残業をし、月150時間になることもあり、うつ病を発症し、休職、復職を繰り返すようになり、退職して現在も治療中だそうです。

生きるために働くのではないか、幸せになるため、夢をかなえるために働くのであり、働くことで命を落とすことがあってはならないと訴えました。当事者は命を落とし、家族は悲しみにくれ、社会は活力を失うことになります。そして、タイムマシーンをつくってお父さんが仕事に行くのを止めたいという小学生の詩を紹介し、家族の会が必要ない社会になることを願っていると述べました。

 

三人目は、夫が2010年に勤めていた配送会社から飛び降りて死亡したという方でした。

損害賠償訴訟は和解で解決し、労災は申請中だそうです。

さいたま新都心の事業所に異動となり、範囲が広くなり、高圧的な上司がいて、「ミスするな」、「残業するな」と言われていたそうです。残業が少なくするのは、事業所の優良さをアピールするためだそうです。ミスした人を「お立ち台」に立たせて謝罪させ、上司が野次を言うということも行なわれていたそうです。

4年間の間に3回病休し、異動を希望するも上司が「病気が治るまで転勤させない」と言われ、仕事が軽減されず、自殺に追い込まれてしまったそうです。

裁判を行なったことで職場は変化してきたそうです。お立ち台は報告のための台になり、怒鳴り声がなくなったそうです。以前にも自殺した人がいたそうですが、家族が何もしなかったため、会社は何も対策しなかったそうです。

家族は元気に帰ってくることを待っていますと述べました。

 

閉会のあいさつは島田弁護士が述べました。

改めて、この問題は職場の問題、企業の問題であり、規制では国の問題だが、私たちが考えることが過労死をなくすことにつながるのではないかと述べ、家庭や職場で話し合ってほしいと呼び掛けました。

 

以上で報告を終わります。