まず、集団的自衛権行使を実現可能としようとする動きに抗い、秘密保護法の濫用による言論の自由の侵害を許さず、医療・介護の改悪に反対し、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。
12月16日、最高裁は残念ながら夫婦別姓を認めない民法の規定を「合憲」としました。15人の裁判官のうち、「合憲」としたのは10人で、「違憲」とした裁判官5人のうち3人が女性であり、今回の裁判官に含まれる女性の全員です。つまり、男女比4対1という、非常に女性に不利な構成の法廷において、女性に不利益を負わせる判決が下されたということになります。
さて、この判決について、毎日新聞の埼玉中央版に竪十萌子弁護士の見解が掲載されています。「ピースフォーラム2015」や「平和のための埼玉の戦争展」で講演してくださった竪弁護士です。ぜひ多くの方に読んでいただきたいので、引用してご紹介致します。引用部分は青で表記します。
夫婦別姓訴訟「極めて保守的な判決
竪弁護士 最高裁「合憲」人ごと
毎日新聞 埼玉中央版 2015年12月17日
http://mainichi.jp/articles/20151217/ddl/k11/040/224000c
夫婦別姓を認めない民法の規定について違憲性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷が「合憲」と判断したことを受け、原告側弁護団の一員である埼玉弁護士会所属、竪十萌子(たてともこ)弁護士(34)は「極めて保守的な判決で、残念であると同時に怒りを感じる」と語った。
竪弁護士が弁護団に参加した理由は、幼いころから結婚により女性側が姓を変えることを「おかしい」と感じていたからという。ロースクール時代に夫婦別姓の議論をしようとすると、男性の友人から「そういうことを言う女は面倒くさい」と敬遠され、議論にならないことに落胆。一時期は議論を封印した時期もあったという。
「面倒くさい」と言う男性の多くは「自分だったら結婚したら妻の姓に変えても構わない」と言ったが、実際に変えた人はいなかった。竪さんは「多くの男性が(姓を変える側の苦しみを)自分に置き換えて考えていない」と感じ、問題の根深さを感じたという。
判決を受け、改姓による不利益は通称の使用で緩和できるとした判断について、「現実とかけ離れ、人ごととしか考えていない」と指摘。「一人一人が政治や司法に関心を持ち、おかしいと思うことに声を上げて選挙に行くことで変えていくしかない」と話した。【山寺香】
私は10年くらい前に総務の仕事をしていましたが、結婚で改姓をする手続きはいろいろと大変でした。職場では通称を使うことができますが、税金や公的保険は改姓後の姓で手続きする必要がありますので、まずはその手続きが必要となります。年金手帳や健康保険証、雇用保険証などを提出してもらわなければなりません。そして、銀行口座の改姓手続きをとってもらわなければなりません。医師、看護師、薬剤師など、免許が必要な職種の方の場合は、もちろん免許の改姓手続きもしてもらう必要があり、改姓後の免許のコピーを提出してもらわなければなりません。また、法人として加入している共済などの改姓手続きも必要です。
そんな仕事を5年ほどしましたが、その間に男性の方が改姓した例は片手で足りるくらいしか記憶にありません。(妻が医者のケースとか……)
「自己喪失感」とか心情的な理由をあげるまでもなく、圧倒的に結婚により改姓をするのは女性が多いということは、女性が手続き上の負担をより多く負い、職業上の不利益や社会的実績の断絶といったリスクを負うことになるのです。それが”通称使用で事足りる”とした最高裁判事の皆さんの感覚は「現実とかけ離れ、人ごととしか考えていない」という竪弁護士のご指摘に私も賛同します。
とは言え、最高裁判決は夫婦同姓制度にまったく矛盾がないとしている訳ではなく、国会で議論し、判断するべき問題だとも述べているそうです。
aozora様の下記のブログ記事をご参照ください。
女性裁判官は全員が「違憲」意見 夫婦同姓の合憲判決
http://ameblo.jp/shiratasan-daisuki/entry-12107132472.html
でも、現在の家制度復活を志向する時代錯誤な家族観に支配されている自民党が多数を占める国会では、選択的夫婦別姓が実現するのは考えにくいので、やはり竪弁護士がおっしゃるように男女平等を志向する政治家を選んで国会に送り出さなければならないと思います。
追記 ニュースの街頭インタビューで、子どもがかわいそうだから別姓に反対と述べているカップルがいましたが、別姓が普通になればそれで子どもが不利益をこうむることなんてないはずだと思います。そういう意見を言う方には、今現在、夫婦同姓を強制されて苦しんでいる人たちのことはどう思うかと聞いてみたいと思います。子どもために親は犠牲になるべきだと答えるのでしょうか。いえ、そうした苦しみがあるために、生まれることが出来たかもしれない子どもが生まれることが出来なかったということに思いをはせるべきでしょう。