衆院厚労委 参考人質疑「医学部定員の抜本増を」(しんぶん赤旗より) | 労働組合ってなにするところ?

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5月7日、衆院厚生労働委員会において、医療・介護総合法案に関する参考人質疑のために本田宏埼玉県済生会栗橋病院院長補佐が招致され、意見陳述を行ないました。しんぶん赤旗にその内容が掲載されていましたのでご紹介します。引用部分は青で表記します。



衆院厚労委 参考人質疑

本田宏埼玉県済生会栗橋病院院長補佐の意見陳述

しんぶん赤旗  2014年5月8日


 医療・介護総合法案を衆院厚生労働委員会が7日に開いた参考人質疑で、埼玉県済生会栗橋病院院長補佐の本田宏氏が行った意見陳述(要旨)は次の通りです。


 先進国一、医師不足の日本ですが、その日本で一番、(人口比で)医師が少ない埼玉から来ました。

 日本の医師数は1960年から2010年まで、医師を減らせば医療費も低下できるだろうと削減されてきました。他の国は医師を増やしています。専門家がいなければ質の高い医療が提供できないからです。ところが日本は怠ってきました。

 医学部定員の削減の閣議決定が97年にされ、その後、新卒の臨床研修制度が導入されました。研修医が大学から外に出なくなったということで地域医療が崩壊しました。

 全国の地域別の人口あたりの医師数で、平均から見ると、東京、京都は多い。しかし、OECD(経済協力開発機構)諸国平均と比べてください。東京、京都も追いついていない。絶対数不足です。埼玉は1万人の医師がいますが、人口あたりの医師数は東京、京都の50%です。単純計算すると、埼玉だけで1万人不足しています。

 深刻なのは、医師の絶対数不足に加えて、偏在です。

 日本の救急医は、アメリカの人口比で、たった14%です。ですから、日本のほとんどの病院は、救急でない医師が救急をしています。しかも、救急医は朝から次の日の夕方まで働く。

 地域の中核病院では救急の場合、夜間や日曜には麻酔(担当)でない人(医師)が麻酔をかけている。こんな先進国はありません。それでも、医師の偏在がすぐ解消するというのはおかしい。

 日本の勤務医の労働時間は非常に長い。男も女もダントツ一位。医師の家庭生活が危ないまま、いい医療が提供できるわけがない。

 日本の医学生数は先進国で最低です。医療が進歩すれば専門医が必要になります。医学部定員を抜本的に増やさないと大変です。

 アメリカは多くの医療事故を分析し、人は誰でも間違えるという結論を出しました。ですから医師をちゃんと休ませ、専門性を持たせる。処方箋を忙しい医師には欠かせません。間違えるからです。

 (この法案によって)7対1(患者7人に看護師1人の配置という最も手厚い病床)が少なくなると、せっかく労働環境がよくなった看護師さんの待遇がまた悪化する危険性があります。それでなくても、少ない看護師をもっと減らすような政策はだめです。

 解決には、医学部の定員を増やさなければいけない。20人、30人のメディカルスクールを大学卒の学士を対象に作るべきです。

 アメリカでは医師を補助する職種があります。世界一医師不足で、看護師不足の日本こそ、(補助職種の)導入を急ぐべきです。



本田先生は日本の医師の絶対的数不足をずっと訴えてきています。一時期、政府も医師数増の必要性を認め、医学部新設を認めるなどの政策をとってきましたが、未だ医師数は必要とされるレベルには達していません。

また、看護師も不足状態が続いています。7対1病床が削減されることによって看護師不足が解消されるのではないかというご意見もありましたが、診療報酬上の基準を満たすことと現場で適切な看護を行なうための人員を確保することは必ずしもイコールではありませんので、現場での負担感は増す可能性もあります。そして、現場の負担が重くなれば看護師の離職が増加することになり、やはり看護師不足は解消されないという結果になることも考えられます。

そして、医療・介護総合法案は、病床を減らすことで在宅の患者が増加するという方向性を持ったものですので、在宅分野において看護師が必要とされ、やはり必要とされる看護師数は全体では減らないということになると思われます。つまりは訪問看護師がより多く必要とされることになりますが、単独で患者宅を訪問して看護を行なう訪問看護師は、ある程度の高度な判断を自身で行なうことができる知識と経験を求められますので、新卒の看護師がいきなりできるものではありません。病院や診療所で一定の経験を積んだ後に訪問看護師になるという育成過程が必要となると考えられますので、訪問看護師を増やすには年単位の計画を立てなければならないと思います。


近年の医療・介護政策は、病院や施設よりも住み慣れた地域で生活し続けることを可能にする「地域包括ケア」を目指すという方向ですが、そうした表向きの理想が示される一方で、医療や介護に対する国の支出を減らすための在宅への誘導という裏の目的も見え隠れしています。その裏の部分は、医療・介護総合法案が介護において軽度者の切り捨てという方向性を示していることに表れていると思います。そして、病院から在宅へという流れを示す一方で、受け皿となるべき在宅医療・介護の提供体制の整備は不十分であるということも、表の理想はないがしろにして、裏の支出削減を優先していることが表れていると思います。

そうした、裏の目的のために法律・制度がつくられていくのに抵抗し、本来の表の目的を達成するような法律・制度をつくっていくように、政府に働きかけることが重要になっています。



追記 2014.5.10


今回引用した記事では医療のことが中心となっていますが、医療・介護総合法案には介護保険からの軽度者の切り捨てという大問題も含まれています。

本日のしんぶん赤旗の記事によりますと、軽度者向けサービスが介護保険から外されて自治体の事業に移行されることに対し、210の地方議会が異議申し立ての意見書を可決しているそうです。


介護保険「改革」 210地方議会が異議

しんぶん赤旗 2014年5月10日

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-10/2014051001_01_1.html