医労連の看護実態調査 4年前より労働条件が悪化(連合通信・隔日版より) | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。



日本医労連の看護実態調査についての記事が「連合通信・隔日版」に掲載されましたのでご紹介します。引用部分は青で表記します。



4年前より労働条件が悪化

医労連の看護実態調査  国の「改善通知」効果薄く

連合通信・隔日版  2014年2月6日付  No.8810  p4


 昨年の看護師の夜勤回数や時間外労働が4年前と比べて増加し、健康不安や不払い労働がまん延していることが2月3日、日本医労連の労働実態調査で分かった。医療労働者の勤務環境の改善を求めた厚生労働省の5局長通知(2011年)が十分生かされておらず、医労連は「通知では人手不足の解消までには至っていない。大幅増員が不可欠だ」と訴えている。

 調査は昨年9~11月、加盟組合を通じて3万2372人分の回答を集計した。

 夜勤回数が看護師確保法の指針が定める「月8回以内」を超えている看護師は前回の09年調査よりも4.9ポイント増の36.6%だった。負担の重い交代制夜勤を繰り返す看護師にとって「過労死ライン」とされる月60時間以上をこなす職員は253人。妊娠しても夜勤が免除されず、妊娠者の約3割が切迫流産を経験していた。

 さらに業務の引き継ぎを行うため始業前の時間外労働が日勤、夜勤を問わずに増加。その3分の2で不払い労働があり、不払い総額は医労連試算で月3億1800万円に上った。


 夜勤規制と増員が不可欠


 こうした劣悪な勤務条件は患者の安全や看護師の健康に影響を与えており、医療事故の原因について約8割が「慢性的な人手不足による忙しさ」と回答。6割超が「慢性疲労」「強いストレス」などを訴え、「仕事を辞めたい」と考えている看護師は7割を超えた。

 三浦宜子書記次長は「医療技術の高度化や患者の重症化などで労働条件を改善するまでの人員配置が追いついていない」と指摘。看護師の負担を軽減するため夜勤を週32時間以内に規制した上で、現在約150万人いる看護就業者を早急に200万人以上に大幅増員するよう求めている。



春闘時期なので、「夜勤は大変なので夜勤手当の引き上げを」という方向に力を入れてしまいがちですが、夜勤の負担軽減そのものにも取り組んでいかなければならないと、この記事を読んで改めて思いました。

最近聞いた話ですが、ある産婦人科病棟では看護師不足のために妊婦でも夜勤免除がされず、ある日夜勤についた看護師が全員妊婦で、「今この病棟にいるのは全員妊婦だね」という状況になったそうです。笑い話のように話されましたが笑えません……


看護師というのは「やり甲斐搾取型のブラック職種」だという話をしたこともあるのですが、それが不払い労働の一因になっているのではないかと思います。患者さんによりよい対応をするために、始業時間よりも早めに出勤してカルテチェックなどをすると、「それは自主的に早く来たんでしょう」と言われて時間外労働手当の対象からは除外され、本人もそれに納得してしまうという……

でも、情報把握は明らかに仕事をするために必要な作業であり、必要ならば労働時間としてカウントされてしかるべきではないでしょうか。必要な仕事を行なっていても自主的に早く来たのなら労働時間ではないと教えられた看護師が管理職になり、自分の部下にも同じように教えてしまえば、不払い労働が延々と続いていくことになってしまいます。こうした意識を変えていく必要もあると思います。


看護師確保法の指針では夜勤は「月8回以内」。これは三交代でということで、夜勤2回分の勤務を一気にこなす二交代では「月4回以内」に相当すると考えられます。二交代での調査結果は示されていませんが、恐らく二交代で「月4回以内」を超えている看護師も少なくないと推察されます。当法人では基本的に夜勤は二交代で行なわれているのですが、月の夜勤上限を労使の合意で定めた「夜勤協定」では、ほとんどの病院で「月6回以内」と定められていたと記憶しています。もちろん労働組合としては「月4回以内」を目指したいのですが、看護師不足のために実現は難しい状況です。

看護師はやり甲斐のある仕事というプラスイメージがありますが、実際の看護師の仕事は非常に負担の大きいものであり、理想と現実のギャップに打ちのめされたり、健康を損なったりして離職する割合が高い職種でもあります。離職によって人手不足になれば一人一人の負担が増し、更に次々に離職を招くという悪循環に陥ってしまいます。この悪循環を断ち切るためには、まずは現場での離職を防ぐ取り組みをしつつ、看護師の養成数を増やすような政策を実現させていかなければならないと思います。医療労働者の労働条件をよくするためには、現場でどんなに頑張ってもそれだけで十分ということはなく、医療政策そのものを改善していく必要があります。

私も医療労働者の端くれとして、内のことも全体のことも考えていくという意識をもって労働運動に取り組んでいきたいと思います。