無期・正規に転換した職場は今 サービス連合帝国ホテル労組(連合通信・隔日版より) | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。



先日、「有期雇用労働者を無期・正規に転換した職場は今(連合通信・隔日版より) 」というタイトルで、「連合通信・隔日版」の連載第1回目をご紹介しました。そこで取り上げられていたのは医療職場の事例で、その特殊性もあるかもしれないという指摘をしましたが、連載の続きでは他の分野の職場の事例も取り上げられていましたので、今回はそれをご紹介したいと思います。引用部分は青で表記します。



〈無期・正規に転換した職場は今〉中

   「先を考えられるようになった」  サービスっ連合帝国ホテル労組

連合通信・隔日版  2013年3月28日付  No.8711  p4~5


 帝国ホテルが労組の要求を受け入れ、1年有期契約のエリア社員約500人全員を無期契約に転換してから2年。4月からは正社員と給与体系を一本化する人事制度をスタートさせ、正社員登用の枠を増やす。組合員からは「先を考えられるようになった」との声が上がる。


(中略)


 長い時間をかけて人材を育てる職場なのに、1996年に導入したエリア社員制度は、長期の勤続を期待しない制度だった。30歳で昇給は頭打ちとされ、年収は若手正社員の90%(2年前に91.5%に)、最大300万円程度に抑えられていた。これでは家族を養えない。

 無期転換後、労使で人事制度の見直しを協議。4月からは、45歳まで年収が伸び、上限を540万円に引き上げる新たな人事制度をスタートさせる。同年代の若手正社員との格差はわずか5%にまで縮小させた。そのために高齢層の昇給原資を一部まわしている。

 正社員登用も受験制限を撤廃し、「昇給試験」のようなイメージの制度とした。比較的厚い高齢層の退職後、相当数が正社員になれる見込みだという。


(中略)


 「経営側はつねに嫌々だった。今でも経営陣には頭が切り替わっていない人がたくさんいる」。帝国ホテル労組(サービス連合加盟)の岡本賢治中央委員長は、非正規労働の安易な拡大に警鐘を鳴らし続けてきた労組の取り組みと、厳しかった交渉を振り返る。

 経営側がエリア社員の割合を半数に引き上げようとした2000年代前半から、労組は「ホテルの付加価値の源泉は人にある」と訴え続けてきた。正社員登用制度や、職場ごとに必要な正社員数を定め欠員を補充する「要員協定」はその賜物だ。今では人材の定着にはそれなりの処遇が必要という認識を一定共有できている。

 だが、それでもすんなりとは事が運ばない。

 残る5%の年収格差がそれだ。差は一時金の額によるもの、経営側が人件費増に抵抗した結果だった。

 エリア社員への退職金制度の適用も2年前に見送っている。連結ベースで年間営業利益が吹き飛ぶ額の積み立て不足が判明。正社員の現行支給水準さえ500万円程度引き下げざるを得ない苦渋の決断を強いられた。「エリア社員全員に広げると、退職金の支給水準はさらに低下し、世間水準を大幅に下回ることになる。(正社員とエリア社員の組合員が)皆で決めるにはそれが限界だった」と同委員長は語る。


 強い労組が必要


 日本社会全体でみれば、自社の非正規労働の実態さえ知らない企業内労組が多いなかでの先進的な実践。だが、残る格差への思いもくすぶる。

 岡本委員長は「まじめに長く働いているが、ほどほどに正社員になれ、そうでなくてもかなりの割合で年収が45歳で500万円台に届く制度。とはいえ、差は差でもある。過渡期になる今、次の人事改定を見据え、より職場に根ざした強い労組になることが必要だ」と語る。

 エリア社員の多くが組合の職場委員になり、苦情処理を担う。家族を養える労働条件を整えた今、彼らが主軸となる近い将来に、格差解消の希望をつなぐ。



記事中には言及がありませんでしが、「エリア社員」というからには恐らく転勤の範囲に制限がある雇用形態なのでしょう。だとすると、当法人にも類似する制度があります。

当法人には「スタッフ職員」という名称の制度があり、職種は事務職員と介護系職種に限定され、転勤の範囲が一定の地域に限定されている制度です。給与は月給制で、自主的に設定する目標の達成状況による評価制度があり、評価の結果によって昇給があります。しかし、正職員の80%程度の給与水準であり、一時金は毎回交渉によって決定されますが、これまでは常に基本給の1.0ヶ月分に留まっています。退職金制度は厚生年金基金の退職一時金のみです。雇用期間は、制度がつくられた当初は1年契約でしたが、昨年無期雇用に転換されました。正職員登用の具体的な制度はありませんが、正職員を募集するときは当該の事業所内でも周知することにしています。

以上のように、当法人の制度は無期雇用に転換したという意味では記事中の「エリア社員」制度と同様ですが、給与水準や正社員登用制度の有無という点では大きく立ち遅れています。


記事中には「経営側はつねに嫌々だった」という表現がありますが、当法人の「スタッフ職員」の無期雇用化は、経営側としても辞められると困るという事情があったと組合では見ています。特に人材確保が急務である介護系職場において、「スタッフ職員」は重要な役割を占めているのです。限定の条件はあるとはいえ、仕事の内容や責任は正職員と大差なく、目標による管理にも取り組んでいる「スタッフ職員」ですので、給与水準の引き上げも目指していきたいと思います。