ILO総会で決まったこと③ 非正規にも基本権保障を(連合通信・隔日版より | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、東日本大震災の被災地の復旧・復興が、住民の立場に立った形で、1日も早く実現することを祈念致します。



5、6月にスイス・ジュネーブで開かれたILO(国際労働機関)総会で、政労使の合意として決定されたことを報告する「連合通信・隔日版」の連載、第3回をご紹介します。引用部分は青で表記します。



〈ILO総会で決まったこと〉③

   非正規にも基本的保障を  新たな行動枠組みを設定

連合通信・隔日版  2012年8月7日付  No.8630  p15~16


 ILO総会では、団結権の保障や差別の禁止など、何より守らなければならない基本原則について、各国の履行状況が報告されました。派遣など非正規雇用で働く人への労働基本権保障を重視し、ILOによる調査研究と支援に力を入れるとしています。


 8条約を重視


 「中核的労働基準」と呼ばれ、批准していなくても順守義務のある4分野8条約(結社の自由・団体交渉権、雇用、職業における差別の排除など)が守られているかどうかを調べるものです。これまでは4分野ごとに履行状況が話し合われてきましたが、今回から手続きを見直し、まとめて検討することになりました。

 ILOは決議で2012~16年までの行動枠組みを設定しました。移民や、インフォーマル(非合法)な経済活動に携わる人々に加えて、非正規労働者の団結権、団体交渉権の保障を重視しています。非正規労働者を含む政労使の利害関係者が参加し、社会問題の解決にあたる「社会的対話」の推進、という考え方に基づくものです。

 具体的には「国内法整備が遅れている非正規雇用の増加で、団結権や団体交渉権を全面的に行使できているかどうか、疑問視される状況が生じている」と指摘。ILOとして、技術協力や調査研究活動を行うこと、各国の研究への支援、非正規労働への規制の成功例の紹介――を行うとしています。

 派遣や有期契約で働く人にも当然、法制度のうえでは団結権やスト権があります。しかし、労使紛争になった場合の保護が弱いのが実際のところ。次の契約不更新を恐れ、賃金や労働条件だけでなく、命や健康に関わる安全衛生の課題でも声を上げにくい状況が生じています。こうした非正規の問題を、労働基本権の観点からアプローチするものです。


 日本や2条約未批准


 8つの基本条約についてILOは各国による批准を追求しています。特に団結権、団体交渉権に関する条約の批准率が低いといいます。

 日本も8条約すべてを批准しているわけではありません。差別待遇を禁じた111号条約、スト参加や政治活動への制裁としての強制労働を禁じた第105号条約は今も未批准です。

 適用状況でいえば、さらに雲行きは怪しくなります。批准はしているものの団体交渉権を保障した第98号条約は、公務員への保障が未だにこう着したまま。男女間の同一価値労働同一報酬に関する第100号条約は、男女間の間接差別の問題など、条約の主旨からみて問題が山積しています。



日本政府は、国際条約を順守しなければならないものだとは考えておらず、単なる努力目標のように考えているのではないかと思われる節があります。

女性差別撤廃条約についても、勧告から2年以内に実施状況を報告することを義務づけられた「フォローアップ項目」についても全く改善のないままであり、当然その他の項目についても進展の気配はありません。女性差別撤回委員会の委員から、日本はそのような姿勢を「条約を宣言のようにしか考えておらず、法的効果がないように思われている 」と指摘されてしまう始末です。

本来なら、そのように国際条約に基づく勧告に関して全く進展がないという事態を、日本政府は恥じるべきなのですけど……

労働に関する国際条約についても、日本政府の姿勢はほとんど同じものに思われます。ILO条約の中でもいくつもの重要な条約を批准していない日本ですが、女性差別撤廃条約でも個人通報制度についての選択議定書を批准していませんし。条約を批准してはいても、適用状況が不十分であるという点も同様です。

国際条約に対するこうした姿勢は、日本が国際社会で”名誉ある地位”を占めるためには、絶対に改善しなければならない点だと思います。社会をよりよくしていくための約束事を守れない国は、決して他の国から尊敬されないと思うからです。


日本政府がまずしなければならないことは、労働問題に関して使用者よりの政策ばかり進めるのを止め、労働者保護を前提に、使用者側を説得し、安定した雇用を基本とする労働法制を整備していくことだと思います。そして、法律が整備されたならば、その適切な実施のために行政が動くべきです。

労働者側は、政府がそうした方向から逸れないようにしっかり監視し、逸れそうになれば阻止する行動を起こさなければなりません。

そうやって、日本が労働問題において成功例を示せるような国になれば、国際社会においてある程度は地位を高めることができるのではないかと思います。