2010年県政要求共同行動報告 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

本日は、埼玉県社会保障推進協議会主催の県政要求共同行動に参加してきました。

これは毎年開催されているもので、埼玉県に対してあらかじめ提出してある要望書に対して回答を受け取り、その回答に対して質問や意見を述べるという形で懇談を行なう行動です。県政全般と医療・福祉等社会保障分野に分かれて2ヶ所で行なうのですが、私は医療・福祉等社会保障分野の方に参加してきました。次に別の会議があったために途中までしか参加できなかったので、今回は医療と介護についての懇談内容をご紹介したいと思います。最初に要望項目について青で記載し、その後に緑で懇談内容を記載します。



1.県民が安心して医療を受けられるために

・医療機関での一部窓口負担を払えず、受診できない人、受診を抑制する人が増えています。低所得者等医療対策費補助金は、県の負担率を2分の1から3分の2に引き上げ、市町村はこの制度を活用しやすくなったことと思いますが、2009年度の市町村別実績(補助を受けた世帯数、補助総額)を教えてください。もし活用が広がっていないとすれば、その原因がどこにあるか、市町村に聞き取り調査を行い、対策を講じてください。

 また、県内の市町村で一部負担金減免制度のない自治体は鴻巣市のみ(昨年の回答)となっていますが、制度はあっても減免制度の適用は全市町村で66世帯と、ほとんど活用されていないのが実態です(2009年4月~12月、埼玉社保協調べ)。しかも市町村の活用状況に大きな格差があります。

 厚生労働省は9月、国保の患者負担の軽減・免除に関する新たな基準を通知し、「上積みを市町村が行うのは望ましい」と国会で答弁しています。この新しい基準を徹底するよう市町村に働きかけてください。また一部負担金減免制度の活用状況(申請世帯数、減免された生態数、減免額など)を市町村別に集約し、公表してください。


・県保健医療政策課は昨年秋、「本県医療の将来を考える上で、独自に人材を養成できることは大変重要でありますので、幅広い視点を持って研究してまいります」と回答しました。今年度、県内の大学に医学部を設置するための調査費が新たに予算化されましたが、調査の進行状況を教えてください。深刻な医師不足を解決するための中長期ビジョンを策定してください。


・「これでは患者の安全を守ることはできない。日本の医療を守ることはできない」と看護現場から悲鳴があがっています。看護師の離職率は1割超と報道されています。看護師不足の解消と看護職員の労働実態の改善は急務です。

 とりわけ子育てなどの家庭生活と両立できる職場環境の整備、交代制勤務と長時間労働の改善、離職者の復職支援などについて、県としてどう対応しようとしているか、具体的な施策を示してください。

 第7次看護職員受給見通し(平成23年から5年間の見通し)の策定状況を教えてください。また継続して看護師確保を協議するために、埼玉医労連などの医療関係団体の代表も参加する委員会を設置してください。



県の回答

・一部負担金減免制度は必要な方策の一つと考えている。県調整交付金は42世帯に交付している。64市町村に減免制度があり、活用状況は14市町村で102件の申請があり、95件実施されている。国の新基準を周知することは市町村に働きかけている。


・平成22年度は、医学部新設を含めた医師確保対策を行っている。厚労省が行った医師不足の調査によると、埼玉の不足数は705人、特に産婦人科が顕著に不足している。地域では、利根、北部、秩父が顕著。地域での偏在を是正するためには奨学金制度の拡充などを検討している。平成21年に埼玉県内の指定病院を選択した臨床研修医は204人で、定員に達していない。臨床環境の改善が必要。医学部新設については調査中。


・県内の看護職員数は約5万人で、10年間で1万4000人増加している。内訳は、看護師3万2000人、准看護師1万5000人、保健師・助産師3000人となっている。医療の高度化や高齢化により、看護職員の需要は増加している。看護職員の95%は女性であり、結婚や出産による退職が多い。復職を可能にするため、病院内の保育所の整備を支援している。平成21年度は、補助金を1施設、運営補助金を104施設に支給している。潜在看護師は3万3000人と推定されている。3年以上ブランクのある看護職員の雇用については人件費の補助を行っている。この制度を利用して66名が復職している。第7次看護職員需給見通しについては来月公表予定。看護師確保のための委員会の設置は計画していない。


参加者の意見

・国保税の負担は重く、不景気や高齢化によって生活できない人が出てきている。窓口負担も重く、病院に行けない人もいる。減免の実施は所沢市に偏っている。さいたま市は0件。県全体のものにはなっていない。減免の要件が厳しく、沖縄などではもっと緩やかになっている。また、入院のみが対象で通院は対象になっていないが、悪化防止のためには通院の窓口負担減免が必要である。


・医師確保対策のために予算を計上した県の対策は評価する。臨床研修制度の見直しで指定病院の基準が年間入院3000件以上という条件がつけられ、現在激変緩和措置の期間中だが、県内で指定病院の要件に当てはまらなくなる病院はあるのか。件数だけでなく研修の質を評価すべきなど、反対意見を表明するべき。


・窓口負担を払えず、受診を中止する人が増えている。減免の適用を広げるべき。資格証明書の人は、国保の人と比べても受診率が1対107と低い。よほど重篤でないと受診しなくなっている。また、厚労省の調査で医師705名不足とのことだが、この調査は病院に対して不足医師数を聞き取ったもので、その地域に必要な医療機関が整備されているかは問題にしていない。医療の供給体制そのものを表してはいない。


・看護職員確保対策については県の調査など前進があるが、子育てをするには労働実態の改善が必要。不規則勤務のために辞めていく看護師も多い。16時間夜勤も増加し、仮眠さえ取れない状況。若い看護師の過労死も発生している。過労状態の看護師から、安心して看護を受けられるのか。ILO看護条約を批准するよう国に意見書をあげるべき。看護師のうつ症状も増加している。育児短時間勤務制度は、補う人員がいなければ絵に描いた餅。潜在看護師の復職の少なさの原因の分析も必要。医師不足は看護師にも影響している。認定看護師で医師不足を補おうとするべきではない。


県の再回答

・減免の範囲は、国の新基準は望ましい基準であり、判断は保険者に委ねられている。


・臨床研修指定病院の新基準については、埼玉県内では36指定病院中2病院が基準を外れる。県としても基準を変えないでほしいという申し入れをしている。国は臨床例の多さを基準とし、指定から外れる病院には協力型指定病院となることを進めている。病院からも国に対して要望をあげてほしい。


・厚労省の医師不足調査は、各病院の状況であり、経営的な主観も含まれるものであることは把握している。県としては医師数を現在の1.5倍にするとしている。医師不足の分析はまだ進んでいない。


・看護師の不規則勤務については、院内保育所で夜間保育をやっていないところもあるが、補助金対象の保育所は約7割が24時間対応している。夜間保育については病院へ要望をあげてほしい。看護師の夜勤は、3交替(8時間)の場合は月8回、2交替については12時間から16時間で月4回と考えている。3交替の方が月の夜勤回数が少ない。看護師の労働実態については一般の人には知られていないのではないか。勤務の改善はしていきたい。育児短時間勤務制度については6月30日の改正法施行から義務化されており、拒否すれば法違反。労基署へ相談を。


参加者からの意見

・C型肝炎の高齢者が通院では窓口負担減免が受けられないと言われた。命に関わる問題。市が決断すれば通院の減免も可能なのか。また、国保のポスターで、「みんながあなたを支えている。あなたもみんなを支えている」とあったが、これは”相互補助”の標語。現行の国保は社会保障のはず。所沢市も母親大会の要望書への返答で国保を「相互扶助の社会保障」と述べているが、それは誤り。


・入院する際の限度額認定書が出されるが、国保の滞納分を分割で支払っている世帯が滞納しているので認定書が出せないといわれた。低所得の人にこそ必要な制度なのにおかしい。また、厚労省の減免の基準が「一時的に生活保護基準以下」となっているが、恒常的な生活困窮者を対象にすべき。


県の再々回答

・C型肝炎に対する対応も市町村が取り決めること。国保は相互扶助であり、社会保障ではない。滞納があると分割支払いしていても限度額認定書は出ない。


県議会議員からの発言

・国保は社会保障の重要な分野。「相互扶助である」は取り消すべき。県の仕事は、国が社会保障制度を改悪してきた中で、平等に医療や介護などの必要なサービスを提供すること。国がやらないならば県がやるべき。


県の再々再回答

・国保はナショナルミニマムを保障するものであり、セーフティネットであることは明確。


※最後に、司会が国保は社会保障であるということでいいですねと確認しました。


2.介護について

・埼玉県の高齢化の特徴として、「高齢化のスピードが速い」「高齢者の絶対数が多い」「団塊の世代が多い」「単身高齢者や高齢夫婦世帯が急速に増える」「都市部で高齢化が急速に進展する」が上げられています。

 埼玉県は、特別養護老人ホームなどの施設整備を計画的にすすめていますが、特別養護老人ホームの待機者数や、高齢化率から考え、特別養護老人ホームの今後の整備数は、次期計画にどの程度見込む予定か、教えてください(平成23年に次期計画策定となる「ゆとりとチャンス埼玉プラン」「埼玉県高齢者支援計画」における整備数)。老人保健施設の整備状況と計画も教えてください。また特養ホームは収入が国民年金のみの人でも入所できるようにしてください。



県の回答

・平成23年度末までの目標を設定。平成24年度以降はこれから、各市町村がニーズを調査する。老人保健施設の整備は平成21年で1万4629名分。特別養護老人ホームは平成21年で2万1213名分。特養の入居費については、ユニット型では低所得者には負担が重いので、費用の安い従来型も整備している。


参加者の意見

・介護が必要になったとき、今の制度で必要な介護を受けられるのか不安。人間が長生きすることが素晴らしいと言える介護の実現を。県内の特養の平均待機者数は166名。これは2、3ヶ月待てばいいという状況ではない。在宅では老老介護、認認介護が増加している。介護保険は強制加入で保険料を徴収しているのだから、必要とすれば特養に入居できなければルール違反。国庫負担率増も要望すべき。


県の再回答

・平成21年7月調査で、特養の待機者は1万4637人。必要なときに必要なサービスが受けられるということが理念。セーフティネットとして特養は必要。県の高齢化も急速に進んでいる。特養の整備を続けたい。


参加者の意見

・低所得者向けに従来型を整備するということは、低所得者は相部屋にしか入れないことになる。国民年金でも入れる特養にすべき。


県の再々回答

・従来型かユニット型かは論争になっている。東京都でも従来型を増やしている。国の制度設計では高齢者の収入の把握が不十分。県としても国へ要望を出していく。



報告は以上です。