第27回医療・福祉に働く女性のつどい記念講演報告 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、直近の情報をご紹介します。 

「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様からの情報提供です。


明後日!

http://mainichi.jp/area/chiba/news/20090929ddlk12100232000c.html

10月13日 10~15時 千葉市中央区中央1の中央公園
第2回 「ちば派遣村」 労働・生活相談会
問い合せ 市民の法律事務所(電話047・362・5578)


http://www.nhk.or.jp/professional/
★NHK 10月13日(火)22時★
プロフェッショナル 仕事の流儀 守るのは、働く者の誇り ~弁護士・村田浩治~
労働者側弁護士の番組です。
時間がございましたら見てみて下さい。




10月10~11日、日本医労連関東甲信越ブロックの主催で「第27回医療・福祉に働く女性のつどい」が開催されました。

まず、基調報告で最近の情勢と2008年度の日本医労連女性協の活動を振り返り、2009年度の方針について確認し、次に記念講演でメンタルヘルスについて学びました。1日目の後半と2日目では、看護、労働安全衛生、憲法9条と平和、女性の権利、介護労働の5つの分科会に分かれて討論を行ないました。


ここでは、記念講演の概要をお伝えしたいと思います。

今回の記念講演は、健眞会夏目診療所産業健康支援センター所長、阿部眞雄先生を講師にお迎えし、「健康で安全に働くために ―イジメ・ストレス・メンタル不全をただす―」というテーマで行なわれました。



最近の医療職場におけるストレスには、「モラール・ストレス」と呼ばれているものがあるそうです。これは、仕事の意欲を削ぐストレスという意味であり、生活や健康を労働の資源にする、仕事を繁雑にする、仕事の全体像が見えない、現場を無視して業務設計が行われる、スキルを考えない高い理想の押し付け、シュッディズム(過剰な「~すべき・当然だ」という意識)、生活の保全と高い職業倫理観のアンバランスといった特徴があります。つまり、「ワークライフバランス」が崩れている状態です。阿部先生は、「ワークライフバランス」は「仕事と生活のバランス」というだけでなく、「仕事と人生のバランス」というより幅広いものとして捉えるべきだとおっしゃっていました。

こうしたストレスをなくすためには、組織的な対策が必要です。経営側の視点だけでなく労働者側の視点も入れ、現場の事実に基づいて、経営者と産業保健スタッフと労働者が共通の認識を持って取り組む必要があります。そのために、阿部先生はCAPDサイクルというマネジメントサイクルを提案していらっしゃいます。Cはチェックで問題の把握、Aはアセスメントで影響の評価、Pはプランで計画、Dはドゥで実行を意味します。マネジメントサイクルはPDCAサイクルが一般的ですが、これはプランに捉われて実行ができなくなる恐れがあるため、現状把握から始まるサイクルを阿部先生は提案しているということでした。

また、阿部先生は病院でのアンケート調査を行なった結果から、組織マネジメントに必要なこととして、クリーン(透明性)、クリアー(公平性)、コミットメント(参加可能性)、コネクティビティ(ネットワークへの接続性)を挙げていらっしゃいます。


次に、ストレスのモデルがいくつか挙げられました。

まず、「ストレスの輪」として、ストレスの原因であるストレッサーがストレス症状であるストレインを生じさせ、それに対する対策としてコーピングを行ない、それを繰り返すことによってコーピングの中毒化が生じるというモデルが示されました。ストレスに対処するだけのコーピングでは解決にならず、ストレッサーを減らすコーピングが望ましいということでした。

次に示されたのが「DCモデル」で、Dはデマンドで要求、Cはコントロールを意味します。仕事の要求度と能力のバランスがコントロールされていなければストレスが生じるというモデルです。要求とスキルのバランスがよければ仕事が楽しくなりますが、スキルが高くても要求が低ければ仕事に飽き、スキルが低いのに要求が高ければ仕事はきつく感じるようになるということです。医療や介護は自発的、自己判断による仕事が多く、それが「見えないデマンド」となり、要求度が見えにくく、「燃え尽き症候群」を起こすことにつながるという指摘がありました。

続いて示されたのが「ERIの法則」で、Eは努力、Rは報酬、Iはアンバランスを意味し、努力と報酬のバランスがとれていなければストレスが生じるというモデルです。苦労の割りには満足が得られないという努力と報酬のアンバランスが生じると、作業能率の低下、コミュニケーションの低下、モラールの低下、効率・生産性の低下が起こり、ミス・事故が多発し、大事故が発生する恐れがあるということです。


厚生労働省は平成18年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を出し、メンタルヘルス基本戦略として、職場に存在するストレス要因全てを労働者自身の力で取り除くことはできないので組織が責任を持つべきであること、そのためには組織のトップがメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明する必要があること、職場の現状を把握して問題点を搾り出し、改善の計画を立ててそれを実施するという組織的戦略の確立が必要であることを示しました。

使用者には、労働者の健康と安全を守らなければならないという安全配慮義務があります。その義務を果たすためには、管理監督者の責任を明らかにし、直属の管理職に問題があるならばさらに上位の管理職が責任を果たすというシステムづくりをし、部下の資質を把握し、復職後の再発、リピーターを防ぐ配慮をすべきだということが指摘されました。

メンタルヘルスの不調は人事管理との関係が深く、個人の問題にはせずに組織全体で考えることが必要です。メンタルヘルス不調の特性としては、主観的な健康不調であるために合理的理解が不可能であり、それを踏まえて職場での調整が必要であること、一人一人の不調の発生や治療のプロセスが異なることなどが挙げられました。

職場の快適化のためには、作業手順の見直しが必要であり、それを適切に行うには、情報が共有され、作業計画への参加が保証され、作業再編成により勤務時間が管理されるようになり、作業手順が円滑化され、チームワークがつくられることが必要であると指摘されました。

また、厚生労働省は「心の健康づくり計画」を策定することを指導しており、その計画には心の健康づくりは事業者の責務であることを明記し、労働者の意見を聴取して継続的、計画的に戦略を立て、労働安全衛生委員会で審議するべきであることが求められています。

労働安全衛生委員会は健康に関わることを全て審議する委員会であり、事業者の表明、体制整備、問題点の把握、計画実施、人材確保、健康情報の保護、マネジメントサイクルについて審議する場です。労働組合は労働安全衛生委員会の委員の半数を選出することになっています。労働組合の役割としては、効率主義の蔓延やマネジメントの失敗、仕事に合わないIT化などの職場の「ゆがみ」を明らかにし、産業医や産業看護職などの健康管理担当者とコミュニケーションを持って職場のゆがみを伝え、安全衛生活動の透明化を行なうことが挙げられました。

職場の「ゆがみ」対策としては、病人を出さない一次予防が重要であること、個別的ではなく、職場の全ての人の連帯をつくることが挙げられました。また、アンケートを実施するなどして職場の悪い職務環境と、他部門から見た良い職務環境を挙げてもらい、そしてわかった問題点を段階的に、まず身の回りのことから対策していくべきであるということが指摘されました。


また、健康生成論として、SOC=首尾一貫感覚とGRRs=ストレス抵抗資源という概念が示されました。

SOCは「結果を生み出せる自信がある」、「人生に生きる意味を感じている」、「夢を描くことが出来る」、「世の中とのつながりを感じられる」といった感覚であり、「生きる力」となります。しかし、SOCが高くても「ゆとり」が低いとストレス症状が多くなるという調査結果があり、SOCが高いだけではダメだということでした。

「ゆとり」をつくるためには、職場に立って雑談できる(短時間の雑談ができる)コーナーをつくる、開放的で誰もが利用できる自由な場をつくる、開放的で誰でもが利用できるHub(相談の仲介者)がいる、上司が実質的なHubとして機能している、支えてくれる人がいるという実感がもてる、適切なコーチがいる(コーチング)、学習する場があるといったことが挙げられました。

最後に、看護師のマネジメント問題点として、上から下からへの通達はあるが、下から上へ意見を上げることは不足しているので、どんな問題が現場で起きているのかをチェックし、組織の問題として取り組むことが必要であるということが示されました。労働安全衛生委員会には勧告権があるので、それを活用すべきであるということも指摘されました。


以上で記念講演の報告を終わります。







以下、「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ様からの情報提供です。



http://www.kfb.co.jp/news/index.cgi?n=2009091214
「職場の労使困りごと相談会」 福島県労働委員会
10/18 福島市勤労青少年ホーム、郡山市労働福祉会館
 

http://www.pref.ehime.jp/tiroui/roudousoudan.htm
7月から月に2回無料労働相談  10/23
愛媛県労働委員会 先着3名
電話 089(912)2996
対象は個人の労働者など
【「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ 推薦】


http://mainichi.jp/area/nara/news/20091008ddlk29040676000c.html  

10月22日15時~ 奈良で初の無料労働相談会 奈良県労働委員会
奈良市大森町の県奈良総合庁舎と県保健環境研究センターの2会場
相談時間は30分。事前申し込みが必要。
弁護士や労働組合幹部、民間企業経営者らによる県労働委員が3人1組で、労使間のトラブルなどの相談に応じる。
問い合わせは、県労働委員会事務局(0742-23-3530)



こちらもよろしくお願いします。8月31日から福岡高裁で控訴審が始まりました。



緊急報告「爪ケアを考える北九州の会」からのアピール

http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10310539150.html