今日はまた「週刊金曜日」の特集記事をご紹介したいと思います。
今回の、2009年2月6日発行(737号)の「週刊金曜日」の特集テーマは「高すぎる医療費」です。とは言っても、医療費が国の財政を圧迫している……という話ではなく、患者さんが支払う窓口負担や健康保険料が高すぎるという話です。
内容をかいつまんでご紹介したいと思います。引用部分は青で表記します。
小泉医療改革との闘い 中村十念さんに聞く
患者と医師を蝕む「医療制度改革」 p10~12
日本医療総合研究所取締役社長の中村十念氏が「医療崩壊」の原点として小泉内閣が実行した医療生後改革について語っています。
冒頭の部分を少し引用させていただきます。
日本の医療崩壊は、二〇〇二年、当時の小泉純一郎首相のもとで実行された医療制度改革に最大の原因があります。社会保障費を抑制するため、患者さんの窓口での医療費自己負担割合は二割から三割に上がり、お医者さんの診療報酬も引き下げられました(「診療報酬のマイナス改定」)。この二つの政策を同時に行なったことはきわめて無謀で、三割負担導入によって患者さんの数が減り、さらに診療報酬のマイナス改定によって患者さんの単価が下がりました。このことが、医療機関の経営を直撃し、真っ先に公的病院の医師不足、ひいては医療崩壊を招いた。間違いの原点はここにあります。
(「週刊金曜日」2009年2月6日号 p10)
低所得者層の増加により国民保険の保険料を払いきれない人が増えたことや、不況が更に受診抑制に拍車をかけ、医療機関の経営が苦しくなっていることなども指摘されています。
「窓口負担『ゼロの会』」野本哲夫さんに聞く
受診ブレーキ踏ませる三割窓口負担はやめろ p13~14
医療生協かながわ生活協同組合藤沢診療所所長の野本哲夫さんが、神奈川県保険医協会で立ち上げた「窓口負担『ゼロの会』」について語っています。既に保険料を負担しているのだから、窓口での負担は75歳以上と3歳未満は0円、それ以外の人は1割以下にしようというのが主な主張です。財源的には、国の負担分を過去の最高水準に戻し、企業の負担分を欧州並みにすることで可能だとしています。
特定健診の導入による健診収入減やデジタル化の負担が医療機関の経営を圧迫していることについても語られています。電子カルテの導入は、カルテに入力する時間がかかるために診られる患者数が減ってしまうことや、高齢の医師が対応できずに診療が続けられなくなるという弊害もあることも危惧されています。
日本初! 高齢者の窓口負担タダの町
東京・日の出町は理想郷? 角田 裕育 p15
後期高齢者の医療費窓口負担を四月から無料にすると発表した東京都西多摩郡日の出町について。財源は「イオンモール日の出」やゴミ処分場の誘致による税収増であるという裏事情もあるそうです……
八三%以上がさらなる税負担に同意
税方式スウェーデンの効率よい医療サービス 訓覇 法子 p16~17
福祉は手厚いが税金の負担も大きいスウェーデンにおいて、国民の満足度が高い理由について。医療の公的責任による税方式運営は効率的で、経済力によって左右されずに必要な医療を受けることができる制度が確立されているそうです。
良い医療サービスの前提として、健全な労働組合が良い賃金を実現し、国民もそれを支援しているということも挙げられていました。
税方式についても、国民が支持しているということでうまくいっているようです。その部分を引用いたします。
税方式は世代間の連帯によって成り立つ、すなわち共生社会(国民連帯)の基礎をなす。得する人、損する人が出てくる制度では、国民全体の支持が得られない。スウェーデンが選別主義的な貧困者救済ではなく、すべての国民を対象とした普遍的社会政策を原則とするのは、もちろん貧困予防の効果も高いが、民主主義国家の責務として生活条件の均等化・平等を目標とするからである。税金を払う時期と還元される時期は人生において異なるが、すべての人が「大きな政府」の所得再分配によって生活の安全を確保できる。
また、税金を払う前にすべての国民が税金によって一人前になる(大学教育にいたるまで無料など)ことの意味も大きい。最も税金還元が大きいのが高齢期である。すべての人が人生の帳尻を合わせる時には負担と還元がプラス・マイナス0になるはずである。スウェーデンの消費税〈二五%〉が高いといわれれうが食品などは一二%、新聞や本、コンサートの切符は六%である。税金がいくらであるかが問題なのではない。高負担であっても高福祉(基礎・最低保障ではなくスタンダード保障)で戻ってくれば人は満足する。他の国からいくら批判されようとも、よほどの理由がない限り税方式を変えないとスウェーデン人は主張する。
社会的な機関に対する国民の信頼は医療機関に対して最も高い。最近の調査でも、医療サービスと高齢者ケアの質向上のためには、八五%並びに八三%の人がさらに高い税金を払ってもよいと答えている。
(「週刊金曜日」2009年2月6日号 p17)
興味をもたれた方は、是非「週刊金曜日」で全文をお読みください。