1・27埼玉春闘共闘総決起集会報告 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

昨日、1月27日、埼玉会館大ホールにて「1・27埼玉春闘共闘総決起集会」が開催されました。今年の埼玉県の春闘のテーマは「地域春闘」。労働組合だけでなく、地域の様々な団体と協力して社会的な問題の解決のために行動していくことが重視されています。その出発点としての昨日の集会は、750名の参加で活気あるものとなりました。


オープニングに浦和商業高校定時制卒業生を中心とした和太鼓グループ「響」のパフォーマンスがあり、埼玉春闘共闘議長・原富埼労連議長のあいさつで集会は始まりました。

メインは国民春闘共闘委員会代表委員・大黒作治全労連議長の講演で、「09春闘をめぐる情勢と課題」というタイトルで行なわれました。


大黒議長は、昨年7月に全労連議長に選出されました。その際、「1年に1回はテレビに映るよ」と言われたそうですが、この間のマスコミの労働組合への注目の高まりから、1回どころではなくなっているそうです。

全労連が注目され始めたきっかけは、12月3日にいすゞ栃木工場で労働組合が結成されたことでした。期間工、派遣の首切りに抵抗するために組合員4人で結成されましたが、その取材に組合員よりも多くのマスコミ関係者が集まったそうです。現在、いすゞ栃木工場の労働組合では組合員が25名に増加しているそうです。その後も、基幹産業での派遣、期間社員の労働組合が次々と結成されています。

12月4日に日弁連主催で開催された労働者派遣法の抜本見直しを求める日比谷野音集会には2000人が参加し、多くの注目が集まりました。この集会の実行委員会が「年越し派遣村」を企画しました。ハローワークの相談業務が12月30日まで延長されたことから、当初は130人から150人が集まるのではないかと予想してたそうですが、実際には500人が集まり、中には静岡から10日間歩いてきたという方もいらしたそうです。全労連は「年越し派遣村」では黒子役に徹し、実務的な面で活動を支えました。多くの人が仕事や住居を得て再出発しましたが、後数十名ほどの方が多重債務や疾病などの困難を抱えているということで、援助が続けられているそうです。「年越し派遣村」の取り組みで、全国的に大企業の非情が知れ渡り、生活保護申請の行政の対応が改善し、即時対応と自立を促すという本来の役割が発揮されるようになったという成果がありました。また、多くのボランティアが参加したことから、自分も何かできることをやろうという連帯の輪が全国的に広まりつつあります。全労連としても、今後各地方で相談活動や労働組合結成の援助を行ない、国民的な不況打開行動を展開することを計画しているそうです。

また、外国メディアからも注目されるようになっているそうです。昨年12月16日の経団連「経労委報告」に対する抗議集会はフランスでも報道され、ロイター通信が全労連に取材に来るということもあったそうです。ロイター通信は、「日本では非正規労働者がなぜ簡単にクビを切られるのか?」「日本の労働組合はそれに対して何もしないのか?」という視点で取材に来たそうですが、全労連としては非正規労働者の組合を支援して対抗し始めているということを説明したということです。

地方のテレビ局、地方新聞も、県労連を取材するという動きが全国各地で一斉に起こっているそうです。現在、全国で基幹産業の非正規労働者による労働組合が50近く結成され、従来の金銭的解決ではなく、雇用を守るという決意で闘っています。今までは労働組合を作るとクビになるということで労働組合は労働者から警戒されていましたが、今は黙っているとクビになってしまうという状況になっています。今後もクビ切りが増加していく懸念がある中で、労働組合への注目が高まっています。


では、09春闘はどのようなことが対決点になるのか、ということが次のテーマでした。

構造改革の10年で、大企業に富が集中し、労働者・国民の生活は悪化しました。

昨年9月のトヨタの800人の期間工切りが大量クビ切りの端緒でしたが、トヨタは営業赤字1500億円といっても純益500億円の黒字であり、13兆9千億円の内部留保を抱えています。トヨタ株は約35億株で、配当は1株当たり60円、総額約2100億円になります。1人当たりの年収を300万円とすると、3000人のクビ切りは90億円で防げます。(配当金総額のわずか4.2%です) 「人の命や人間の尊厳よりも株が価値があるのか?」という問いを全労連は投げかけています。

経団連の「経労委報告」は、「労使一丸で難局を乗り越え、さらなる飛躍に挑戦を」と題して発表されましたが、その意味することは国際競争力を強化するために人件費を抑制するということです。景気回復のために、輸出産業中心で外需を拡大するか、人件費を引き上げて内需を拡大するかという選択で、経団連は明確に外需拡大という答えを出しています。政府は消費税を引き上げる構えであり、これも内需よりも外需を優先する政策であり、これでは国民生活がよくなるはずがないというのが全労連の考えです。

全労連は、この不景気を打開するためには雇用を守り、賃金を引き上げ、内需を拡大することだと主張しています。そのために、雇用を守るとともに、賃金の底上げと最低時給1,000円以上を春闘要求としています。そのために、企業の社会的責任を追及し、内部留保を吐き出させ、株主優遇策を抑制することを求めています。

内需中心に日本経済を転換するには、正規職員になることを希望している360万人の非正規労働者を正規化し、サービス残業の根絶で115万人の、完全週休二日制と休暇の完全取得で154万人の雇用増を行ない、福祉、医療、介護、保育、教育などの国民サービス部門を拡充し、グリーンジョブと呼ばれる環境保護産業を育成し、第一次産業を振興させることを提案しています。また、雇用保険6兆円のうち2兆円を使って、失業給付の改善と職業訓練の強化を行なうことも求めています。

また、様々な団体との協同も進め、中小企業経営者と協同した下請け単価の改善、日弁連と共同した労働者派遣法の抜本的改善にも取り組んでいきます。

全労連は今年20周年を迎えます。存在感を高め、具体的な要求を実現するとともに、多くの人と連帯する春闘にしていく決意が述べられ、大黒議長の講演は終了しました。


続いて、埼玉での春闘の取り組みの具体的な日程の説明がありましたが、それは割愛します。

他団体からの出席者を代表して、労働弁護団事務局次長の佐渡島弁護士があいさつしました。佐渡島弁護士はいすゞの期間工切り、派遣切りの争議の弁護団に参加しているそうで、当事者や弁護士だけでなく、多くの支援をお願いしたいと訴えていらっしゃいました。また、昨年末に行なった24時間電話相談を2月、3月にも計画していて、それにも労働組合の応援が必要だとおっしゃっていました。そうした個別救済の取り組みだけでなく、派遣法抜本改正や有期雇用労働者の権利を守る法律の制定、生活保護行政の誤りを正す働きかけなどが必要であり、学習し、知恵を出し合っていこうとおっしゃっていました。

当事者からの決意表明では、臨時職員の雇い止めに抵抗して組合を結成した自治体一般労組、自治労連狭山市職労の方、フルキャストの派遣として椿本チェインで4年間勤務したのに突然解雇され、埼玉ユニオンに加入して派遣元との団体交渉と派遣先を相手取った裁判闘争を始めた派遣労働者の方、地域春闘に取り組んでいる越谷・吉川・松伏地域労連の方の発言がありました。


最後に、「がんばろう」の合唱と、シュプレヒコール、団結がんばろうが行なわれ、集会は終了しました。

次の春闘の取り組みは、1月31日に行なわれる「人間らしく暮らせる賃金・生計費を考えるつどい」になります。