2026年は、正念場の年です。
医療・介護・福祉の制度改悪と負担増にストップをかけ、防衛費倍増をやめさせて庶民の生活を豊かにするために税金を使わせ、外国人や社会的弱者を敵視して真の闘うべき相手から目をそらさせる誤魔化しにだまされず、核抑止の矛盾を明らかにして核兵器禁止条約を批准させ、全産業平均よりも何万円も低い医療・介護従事者の賃金を改善し、最低賃金を大幅に引き上げ、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。
3月19日、オンラインでの学習会「コスパ論、メリット論を乗りこえる 労働組合の語り方」に参加しました。講師は岡山労働者学習協の長久啓太さんでした。
以下、その概要をまとめます。
第一章は、「品定めされる労働組合」というテーマでした。
まず、圧倒的多数が労働組合の認識が「ない」、「乏しい」、「あいまい」といった状況だと述べました。
労働組合であるプロ野球選手会の初代会長の中畑清さんは、国鉄のストライキなどを見て来たそうです。しかし、今はそうしたことはありません。
学校教育でも労働組合について教えられることはなく、労働組合の姿が見えにくくなっており、活動のトレーニングの機会もないと指摘しました。
認識があいまいなものに「加入すること」には、不安や迷いを感じるのが当然であり、しかも「組合費」を毎月取られることになります。
そもそも私たちは、消費者目線での「ものさし」、つまり、商品を品定めする思考方法にどっぷりとつかっており、自分にとってどうかという1人称の視点のみで判断していると指摘しました。消費者目線ではコスパ論、メリット論が判断基準となり、「今だけ、カネだけ、自分だけ」という判断基準は社会が作り出しているマインドでもあると指摘しました。
第二章では、1人称の視点でも意味のある「重し」、価値はたくさんあるということが語られました。
職場に労働組合があるということ自体が、「あなたが享受しているメリット」だということです。
あなたの労働条件は、あなたの前に先輩たちが交渉して勝ち取ってきたものであり、あなたが「労働者」になった時点で先輩たちのたたかいの恩恵を受けているということを指摘しました。たとえば、最低賃金の引き上げはすべての労働者の賃金を底上げしますが、現在のように毎年最低賃金が数十円引き上げられるようになったのは、これまで労働組合が最低生計費調査や国会への働きかけなどを続けてきたからです。
太田愛氏の小説『未明の砦』には、「君たちは労組などとは無縁に生きてきたつもりだろうが、子供の頃から、労働運動の恩恵を受けて育ってきたといっても過言ではない」という言葉があるそうです。
木村元彦氏の著書『労組日本プロ野球選手会をつくった男たち』には、「昨今、『選手会に入っていることのメリットを感じない』として脱退し、メジャーリーグに移籍していく若い選手たちがいる。しかし、ポスティング移籍も含めて、自分たちが現在当たり前のように享受している権利は、勝手に転がり込んできたものではない。先人たちが現役時代に、自身のプレーを後回しにしてまで奔走して勝ち取ったものである。そして選手会を辞める選手が憧れるメジャーリーグには、養老年金をはじめとする素晴らしい環境が整備されているが、これも『世界最強の労働組合』と呼ばれるMLBPA(メジャーリーグベースボール選手会)の努力によって成立したことを、彼らは知っているだろうか」と書かれているそうです。
さらに同書には、「脱退は自由であり、脱退しても権利は行使できる。考えようによっては賢い生き方かもしれない。しかし、せめてその先人たちの献身的な闘いの歴史、そして今も未来の野球のために骨身を削って奔走している現役選手会役員の考えは知っておいてほしい。(略)歴代会長たちが『今だけ、カネだけ、自分だけ』のマインドであったならば、何の改革もされるに選手はオーナーのアクセサリーのままであったかもしれない」と書かれているそうです。
プロ野球選手会労組10代目会長の曾澤翼氏は、同書の中の回想で、「選手会の意義や、選手のために何をしているのかを告知しないといけない。僕の場合は、自分の球団の選手会長をやって、どういう取り組みをしているのかを詳しく知れたというのが大きかったです。今、僕らがいろんな権利を持って当たり前のように野球ができているのは、先輩たちが一生懸命いろんなことを交渉してくれたからというのが、そこでよくわかったんです」と述べているそうです。
困った時に相談する先がある、組織として動くことができるのが労働組合だと指摘しました。
力関係が明白である職場は人権侵害のデパートとなり、そのなかでは多種多様な「不満」、「違和感」、「モヤモヤ」、「理不尽」があると指摘しました。そして、労働組合があれば、相談し、組織として解決のために動くことができると述べました。
また、自分のことを他人に勝手に決めさせない力が労働組合であると指摘しました。生活の質と労働条件は連動しており、「自分ごと」です。「自分ごと」である労働条件を他人に勝手に決めさせないパワーが労働組合であり、労働組合がなければ使用者の独壇場になってしまうと指摘しました。
西谷敏氏の著書『労働組合法 第2版』では、「憲法は、労働者が自己の労働条件決定過程から排除され、それが使用者やその他第三者によって一方的に決定されるという事態を正義に反すると見て、(略)彼らの実施的な関与を積極的に保障したのである」と書かれているそうです。
労働組合の共済制度や、勝ち取ってきた制度などは、具体的な労働組合加入のメリットであると述べました。また、労働組合の集まりや会議の中で、職場を超えた出会いがあり、仲間ができ、様々なことを学べる機会もあると指摘しました。
労働組合は、自分の大切なもの、とくにお金と天秤にかけられる存在であり、具体的なメリットを語っていく必要があると指摘しました。「メリットは、いま享受している幾多の権利」、「あなたがあなたのことに関与できる保障」といった決めゼリフが紹介されました。また、経験して実感することが大事であり、組合費の使い方を明確にして、きちんと伝えることも大事だと指摘しました。
しかし、人間は「すでにあるもの」についてありがたみを感じにくいものだと述べました。たとえば、選挙権は先人が勝ち取った権利ですが、今は多くの人がありがたみを感じていません。失ってから気付くということもよくあり、勝ち取った権利は奪われやすいという認識も大事だと指摘しました。
それはそれ、これはこれと、やはり「労働組合費は払いたくない」という声があり、繰り返し意義を語る必要があると述べました。
第三章では、労働組合の語り方・伝え方で大事にしたいことが取り上げられました。
労働組合の語り方には、3つの「多様さ」があると指摘しました。
一つ目は、労働組合の多面的な役割・魅力を伝えられること、内容の多様さです。
二つ目は、そのために多くの人が「伝える側」になる必要があること、人の多様さです。
三つ目は、さらに労働組合に触れる回数を増やすこと、機会や頻度の多様さです。
労働組合について語るには、組合の総合力が問われ、3つの「多様さ」を培うためには「組織強化」が必要であると指摘しました。
また、「近い」を持った人が自分の体験、ストーリーを交えて語ることが大事だと指摘しました。たとえば、語る相手と年齢が近い、職場が同じなどです。自分に近い相手が語ることはイメージしやすいからです。
労働組合の役員が語ることも大事だと指摘しました。
加えて、「伝え方」に、自分自身を注ぎ込むことが大事だと指摘しました。語り手・伝え手の思い、葛藤、体験、ストーリーを織り交ぜるということだそうです。
生き生きしているか、楽しそうに語れるかも大事だそうです。言語とともに、非言語的メッセージも重要であり、笑顔、楽しそう、明るい雰囲気が与える影響は大きいそうです。それには事前の練習が必要であり、語り手が自信なげだと聞き手は不安を感じると指摘しました。
バランスも大切であり、語り手は対象者の3分の1くらいがいいそうです。
労働組合活動とは、私たちの大切なものを守るために、私の大切なものを使う活動だと指摘しました。私の大切なものとは、時間、労力、組合費、得意なもの、知識、人脈などだそうです。
第四章は、天秤的発想を乗りこえ、2人称、3人称視点をというテーマでした。
コスパ論、メリット論への対抗として「重し」を語る必要はありますが、労働組合側としてはその認識水準に留まっていてはいけないと述べました。
労働組合は社会のなかの公共財であり、人権の砦となる組織だと指摘しました。そして、日本国憲法のなかで唯一、活動を法的に保障されているのが労働組合だと指摘しました。
人権は何かの義務を果たさないと与えられないものではなく、労働組合という存在自体が労働者全体の尊厳にとって不可欠であると述べました。
労働組合があることの「私たち・職場全体での意味」は、労働条件をよくすること、職場全体の問題を認識できることなどがあると指摘しました。
社会にとって、次世代にとっての労働組合があることの意義は、労働組合が公共であることだと指摘しました。
次世代への継承ということについては、プロ野球選手会の10代目会長の曾澤氏は、「いつも思うんですが、先輩方が選手会をつくってくれて、僕らの権利が担保された。だったら今度は僕らが10年後、20年後の未来の選手のために何ができるかを考えて実践していこうと」と述べているそうです。
さいごに、労働者としての倫理観を培える場所が労働組合であり、「人としてのまっとうさ」に出会えるも老僧組合だと指摘しました。
太田愛氏の『未明の砦』のなかで、「初めから組合を考えていたわけじゃなくてな。俺がこのさき頑張ってなれるもんがあるとしたら、これしかないと思ったんだ。それでまず決めたわけだ。いい労働者になろうって。(略)いい労働者ってのは、ただ一生懸命働くだけじゃないんだ。隣に困っている労働者がいたら、その労働者のために闘う。つまり自分たちのために闘うのが、いい労働者なんだ」という言葉が書かれているそうです。
そうした労働者を増やすために、1人称の視点だけでなく、広い視野を持って活動することを呼びかけました。
以上で報告を終わります。