毎年この時期、春の気配が感じられる頃、子供や若い人は手や足の皮が剥けることがあります。和食でいうところの啓蟄(冬から春になりだす頃)の季節に多くみられます。(わたしは皮膚科医ですが、和食が好きで、時々和食のお店でバイトもしています。)

さてさて、よっぽど免疫が弱っていたり環境が悪くなければ、この時期の若い人の手足の皮剥けは水虫ではなく〝汗疱〟である確率が高いです。春になると気温が上がって汗の量が増えますが、冬の間に厚くなりすぎた角質で汗管の出口が塞がれ、汗の溜まりができてしまいます。お風呂で角質が柔らかくなったときなどに自然に剥がれて中の汗が出てきますが一時的なものです。今の時期、お子さんの足の皮が剥けて水虫ではないかと病院に来るママさんが多いですが、あまり心配しなくて大丈夫。
 
念のため顕微鏡で真菌(水虫)がいないかは確認しますが、汗疱は病気じゃなくて季節の変わり目の脱皮みたいなものです。(医者は生理的なものにもすぐ病名をつけるからおかしいなものですがこんなこと言ってる医者は私くらいでしょう。)とは言っても、もしもの場合があるので私は毎年こっそり自分の足の皮膚を顕微鏡で見て水虫がいないかチェックしています。
 
汗疱はたまに湿疹化してしまう方がいるので、この場合は湿疹のお薬(ステロイド)を処方します。水虫の抗真菌剤と真逆の治療になるので、自己判断で市販の水虫薬を誤って使って悪化させないように気をつけてください。痒みや赤みがある場合は皮膚科医を受診してくださいね。
 
ちなみにこれはお恥ずかしながら私の足です。今私も汗疱で皮向け真っ最中です。小さい頃から毎年なっていたので皮膚科医になるまで普通のことと思っていて、汗疱という名前がついていることすら知りませんでした。でも汗疱ができることで厚くなった角質が剥けてくれるおかげで、うまく汗が出せるので、足の裏の角質が厚くなりすぎずにしっとりつるつるです。現在三十歳ですが、足の裏がガサガサ・・・ってあまり経験したことない気がします。子供みたいな足だねって言われます。
 
ちなみに私の母親もよく汗疱ができていて、毎回皮膚科に行っていました。そして私たちに「ママは足の皮が剥けてるけど、お医者さんに顕微鏡で見てもらって水虫じゃないって言われたからね!!」と言っていたのを覚えています(笑)
 
むしろ汗疱が出来るのは人間が動物として冬から春になる身体の準備をしているというなので、季節の変わり目にできる汗疱は健康な証拠じゃないかなと勝手に思っています。