英語の語彙を増やしつつ法律的な視野を広げ、論理的な文章を書く機会を増やすという3つのことを、かぎられた時間の中でするために、最近は日本の法律について英語で読むことが増えました。
ただ、英語の母語話者が海外で執筆した洋書は少なく、大半はネット上にある情報ばかり。
それだと外出時に持ち歩けないので、日本で刊行された書籍にも網を広げたところ・・・
なんともユニークな書籍に出会いました。
アメリカ文学の研究者でもあり、翻訳家でもある柴田元幸氏と、憲法学者の木村草太氏との合作本。
『現代語訳でよむ 日本の憲法』です。
端的に言えば、日本国憲法の英文版を逆和訳したものです。
日本国憲法には、公布時に英文官報号外に掲載された「The Constitution of Japan」があり、これを日本語に訳し直したとのことでした。
公式には何ら拘束力を持たないものの、公定の英訳ともいえる英訳文です。
条ごとに柴田氏の訳文と語句の簡単な解説が付されているほか、巻末に木村氏との対談も掲載されているのですが、その対談の冒頭に、次のような見出しが付されています。
「宇宙人の視点」で、「日本国憲法英文版」を訳す
なかなかユニークな見出しですが、対談を読み進めていくと、なぜ宇宙人の視点なのかわかります。
peopleをどう訳すかは、難題。
the pursuit of happinessという表現は、アメリカ的。
councillorsを、どうするか。
最高裁は、まさに「最後の頼り(last resort)」・・・・・
法律を知らない素人の視点から、英語を「素直に」翻訳しただけとのことですが、なんのなんの。
十分すぎるくらい十分に、楽しめました。
柴田元幸氏といえばベテラン中のベテランですし、さすが・・・の翻訳文。
ご本人も、ふだん現代アメリカ小説を訳す人間が法律文書を訳すと、そりゃもうぜんぜん違う・・・・・・・・となればおもしろいのに、実はそんなに変わらないとおっしゃっています。
「憲法」としてというより、経験豊富な文芸翻訳家の頭の中を対訳で眺められるところが、ポイントです。
なお、現代語訳の音声は書籍付属のCD、英語版の音声もダウンロードデータとして入手できます。
日本の憲法英訳版だけでなく、パリ条約やPCT、米国特許法などにも同じような現代語訳が出てくると、楽しいのに(笑)。
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