2章―発つ
支度をし終え、町を出る道中ヨシュアは気が重かった。
何度何回ミリーが赤の他人なら、赤の他人なら…と思い願ったが、現実は血のつながった実の妹。
夢の中は赤の他人でも目が覚めると妹と言う現実に引き戻される。
桃のような透ける頬、サファイアのような瞳、
雪のような白い肌、絹糸をつむいだようなつやつやの黒髪、あどけない優しい笑顔。
プルプルの唇に小鳥のようなはかない声。
誰にも渡したくなかった。
「あの日」から、ずっと、ずっと…妹だと思ってたのに、だんだんと異性としてしか見れなくなった。
妹としての愛情がいつしか、異性への愛情へと変わっていった。
だが、それも叶わぬ夢。
カッ!!!
うやむやな自分に腹が立ってきて、足元の石を蹴り飛ばした。
気持ちいいほどに遠くに勢いよく飛んでいく。
ガッ!
何かに当たった。やばいともなんとも思わない。
もどかしい気持ちでいっぱいなのだ。
「いてて…ずいぶん荒れてるじゃねーか!?」いつもの木の下で待ちくたびれた様子のサブミナと桜がいた。
どうやら、今けった石が当たってしまったのはサブミナのようだ。
ボーっとして通り過ぎて行く。
内心、ミリーを置いていきたくない、世界なんてどうでもいいという気持ちでいっぱいだ。
そう考えるとどうして、こんな体、聖者の末裔、ミリーの兄なんかに産まれて来てしまったんだろう…という葛藤が心の中を走り回る。
…い…おい!…おい!ってば!!!!
思わず耳元で吼えるサブミナの声にヨシュアははっとした。
「浮かないなぁ~」
「…う、うん。ごめん」うつむきざまにサブミナに謝った。
なんで…
なんで…
友達の顔も見れないなんて…
そんな自分が怖かった。
でも…
駄目だ!唯一の男がこんなんじゃ!
「さーて行こう!しばらくは帰ってこれないな…」自らを奮い立たせマントを翻した。
二人が静かにうなずいた。
門番が門を開けたとき
遠くから息を切らせ走ってくる―
ミリーだ。
ミリーが裸足で何かを持って走ってきた。
透明のうっすら光る石が付いたバレッタと指輪。
ヨシュアの母親の形見、ミリーも同じ物を持ってる。
「駄目じゃない~お母さんの形見。いつも肌身は離さず持ってるのに。」
「ミリーごめんな。ごめん…当分帰れないかもしれない」ミリーを力いっぱい思いっきり抱き寄せる。
目に涙を零すまい、零すまいといっぱい浮かべて
ミリーは、目いっぱい背伸びをしてヨシュアの顔を近づけ囁く
「!!ミリー…俺達必ず、必ず帰ってくるから。寂しいけど、待っててくれる…か?」
ミリーは泣きながらも笑顔を作り、静かにうなずいた。
「い、いって…らっしゃい」そっとヨシュアの胸から離れ、手を振って見送った
悲しくて、たまらなくて、去っていくヨシュアを見てられなくて門のところで泣き崩れてしまった。
いつまでも。町の入り口の門が閉まっても。
お兄ちゃん、お兄ちゃん…ずっとずっと叫び続けていた。
3章へ続く―