屋敷の中のあるざわめきが少し落ち着いてから範頼は兄から渡された書状に目を通す。
小山四郎朝政、下河辺庄司行平など野木宮の戦いを共に戦ったものたちもあれば
あまり聞いたことのない名まである。
大小の御家人たちの名があまた記されている。
書状を閉じる。
そしてそっと座を立ち屋敷の中を歩く。
主の出陣が近いということで屋敷のあちらこちらに明りが灯され
多くの者達が忙しく立ち働いている。
異様な興奮を湛えながら自らの胴丸の手入れをするものがある。
そう、この屋敷には範頼に従って共に出陣するものも少なくない。
不意に赤子の泣き声が鳴り響く。
その声は瑠璃の侍女志津の部屋の方から響いていた。
この年生まれたばかりの志津の子が泣いていたのである。
様子を窺うとそこには赤子をあやす志津の夫藤七の姿があった。
その傍らで赤子の兄である新太郎が気持ち良さそうに眠っていた。
藤七もまた此度の上洛軍に加わる。
彼の主の佐々木秀義の子たちが上洛するからである。
しばらく屋敷の中を回った後、例の甲冑の前に座り再び書状に目を通す。
その夜範頼は夜具の中でまんじりともせずに一晩を過ごした。
翌日範頼は兄頼朝に面会を乞うた。
兄は範頼の為に忙しい時間を割いてくれた。
範頼のたっての願いにより他のものを遠ざけ二人だけで話しができるようにしてあった。
「兄上、戦の支度ありがとうございまする。」
と範頼は兄のはなむけに礼を述べる。
「うん。」
兄は満足気に返事を返した。
「しかしながら、今の私には無用のものになりそうな気がいたしまする。
兄上、私には大将軍をつとめあげる自信がございませぬ。」
そう言って範頼は兄を見上げた。
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小山四郎朝政、下河辺庄司行平など野木宮の戦いを共に戦ったものたちもあれば
あまり聞いたことのない名まである。
大小の御家人たちの名があまた記されている。
書状を閉じる。
そしてそっと座を立ち屋敷の中を歩く。
主の出陣が近いということで屋敷のあちらこちらに明りが灯され
多くの者達が忙しく立ち働いている。
異様な興奮を湛えながら自らの胴丸の手入れをするものがある。
そう、この屋敷には範頼に従って共に出陣するものも少なくない。
不意に赤子の泣き声が鳴り響く。
その声は瑠璃の侍女志津の部屋の方から響いていた。
この年生まれたばかりの志津の子が泣いていたのである。
様子を窺うとそこには赤子をあやす志津の夫藤七の姿があった。
その傍らで赤子の兄である新太郎が気持ち良さそうに眠っていた。
藤七もまた此度の上洛軍に加わる。
彼の主の佐々木秀義の子たちが上洛するからである。
しばらく屋敷の中を回った後、例の甲冑の前に座り再び書状に目を通す。
その夜範頼は夜具の中でまんじりともせずに一晩を過ごした。
翌日範頼は兄頼朝に面会を乞うた。
兄は範頼の為に忙しい時間を割いてくれた。
範頼のたっての願いにより他のものを遠ざけ二人だけで話しができるようにしてあった。
「兄上、戦の支度ありがとうございまする。」
と範頼は兄のはなむけに礼を述べる。
「うん。」
兄は満足気に返事を返した。
「しかしながら、今の私には無用のものになりそうな気がいたしまする。
兄上、私には大将軍をつとめあげる自信がございませぬ。」
そう言って範頼は兄を見上げた。
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