あるところに、年老いたきこりがいた。
毎日森に行って、まきを集め、それを市場(バザール)で売って生活していた。
彼は貧しかった。身体も弱くなり、それほど多くのまきを運ぶこともできなかった。
森には、ひとりのサドウ(僧)が、いつも同じ樹の下に座って瞑想していた。
ある日、サドウーがきこりに言った。
「老人よ、いつも同じところにいないで、少し先に進みなさい」
言われるがまま2キロほど先まで行ってみると、彼はそこに白壇の木を見つけた。それはほぼ一週間分の稼ぎをもたらした。
彼はすこし休養することができた。
きこりが森へ行く回数は少なくなった。
白壇の木は貴重品で、高価に売れたからだ。
森に行くたびに、彼はサドウーに捧げものをもっていった。
サドウーはいつも静かに瞑想していた。
そして、あるとき、きこりに言った。
「老人よ。白壇の木に満足しないで、もっと先まで進みなさい」
その日、彼はいつもより森の奥まで進んでいった。
そして、そこで銅の鉱脈を発見した。それはゆうに一ヵ月分の稼ぎに匹敵した。彼はうれしくてたまらなかった。
しばらくたってから、森へ行くとサドウが言った。
「老人よ。私はこの森を出て、巡礼の旅に行く。いいかね、覚えておきなさい。つねに先に進むのだよ」
きこりは、その日、いつもより先まで進んでみた。そこには銀の鉱脈があった。
帰り道、サドウーの樹のそばを通ったが、サドウーはもういなかった。
老人は銀を市場で売った。彼は金持ちになった。
いまや彼は一年に数回森へ行くだけだった。しかし、あれ以来サドウーの姿を見ることはなかった。
あるとき、老人は森を歩きながらこう思った。
「森の聖者は、つねに先に進みなさいと言った。私は銀の鉱脈に満足して、ここにとどまるべきではない。先に進もう」
そして、彼はさらに先に進み、ある日金鉱を見つけ、そしてさらに先に進んでダイヤモンドを発見した。
森のなかには宝がある。だが、それを手に入れるためには、森のなかに入っていかなければならない。
(続く)
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