糖尿病ってどんな病気?
糖尿病は、血液の中のブドウ糖(グルコース)の濃度(血糖値)が高い状態(高血糖状態)が続く病気です。放っておくと、さまざまな臓器に合併症が起こる危険性が高くなります。その名前から糖尿病とは、「尿に糖が出る病気」と思われていることがありますが、尿に糖が出ることは血糖値が高いことのひとつの現れであって、本当に問題なのは血糖値が高いことです。尿に糖が出て、体内の糖が失われてしまうのではなく、血糖値が高すぎて尿にまで糖がたくさん出てしまうことが問題です。
私たちは、毎日の食事で、さまざまな栄養素を体の中にとり入れています。このうち、米やパンなどに多く含まれる糖質(炭水化物)は、小腸でブドウ糖に分解されて、血液の中に吸収されます。また、タンパク質や脂肪などの栄養分も分解されて、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)を高めます。
この血糖値は、体の中の「インスリン」というホルモンの作用で、ほぼ一定の値に保たれています)。この血糖を調節する仕組みがうまく働かなくなり、血糖値が高い状態(高血糖状態)が続くようになってしまうのが糖尿病です。
血糖値が高くても、最初のうちは、ほとんど症状を感じることはありません。しかし、血糖の高い状態が続くと、のどの渇き、疲労感、多尿・頻尿などの症状が現れるようになり、次第に全身の血管や神経が傷ついて、全身のさまざまな臓器に影響が起こってきます。
逆に、糖尿病になっても、食事療法や運動療法、薬によって血糖をきちんとコントロールできれば、症状をなくし、合併症を予防できます。
症状が起こる理由
高血糖の状態が続くと、のどが渇いたり、尿の量や回数が増えたりすることがありますが、治療がうまくいき、血糖コントロールが良ければ、こうした症状はほとんどなくなります。
治療を受けているにも関わらず、こうした症状が現れた時は、治療が適していなかったり、何かの原因で一時的に血糖のコントロールが悪くなっている可能性があります。
多尿・頻尿
のどの渇き
血糖値が高くなり、腎臓からブドウ糖と水分が尿として排泄されると(多尿)、体内の水分が足りなくなり、のどの渇きを強く感じるようになります。のどの渇きというよりも口の中に粘りを感じるという方もいます。
のどが渇くために水分をたくさんとり(多飲)、その結果、さらにトイレの回数が増えるという悪循環が生じます。
体重減少
糖尿病患者さんは太っているというイメージがあるかもしれませんが、血糖のコントロールが悪いと体重が減ることがあります。インスリンの働きが悪くなり、食事からとった糖質(炭水化物)をエネルギーとして利用できなくなってくると、脂肪や筋肉のタンパク質を分解してエネルギーとして利用してしまうためです。これは、体を作っている大切な成分を消費して活動のためのエネルギーを得ている状態なので、とても危険な状態です。
だるい・疲れやすい
糖尿病になっても、血糖値がかなり高くならない限り、強い症状を感じることはありません。しかし、血糖が高い状態を放置しておくと、やがて全身のさまざまな臓器に合併症が起こってきます。
糖尿病に特有な合併症としては、3大合併症と呼ばれる「網膜症」「腎症」「神経障害」があります。これらの合併症は重症化すると失明や透析が必要な腎不全、足を切断しなくてはならないこともある壊疽(えそ)などにつながります。また糖尿病は動脈硬化を進める原因のひとつであり、心筋梗塞、脳卒中などになりやすく、これらの病気はときに命をもおびやかします。
また血糖値が非常に高いと、糖尿病性昏睡(こんすい)となり、命に影響が及ぶことがあります。
一方、糖尿病をきちんと治療すると、こうした合併症を予防できることが、これまでの多くの研究で分かっています。これらの研究結果に基づき現在の糖尿病の治療指針(ガイドライン)が作られ、糖尿病の治療が行われています。
糖尿病と診断された時には、たとえ何も症状を感じなくても、これらのさまざまな合併症を防ぐために、治療に取り組むことがとても大切なのです。
血糖値が高い状態が続くと、さまざまな合併症が起こります。このうち糖尿病に特有な合併症として3大合併症といわれる「網膜症」「腎症」「神経障害」があり、また糖尿病と関係が深い合併症として動脈硬化によって起こる心筋梗塞、脳卒中などの病気があります。
これらの合併症は、糖尿病の治療がきちんとできていれば予防できることが分かっており、また、仮に合併症になっても早く発見し治療すれば進行を遅らせることができます。
網膜症
血糖値が高いことによって、目の網膜(もうまく:眼球の後ろにある光を感じる部分)に栄養を送っている細い血管の流れが悪くなったり詰まったりすることで、出血が起こったり、血管からしみ出たタンパク質や脂肪が網膜に沈着したりする病気です。進行すると、失明につながることもあり、成人後の失明原因の第1位になっています。初めのうちは症状がほとんどないため、気づかないうちに進んでいることがあります。糖尿病と診断された時、そしてその後も、必ず定期的に眼科で検診を受けることが大切です。
網膜症

腎症
血糖値が高い状態が続くことで、血液中の老廃物を尿として体の外に出す働きを持つ腎臓の細い血管(糸球体)の流れが悪くなり、腎臓の機能が落ちてしまう病気です。症状を感じることはほとんどなく、初めのうちは尿にタンパクが時々出る程度ですが、そのまま放っておくと常にタンパク尿となり、やがて腎臓がほとんど働かなくなる腎不全となって人工透析が必要となります。
神経障害
血糖値が高い状態が続くことで、さまざまな神経線維に障害が起こる合併症です。痛みなどを伝える神経が障害されると手足の感覚がにぶくなったり、じんじん・ピリピリしたり、しびれたりします。痛みが出ることもあります。
臓器の働きを調節している自律神経が障害されると、胃のもたれや下痢、便秘、膀胱の異常(尿が出にくい・尿が残る感じなど)、勃起障害(ED)などが現れます。
とくに注意したいのは、手足の指先の感覚が鈍くなり、気づかないうちにやけどや怪我をしてしまうことや、さらにその傷に気づかないまま、患部が化膿し重い感染症を起こしたり、組織が死んで、その部分を切らなくてはならなくなる壊疽(えそ)になることです。気になる症状が現れたら、すぐに医師に報告するようにしましょう。
糖尿病による神経障害

動脈硬化による心臓、脳の病気(心筋梗塞、脳梗塞など)
糖尿病は、動脈硬化を進め、心筋梗塞、脳梗塞など動脈硬化によって起こる病気の危険性を高めます。高血圧、脂質異常症や肥満、喫煙など、動脈硬化を進める他の要因をあわせ持っている方は、とくに注意しなくてはなりません
不眠、うつ
不眠(寝つけない、夜中に目が覚めてその後眠れない、朝早く目が覚めるなど)は糖尿病の患者さんにしばしばみられます。不眠は血糖コントロールを悪くすることがあるため、不眠が続く時は主治医と相談しましょう。また、糖尿病の患者さんは、うつ状態になる頻度が高いことも分かっていますが、うつ状態になると糖尿病治療に対する意欲がなくなり、血糖コントロールにも悪い影響があります。ゆううつ感、それまで興味・関心があったことに興味がなくなった、気力がわかない、食欲がないなどの症状が2週間以上続くようであれば主治医と相談するようにしてください。
感染症
糖尿病の治療がうまくいっていないと、肺炎、膀胱炎、皮膚炎、歯肉炎などの感染症が起こりやすくなります。またこうした感染症が起こると、急に血糖のコントロールが悪くなることがあります。風邪をひかない・悪化させない、トイレをがまんしない、きちんと歯磨きをするなど、ふだんから注意してください。また、発熱や排尿の時の痛み、皮膚や歯ぐきの腫れ、化膿などがみられた時は早めに受診してください。
高血糖による合併症
主に1型糖尿病の方で血糖値が非常に高くなった時に起こる合併症として糖尿病ケトアシドーシス(ケトン性昏睡:けとんせいこんすい)や、ケトン体があまり作られない高血糖高浸透圧昏睡(こうけっとうこうしんとうあつこんすい)があります。ただちに治療が必要なため、ふだんから症状や対処方法などを医師とよく相談しておきましょう。