古い羅針盤 2025 第六巻
本書は、2025年の一年間に書かれた思考の記録を、新たな視点で再編集したものである。
老い、身体、不安、お金、社会、国家、共生、宗教、死。
これらは本来、切り分けて考えられるものではない。
生活の中では、常に絡み合いながら現れる。
当初は「生命」「健康」「億り人」といった分かりやすい分類で整理してきたが、
書き進めるうちに、それだけでは収まりきらない
主題がはっきりしてきた。
そこで本書では、
文章そのものを書き換えるのではなく、
読み取るための枠組みを改めて与えるという方法を選んだ。
本書は、答えを与える本ではない。
むしろ、老いの中で人が何を考え、
どこで立ち止まり、
どこへ向かおうとしているのかを辿る記録である。
最初から順に読む必要はない。
関心のある章から拾い読みしてほしい。
これは完成された思想書ではなく、
一人の生活者が世界と折り合いをつけ直していく過程を
そのまま残した一冊である。
― 死と宗教 ―
副題:答えのない問いと生きる
まえがき
死について語ることは、どこか不謹慎であるかのように扱われがちである。
しかし、日々の暮らしの中に目を凝らせば、死は決して遠い出来事ではなく、むしろ静かに隣り合わせに存在しているものだと気づく。
宗教は、その不安や恐れに対して、長い時間をかけて答えを与えてきた。
だが、その答えは果たして救いなのか、それとも別の枠組みに過ぎないのか。
また、現代においては、安楽死という選択が現実の問題として浮上している。
生を全うするとは何か。終わりを選ぶことは許されるのか。
本巻では、そうした問いに対して、あえて明確な結論を用意しない。
文学や個人の感覚を通じて、「答えのない問い」をそのまま抱え続けることを試みる。
整理し、理解し、納得することだけが、生きることではない。
むしろ、わからないままに見つめ続けることこそが、ひとつの誠実さなのかもしれない。
第Ⅲ章|安楽死という問い
「倫理・選択・尊厳」
まえがき
生きることが前提とされる社会において、「死を選ぶ」という発想は異質である。
しかし、苦しみや尊厳の問題に直面したとき、その選択は単なる極論ではなくなる。
本章では、安楽死という問いを通じて、「生きること」の輪郭を逆照射する。

