僕はよく通販で買い物をする。
なので必然的に宅急便の人にお世話になっている。
宅配のシステムはよく知らないが、担当区域なのか佐〇急便では毎回同じ人が届けてくれる。
僕はその人を“時をかける丸山”と呼んでいる。
無論、面と向かって呼ぶわけではない、心の中での愛称だ。あと丸山は仮名だ、念のため。
なぜ“時をかける”なのかというと、彼は配達してくれるとき常に急いでいる印象だからだ。一分一秒に生きている感がすごい。
そりゃあ配達の仕事だし時間指定なんてものもある。急ぐのは当然かもしれないが、彼の急ぎっぷりは尋常ではないのだ。
僕のアパートは部屋の中にいても静かにしていると階段を上り下りする足音が聞こえる。
丸山さんが来ると毎回必ずドタドタドタ!という音が聞こえ、更に廊下を走る音もドタドタ聞こえる。
その直後にピンポーンとインターホンが鳴るのだ。
ドアを開けるとそこにはゼェゼェと荒い呼吸をしながらダンボールを抱えた笑顔の丸山さんがいる。
丸山「こんばわぁお荷もっでぇっ!」
丸山さんは結構早口だ。
丸山「ハンコかサぃおねがす!」
受け取りの手続きの間丸山さんの鼻からはずっと「シューシュー」という音がしている。
そして足首をグリグリ回している。
私この後も快走しちゃいますよ感がすごい。
丸山「どもぉぉおお!」
ドタドタドタドタ…
帰りももちろん駆け足。
そんな彼を見るたび心配していたのだが、ある日こんなことがあった。
その日は雨が降っていた。
ドタドタドタドタ ピンポーン
お、時の丸山だ。
丸山「ばんわおにもっで!」
もはや南アフリカの部族みたいな言語である。
無事に受け取りが終わると丸山さんは会釈した直後、跳ねるように一歩下がり90度向き直るとスタートの姿勢をとる。
右足に力を籠め、地面を蹴った。
しかしその身体は前に進むことなく僕の視界から下へフェードアウトしていった。
こけた。
そう理解するのに普通より時間がかかった。
っていうか
こけるんだ。
という驚きが強かった。
雨が降ったこの日、廊下は濡れて滑りやすくなっていたのだ。
僕のアパートの廊下は特に滑りやすい。
僕「え!?…だいじょうぶすか!?」
丸山「ぁぁああ!!だいっす!!っだいす!!ダイス!!」
自分はサイコロだから転がってもいいという暗示なのか知らないが、
間違いなくサイコロではない丸山さんは苦悶の表情で、立ち上がると懲りずに走って去っていった。
また別の日こんなこともあった。
ある真冬の、雪が降った翌日のことだ。
ドタドタドタドタ
あぁ、時の丸山だ。
シンシンと降る雪は冬を感じたが、ドタドタとうるさい音は丸山を感じる。
この日はたまたま玄関の近くにいたこともあって丸山さんが部屋に到着する前にドアを開けた。
既にドアを開いて待っていたら驚くかな? なんてうっすら期待しながら待っていると廊下を走る音が近づいてきた。
そしてダンボールを抱えた丸山さんが僕の部屋の前に現れた。
丸山「ばんわぁあああああ!?」
こちらに向き直った丸山さんは僕と対面する形になったが
そのまま彼は横にスライドして微妙に引きつった笑顔が僕の視界からフェードアウトしていった。
廊下は若干凍っていてアイスバーン状態だった。
驚かすつもりが驚いてしまった。丸山さんは常にこちらの一手先をいく人なんだなと思った日だった。
いくら急いでいるからといってやっぱり廊下を走るのは良くないと思うのである。
とはいえ丸山さん、いつもありがとうございます。これからもどうか気を付けてよろしくお願いしますね。
2013.3.23(土)
☆公演名「HUNTER Present」
☆会場:池袋ブラックホール
☆時間:OPEN、START、未定
☆出演:東京あるでんて学園高等部/ヱン・砂雪セッショ ン/セッションEclipse gaL trAce/miyayasuセッション/神山/ふわふわってるー?(*´?ω?`*)/ふみかセッション(仮 )/幻影旅団/etc
☆料金:前売り\2500.当日\3000(D代別)
☆チケット:バンド予約のみ
神山で出ますーよろしくにー!
終